サイエンス

食に関する「自制心の強さ」は脳の表面を構成する灰白質の量に関連していることが判明


By hana jang

ダイエット期間中で甘いものを控えなくてはならなくても、つい目の前にあるスイーツに反応してしまった……という経験がある人も多いはず。最新の研究からは、脳の特定の部位における灰白質(かいはくしつ)の量と、その人の食に対する自制心の強さが関連していることが明らかにされています。

Neuroanatomy of the vmPFC and dlPFC predicts individual differences in cognitive regulation during dietary self-control across regulation strategies | Journal of Neuroscience
http://www.jneurosci.org/content/early/2018/06/04/JNEUROSCI.3402-17.2018

The Amount of Gray Matter in Your Brain May Predict If You'll Stick to Your Diet
https://www.livescience.com/62744-gray-matter-brain-predict-diet-success.html

この研究はフランスなどにキャンパスを持つビジネススクール・経営大学院INSEADでDecision Neuroscience(決定神経科学)の教授を務めるヒルキ・プラスマン氏らの研究チームが実施したもの。人間の大脳や小脳における神経細胞の大部分を持つ灰白質の中でも特に、自制心に関係が強いとされる「背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex)」と「前頭前野腹内側部(ventromedial prefrontal cortex)」と呼ばれる2つの部位に注目してMRIを使った調査が行われました。

研究チームはまず、過去に実施された灰白質の量に関する3つの研究で得られたデータの分析を行いました。ここで用いられたデータは合計91人分におよび、被験者はいずれもやせ型で、ダイエットは行っていない人ばかりだとのこと。

研究では、脳の働きを見るために被験者をMRIの中に入れ、食べ物の写真を見せてその際に感じたことを報告するという方法で反応が調査されました。その際の手順は、まずMRIに入れられた被験者に3つの指示「健康さにもとづいて考える」「味にもとづいて考える」「ニュートラルな視点で考える」のいずれかが与えられます。この指示を5秒間見せられたあと、被験者にはヨーグルトやクッキーなどの食べ物の写真が提示され、その際にどの程度「食べたい」と感じたかを「強い否定(strong no)」から「強い肯定(strong yes)」までの数段階の項目で回答します。この時、被験者が意図的にウソの選択肢を選ばないように、食べたいと判断した食べ物はすべて実験後に被験者に食べさせています。

By Tyler Hewitt

研究チームは被験者が「より強く健康さにもとづいて判断した時」、または「味にもとづいて考えなかった時」に、その被験者が「自制心が強かった」という評価を行っています。そしてMRIのスキャン画像との比較の結果、対象とした2つの領域の灰白質の量が多い人ほど、強い自制心にもとづいた判断を下していたことが判明しています。

この結果に基づき、研究チームは研究の第二段階を実施しました。ここでは過去の実験には参加していない被験者が集められ、より自由度の高い環境で食べ物について判断させる環境を提供することで、依然として灰白質の量が自制心の強さに関連するかどうかを調査しました。

第二段階の調査でもMRIを用い、被験者に食べ物を見せた時の反応が調べられました。しかしその際には第一段階とは異なり、被験者には「食べ物から距離を置く」または「食べ物に没頭する」そして「ニュートラルに反応する」の指示が与えられました。そして実際に食べ物の写真が提示されたのですが、この際にも第一段階とは異なる方法が取られています。MRIに入ったまま写真を見せられた被験者は、「その食べ物を食べるために支払っても良い金額」をゼロから2.5ドル(0円~約300円)の範囲で答えるように指示されています。

By Domiriel

このようにして第二段階の調査が行われた結果、研究チームは第一段階と同じく「灰白質の量が多い人ほど、強い自制心に基づいた判断を下している」という結論に達しています。

今回の研究には参加していないコロンビア大学心理学科のケビン・オクスナー教授はこの結果について「興味深い内容」としつつ「結果は予測どおりのものであり、理にかなっている」という見方を示しています。オクスナー氏は今回の結果における最も重要な発見は、前頭前野腹内側部が自制心の働きに関与していた事実であると述べています。これまで、曖昧さがなく熟考に基づく自制心には背外側前頭前野が関与していることが明らかにされてきましたが、前頭前野腹内側部は一般的に、より主観的な判断に関係すると特徴付けられていました。オクスナー氏は「これら2つの領域が関連して働いているということは、おそらく非常に重要なものでしょう」と述べています。

今後の調査では、人が自制心に関するこれらの領域のトレーニングを行い、灰白質の量を増やすことができるのかどうかという点に関心が向けられることが考えられるとのこと。プラスマン氏は、脳には可塑性があり将来において構造を変化させることが可能であるとしており、今後は「私は自制心が弱いので、やめられない」と口にすることがなくなる時代が訪れるのかもしれません。

By theimpulsivebuy

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in サイエンス,   , Posted by logx_tm