サイエンス

ワクチン接種前夜の睡眠時間が短いとワクチンの効き目が弱まってしまうという研究結果


新型コロナウイルスなどの感染症に対して有効なのがワクチンであり、接種を受けたワクチンの効果がどれほどなのかは多くの人々が気にしています。学術誌のCurrent Biologyに掲載された論文で、「ワクチン接種前夜の睡眠時間が短いと、ワクチン接種後に得られる抗体の量が少なくなってしまう」という研究結果が報告されました。

A meta-analysis of the associations between insufficient sleep duration and antibody response to vaccination: Current Biology
https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.02.017


Getting a good night’s sleep could boost your | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/982143

Poor sleep decreases vaccine effectiveness, especially for men | CNN
https://edition.cnn.com/2023/03/13/health/sleep-vaccine-immunity-wellness/index.html

Less than six hours’ sleep cuts immune response to vaccines, data shows | Medical research | The Guardian
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2023/mar/13/less-than-6-hours-sleep-reduces-vaccination-immune-response

十分な睡眠時間をとることは健康な心身を維持するために重要ですが、忙しい平日はどうしても睡眠時間が短くなってしまうという人も多いはず。そこでフランス国立衛生医学研究所のKarine Spiegel博士らは、ワクチンの効果に睡眠時間が及ぼす影響を調査するため、インフルエンザ・A型肝炎・B型肝炎のワクチン接種前夜の睡眠時間と、ワクチン接種後に得られる抗体の量について調べた7件の研究結果を分析しました。

研究チームは、ワクチン接種前夜に「睡眠時間が7~9時間だった人」と「睡眠時間が6時間未満だった人」を比較しました。その結果、睡眠時間が自己申告だった場合は、睡眠時間が短い人の方が抗体量が少なかったものの、科学的に有意な差は見られませんでした。

ところが、実験室での監視やデバイスを用いた監視に基づく客観的尺度で睡眠時間が測定された場合は、睡眠時間が6時間未満だとワクチン接種後の抗体量が有意に減少することが判明しました。この理由について研究チームは、人々は毎晩の睡眠時間を過大評価する傾向があるからだと考えています。


また、男性と女性で分けて分析したところ、睡眠時間による抗体産生量の変化は男性においてのみ有意であり、女性ではばらつきが見られました。男女間で睡眠時間が抗体産生量に及ぼす影響が異なった点について、研究チームは女性の抗体産生量には性ホルモンが及ぼす影響が大きいからだろうと指摘しています。

Spiegel氏は、「免疫学の研究から、性ホルモンが免疫系に影響を与えることがわかっています。女性では月経周期の状態、避妊薬の使用、閉経の状態によって免疫力が左右されます。しかし、今回まとめた研究においては、性ホルモン量に関するデータはありませんでした」と述べました。

さらに、抗体産生量に対する睡眠不足による悪影響は、65歳以上の高齢者よりも18~60歳の成人で大きいことも判明しました。この点について研究チームは、一般的に高齢者は睡眠時間が短いため、睡眠時間の減少による変化が少なかったからだと指摘しています。


今回の研究結果はあくまでインフルエンザやA型・B型肝炎のワクチンについて調査したものですが、研究チームはこの結果が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンにも適用できると考えています。カリフォルニア大学医学部の教授で論文の共著者のMichael Irwin氏は、「免疫系を刺激する方法は、COVID-19のmRNAワクチンを使用している場合でも、インフルエンザ・肝炎・腸チフス・肺炎球菌ワクチンでも同じです」と述べています。

研究チームによると、十分な睡眠をとらずにCOVID-19ワクチンを接種を受けた場合、抗体反応が2カ月分弱まってしまう可能性があるとのこと。論文の共著者であるシカゴ大学名誉教授のEve Van Cauter氏は、「良い睡眠はワクチンの保護期間を増幅するだけでなく、延長する可能性もあります」「COVID-19ワクチンによる保護のばらつきを見ると、既往症のある人や男性、肥満の人は保護効果が薄いことがわかります。これらはすべて個々の人々がコントロールできない要因ですが、睡眠は修正可能です」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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