サイエンス

農村地域や農場で育った子どもがアレルギーやぜん息になりにくい「農場効果」を引き起こす細菌が判明


数十年前から、農村地域や農場の近くで育った子どもはアレルギーやぜん息、花粉症などにかかりにくいことが知られていました。新たな研究で、「farm effect(農場効果)」として知られるこの現象を引き起こす細菌が特定されました。

Gram-Positive Bacteria and the Inverse Association between Farm Exposure and Childhood Asthma | NEJM Evidence
https://evidence.nejm.org/doi/10.1056/EVIDoa2500271

The farm effect – clearer than ever | LMU Hospital
https://www.lmu-klinikum.de/newscenter/press-releases/the-farm-effect-clearer-than-ever/3aac34865e847223

'Natural Protection From Asthma And Allergies': Scientists Isolate Bacteria Behind The Immune System Farm Effect : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/natural-protection-from-asthma-and-allergies-scientists-isolate-bacteria-behind-the-immune-system-farm-effect

衛生仮説とは、子どもの頃の衛生環境が免疫機能の発達に関連するという考えであり、ヨーロッパの工業化された国々で子どもたちのアレルギー・ぜん息・花粉症が劇的に増加したことを受けて提唱されました。衛生仮説によると、幼少期に環境中の微生物やウイルスにあまり触れない子どもは免疫系が機能不全を起こしやすく、過剰な炎症反応を起こしやすいとのこと。

これに対して自然と触れ合う機会が多い農村地域の子ども、特に家畜を飼育する農場で育った子どもでは、同様の免疫系の問題ははるかに少ないことが知られています。これは農場効果と呼ばれ、子どもたちの免疫系が畜舎の空気に漂う細菌という「スパークリングパートナー」と常に戦うことで、過剰な炎症反応を避けるように訓練されるためといわれています。

しかし、衛生仮説や農場効果はあくまで観察研究に基づいたものであるため、決定的な証明はされていません。そこで、ドイツのミュンヘン大学病院の疫学者であるマルクス・エーゲ氏らの研究チームは、農場効果を引き起こす細菌や関連する微生物代謝産物を特定するための研究を行いました。


研究チームは、南ドイツの農村部に住む1018人の小学生から、鼻腔(びくう)の粘液および就寝するマットレスのホコリをサンプルとして採取しました。また、農場の子どもである47人からは、牛舎のホコリのサンプルも採取したとのこと。

そして、採取したサンプルについて最先端の遺伝子解析と代謝解析に基づいた分析を実施した結果、農場効果に関連する9種類のグラム陽性菌が特定されました。これらの細菌はマットレスのホコリに含まれる微生物の相対存在量の6%を占めていましたが、牛舎のサンプルでは25%を占めていました。

論文の筆頭著者であるミュンヘン大学喘息・アレルギー予防研究所のジュリア・パガーニ氏は、「たとえばRomboutsia timonensisGlutamicibacter arilaitensisなどです。これらのグラム陽性菌は、ぜん息予防における農場効果全体の3分の2、花粉症とアトピー性湿疹に対する効果の半分を媒介しています」と述べています。

これらの細菌は牛の消化管に由来しており、キヌレニンキサンチンα-リノレン酸ステアリドン酸などの物質を産生します。これらの化合物を人間が吸入するとヒト気道細胞上の受容体である芳香族炭化水素受容体(AhR)ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)によって認識されます。

これらの受容体は免疫系を含む複数の機能を持っており、この働きによって過剰な炎症反応を防ぐとみられます。研究チームは論文で、「AhRの活性化レベルが高いと有害ですが、牛舎で細菌代謝産物を吸入することによって起こるような中程度のレベルは有益です」と述べました。


今回の研究結果は因果関係を証明するものではありませんが、「牛→牛舎の空気→細菌→代謝産物→人間の受容体→ぜん息などに対する防御」という生物学的連鎖を明らかにするものです。

研究チームは、「今回の新たな発見は、研究室の研究者が農場効果の分子レベルおよび細胞レベルでのメカニズムを解明するために活用できます。これにより、子どもたちが実際に牛舎で時間を過ごすことなく、農場効果を模倣する薬剤を開発できる可能性が開かれます」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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