サイエンス

人が「色」を見分けたり「脅威」を感じる基準は驚くほど状況で左右されることが判明


人間の認知は主観的・相対的なものであり、コンピューターのように絶対的な基準を明確に持つものではありません。1000個のドットを見せて色を判断させる実験や、人の顔を見て「脅威がある」かどうかを判断させた実験からは、与えられた状況に対していかに人間の判断が影響を受けているのかが浮き彫りになっています。

Prevalence-induced concept change in human judgment | Science
http://science.sciencemag.org/content/360/6396/1465

Are these dots purple or blue? Your answer might not be as reliable as you think | Science | AAAS
http://www.sciencemag.org/news/2018/06/are-these-dots-purple-or-blue-your-answer-might-not-be-reliable-you-think

この研究は、ハーバード大学など複数の大学の研究者によるチームが実施したもの。その内容をまとめたムービーでは、青と紫の認知の曖昧さに始まり、人間の悲観的な見方が生まれる要因についても考察されています。

Are these dots purple or blue? Your answer might not be as reliable as you think - YouTube


私たち人間は毎日、何らかの「判断」を行っています。例えば、「今日着る服のコーディネートは大丈夫だろうか?」と考えるのも判断の一つ。


また、身の安全に関する判断をすることもあります。夜道の暗闇に、真っ黒な人影が見えたときに、「危ないかも」と判断することは、自分の身を守る上でとても重要なことです。


しかし、その判断の「基準」は、実にあいまいなものとなっています。


その状況を調べるため、研究チームは色覚に異常がない被験者に1000個のドットを見せ、そのドットが「青色」なのか、「紫色なのか」を分類させる調査を実施しました。


実験ではまず、青と紫を同じ割合で表示しています。被験者も青と紫の判断を正しく行い、両方の色を同数で判断していましたが……


ドットの数が200個を超えたあたりから、青いドットの数を徐々に減少させました。本来ならここで、紫と判断されたドットの数が増えるはずなのに、被験者は本来は紫色のドットを「これは青色だ」と判断するようになっていきました。


つまり、人の判断基準が状況の変化によって影響を受けたことが明らかになっています。研究チームはさらに、被験者に対して事前に「徐々に青いドットが減るので気をつけてくださいね」と忠告して実験を実施しましたが、結果は同様。さらに、「青と紫の判断数が等しかったら、賞金をあげます」と報酬をチラつかされていた場合でも、結果は「青寄り」なものになってしまったそうです。


さらに研究チームは、色だけでなく写真の人物が自分にとって脅威を与えるものかどうかを判断させる実験を実施。この時、「脅威的」とされる顔を徐々に減らしています。


また、企画の提案内容が倫理的に問題がないかどうかを連続で判断させたとのこと。


すると、本来は「非脅威的」と判断するべき顔まで「脅威的」と判断するように基準が変化していったことが明らかになっています。


研究チームは、人々の中に世界の物事を悲観的に捉える人が多い理由がこの実験で現れていると考えています。


「インク切れ」や「バッテリー残量低下」「Wi-Fiがない」など、かつてよく直面した問題に遭遇することが少なくなることで、人々は逆にそれらの問題をより強く意識することになる、とムービーは締めくくっています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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