3M製フロッピーディスクは粘着テープ技術の発展系だった
by In Memoriam: Gilles Péris y Saborit
接着剤やポストイットなどの製品で知られる化学企業「3M」は、かつてフロッピーディスクも生産していました。そんな3M製フロッピーディスクの歴史について、テクノロジー系メディアのIEEE Spectrumが解説しています。
The Rise and Fall of 3M’s Floppy Disk - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/3m-floppy
3Mが最初に開発した記録媒体は、音声の記録に使われる磁気テープ(オープンリール)です。3Mは1925年に粘着テープの「スコッチテープ」を発売。さらに1930年には透明な粘着テープを発売しました。音響機器開発メーカーの「Brush Developmen」は3Mが開発した粘着素材と磁気テープの親和性に着目し、3Mに対して磁気テープの共同開発を打診。そして、両社の協力によってScotchブランドのオープンリールが開発されました。
by Sameer Verma
1970年代初頭にIBMがフロッピーディスクの開発に成功すると、多くの企業がフロッピーディスクの開発に乗り出しました。3Mもフロッピーディスク開発の波に乗り1973年の秋頃に量産を開始しました。IEEE Spectrumによると、多くのメーカーがコンピューター関連の製品開発の経験をいかしてフロッピーディスクを開発していたのに対して、3Mは素材の開発経験に基づいてフロッピーディスクを開発していたとのこと。このため、3Mはフロッピーディスクの製品改良において有利な立場にあったとされています。
3Mは自社のフロッピーディスクの信頼製に自信を持っており、信頼製をアピールする広告を展開していました。以下のムービーは1984年に放送された3M製フロッピーディスクのCMで、「3M製フロッピーディスクを使えば心配が1つ減る」といったうたい文句で信頼製の高さをアピールしています。
80's Ads 3M Diskettes Floppy Disks 1984 remastered - YouTube
3Mはフロッピーディスクの発売後も積極的に研究開発を進め、1991年には21MBの容量を備えたフロッピーディスクに似た形状の磁気ストレージ「Floptical」をIomegaやMaxellと共同開発しました。
3Mの磁気ストレージ部門は1995年までに23億ドル(約3500億円)規模の事業に発展していました。しかし、1990年代後半からフロッピーディスクドライブを搭載しないコンピューターが増え始め、フロッピーディスクの市場は急速に縮小。3Mは1996年にフロッピーディスク事業をスピンオフ企業の「Imation」に移管し、ストレージ事業から撤退しました。その後、Imationは社名をGlassBridge Enterprisesに変更。さらにGlassBridge Enterprisesは2017年に「Imation」という商標に関する権利を韓国企業の「O-Jin Corporation」に売却しました。
フロッピーディスクは記事作成時点でも一部の分野で使われ続けていますが、フロッピーディスクの入手性の低さなどが原因でフロッピーディスクの使用を中止する動きが徐々に進んでいます。例えば、西陣織の織機システムではフロッピーディスクが使われ続けていることが有名でしたが、2024年1月15日には京都市産業技術研究所がフロッピーディスク不要の新型コントローラーを発表。また、2024年1月22日には経済産業省が「申請や届出の方法について、フロッピーディスク等の特定の記録媒体の使用を定める規定」の見直しを発表しています。
記録媒体として、FD(フロッピーディスク)等を指定する規制等の見直しのため、経済産業省所管の省令の改正を行いました(デジタル原則) (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2023/01/20240122004/20240122004.html
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