超常現象は「金縛り」や「頭内爆発音症候群」が原因となっている可能性

by Alexandra Gorn

寝入りの瞬間などに頭の中で爆発音が鳴る「頭内爆発音症候群」や、就寝中に意識がはっきりしているのに体を動かすことができなくなる「金縛り(医学的には睡眠麻痺)」などが、睡眠時に起きる異常な体験、超常現象の正体ではないかと指摘されています。

Some Paranormal Experiences May Be Explained by Sleep Paralysis, Exploding Head Syndrome
https://www.livescience.com/62888-paranormal-experiences-sleep-paralysis.html

「夜中に既にこの世を去ったはずの愛する人たちの話し声を聞いた」などの超常現象を体験したことがある人が世の中にはいます。こういった超常現象について科学的に調査を進めているのが、ロンドン大学で心理学の教授を務めるアリス・グレゴリー氏です。グレゴリー氏が超常現象について興味を抱いたのは、同僚のクリストファー・フレンチ氏が超常現象についての研究を行っていたからでした。

グレゴリー氏によると、人が体験する超常現象は「悪魔が現れた！」「周囲の環境がゆがんでいった」「幽霊を見た」など内容がバラバラなものの、多くの人が「ベッドで横たわっている際に始まった」と報告しているそうです。さらに、超常現象を体験した人が「マットレスにのりづけされた」や「ベッドに引き込まれてまったく動けなくなった」と報告しているケースから、超常現象と睡眠麻痺などの関連性に興味を抱くようになったとのこと。

◆睡眠麻痺
人間は眠ると急速眼球運動を伴うレム睡眠と、急速眼球運動を伴わないノンレム睡眠を交互に繰り返します。レム睡眠中、人間は最も鮮明な夢を見ている可能性が高く、この段階で「体が麻痺している可能性がある」とグレゴリー氏。体が麻痺する理由について、グレゴリー氏は「おそらく、私たちが夢で見ているような行動をとることを止めるための安全機構」と説明しています。

しかし、睡眠麻痺が起きるレム睡眠の特徴として、「脳が覚醒状態にある」というものがあります。「超常現象を体験した人」は、現実のような鮮明な夢(しかも悪夢)を見つつ、体を動かそうとしますが、睡眠麻痺状態にあるため体が動かせないという経験をします。これを人は「超常現象を体験した」と感じるのではないか、とグレゴリー氏は推測しているわけです。

by Kinga Cichewicz

◆頭内爆発音症候群
「夜中に爆発が起きた」と、自身が体験した超常現象について説明する人がいますが、これもまた睡眠と関連したものである可能性があります。

人間は眠りにつくと、意識に関与する脳の一部である「脳幹」の網様体が、人間の身体機能や知覚機能を抑制し始めます。しかし、この身体・知覚機能の抑制プロセスが遅れている際、人間は睡眠中に「バン」という大きな爆発音を体験することがあるそうです。これは脳幹網様体が聴覚ニューロンをシャットダウンする前に、ニューロンが発火した際の音を知覚したものであると思われています。こういった現象を神経学者のJMS Pearce氏は、比較的最近になって「頭内爆発音症候群」と名付けています。

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この頭内爆発音症候群が、「夜中に爆発事故が起きたはずなのに、朝になると何も起きていないかのように元通りになっていた」などの超常現象の正体であるとグレゴリー氏は考えているわけです。

◆予知夢
「何年も会っていない友人から電話をもらう」という夢など、人間はしばしば予知夢かと思ってしまうような夢を見ることがあります。この予知夢は超常現象の一部として扱われることがありますが、グレゴリー氏を超常現象研究の道へ引き込んだフレンチ氏は、これについても科学的な説明が可能であると考えています。

フレンチ氏はジョン・アレン・パウロ氏の研究を参照し、「夢で見たことが現実で起きる可能性」について調べており、(PDFファイル)研究によると時間が経過するにつれて「夢で見たことが現実で起こる可能性」はかなり大きくなるとしています。

by bruce mars

グレゴリー氏は超常現象に関する調査の中で70歳の1人暮らしの老人・シンクレアさんと出会います。彼女は自分の家に潜む幽霊や怪物などの超常現象をまことしやかに信じていたそうですが、睡眠麻痺や頭内爆発音症候群など、超常現象と関わりがあると推測できる事象について科学的に説明したところ、シンクレアさんは自身が経験した事柄が超常現象であるとは考えないようになったそうです。グレゴリー氏はこのように超常現象を科学的に説明することで人々の不安を軽減することを目指して研究を続けています。