頭の中で爆発音がする「頭内爆発音症候群」とは?
眠りにつくときに、頭の中で爆発音が聞こえるという現象を経験する人がいます。「頭内爆発音症候群(EHS)」と呼ばれるこの症状は一体何なのか、害はあるのかといったことについて、ヨーク大学心理学部講師のダン・デニス氏が解説しました。
Waking up with a bang? It could be ‘exploding head syndrome’
https://theconversation.com/waking-up-with-a-bang-it-could-be-exploding-head-syndrome-236351
EHSは睡眠時随伴症として知られる睡眠障害に属するもので、一般的な症状として、睡眠に移行する際に頭の中で大きな音が聞こえます。音は銃声であったり、ドアがバタンと閉まる音だったり、あるいは人の叫び声だったりとさまざま。特徴的なのは、聞こえる音は常に短く、非常に大きく、かといって実際に周りで音が鳴っているわけではないという点です。
EHSは少なくとも1876年から確認されており、フランスの哲学者であり科学者であったルネ・デカルトも経験しているといわれています。デニス氏によると、古くから知られているにもかかわらず、この症状についてわかっていることは驚くほど少ないとのこと。
初期の研究では、健康な成人の11%がEHSを経験しており、大学生を対象とした別の研究では調査対象者の17%が生涯に何度もEHSを経験していたことがわかっています。デニス氏自身が大学生を対象とした調査を実施したところ、サンプルの3分の1が生涯に少なくとも1回はEHSを経験し、約6%が少なくとも月に1回はEHSを経験していることが明らかになったそうです。
デニス氏は「これらの研究が示しているのは、EHSは少なくとも若年成人では比較的一般的な経験であるということです。しかし、最大70%の人にみられるジャーキングなどの他の睡眠時随伴症に比べると、EHSの頻度は低いようです」と指摘。世界的にサンプルデータが不足していることから、どれくらいの人が実際にEHSを経験しているのかを見積もるのは困難だと説明しました。
また、EHSの正確な原因は不明とされています。原因については多くの説が唱えられていて、最もよく知られているのは「覚醒から睡眠への移行時に進行する脳の自然なプロセスが関与している」というものだそうです。一般的には、覚醒から睡眠に移行する際、脳の「オン・オフ」スイッチの役割を果たす網様体内部の活動が低下するのですが、この際、視覚、聴覚、運動などを司る感覚野が停止し始めます。EHSはこのプロセスの混乱により生じるものであり、ニューロンの活性化が遅延してばらばらに活性化されることが、何でもない大きな音として知覚されるというのが一説としてあります。
EHSの原因については推測の域を出ませんが、EHSを起こしやすくする要因については解明されつつあるといいます。デニス氏の研究によると、生活におけるストレスなどの「ウェルビーイング変数」がEHSの経験と関連していることがわかっていて、これらの変数はEHSに直接関係しないものの、ストレスなどによって正常な睡眠パターンが乱れることでEHSが起きやすくなっていると考えられるそうです。
こうしたEHSは、一般的には無害とされています。非常に短く、通常は痛みを伴わず、あったとしても軽度で、一過性のものであるためです。
デニス氏は「だからといって、EHSが怖い体験になりえないというわけではありません。EHSを経験した調査では、回答者の45%がEHSに関連した恐怖を中等度から重度のレベルで訴えたことがわかっています。残念ながら、EHSの苦痛と闘っている人々に対する潜在的な治療法や対処法について調査した研究はありません。最近の調査では、仰向けで寝ないように姿勢を変えること、睡眠パターンを調整すること、マインドフルネスのテクニックを用いることなどがEHSを予防するための効果的な戦略であると報告されましたが、臨床試験で有効であると証明されるかどうかは、まだわかりません」と述べました。
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