赤ちゃんを母乳だけで育てた期間が長いほど小児ぜんそくになりにくいことが判明
母親が分泌する母乳にはアレルギーや下痢などのリスクを軽減する抗体が含まれており、母乳で育てられた赤ちゃんは入院や死亡リスクが低く、IQが高いといった研究結果も報告されています。新たにアメリカ・テネシー大学などの研究チームは、「赤ちゃんを母乳のみで育てる期間が長いほど小児ぜんそくになる可能性が低い」とする研究結果を発表しました。
The association between duration of breastfeeding and childhood asthma outcomes - Annals of Allergy, Asthma & Immunology
https://doi.org/10.1016/j.anai.2022.04.034
New Study: Longer Duration of Exclusive Breastfeeding Has Protective Effect on Childhood Asthma - ACAAI Public Website
https://acaai.org/news/new-study-longer-duration-of-exclusive-breastfeeding-has-protective-effect-on-childhood-asthma/
研究チームはぜんそくを発症する子どもの多くで6歳までに症状が出るため、乳幼児期の条件がぜんそくの発症に関連があることが示唆されていると指摘。母乳育児とぜんそくとの関連も以前から指摘されてきましたが、その研究結果にはさまざまな矛盾やギャップがあったとのこと。
そこで研究チームは、合計2000人以上の母子を追跡調査した3つの研究から、「母親がどのくらいの期間にわたり母乳のみの育児を行ったのか」と「子どもがぜんそくを発症したのかどうか」のデータを収集・分析しました。なお、今回の調査対象となった被験者のうち、黒人は38%、ヒスパニックは6%だったそうです。
分析の結果、2~4カ月にわたり母乳のみで育てられた子どもがぜんそくを発症する頻度は、母乳のみで育てられた期間が2カ月未満だった子どもの64%しかなかったことが判明。さらに、5~6カ月間にわたり母乳のみで育てられた子どもがぜんそくになる頻度は母乳のみで育てられた期間が2カ月未満だった子どもの61%、6カ月以上母乳のみで育てられた子どもはわずか52%という結果でした。
論文の筆頭著者であるテネシー大学健康科学センターのKeadrea Wilson医師は、「今回の研究結果は、母親が母乳のみで育てる期間が長ければ長いほど、子どもがぜんそくまたはぜんそく関連の症状を呈する相対的な確率が低くなることを示しました」とコメント。
また、今回の研究には関与しておらず、米国アレルギーぜんそく免疫学会(ACAAI)の副委員長を務めるAngela Hogan医師は、「さらに母乳育児期間中に粉ミルクやジュース、その他の食品を混ぜた場合(つまり母乳だけで育てたのではない場合)、同レベルの保護効果は得られないということもわかりました」と述べています。
Wilson医師は、「この研究は母乳育児が多い場合はぜんそくのリスクが低くなるという最近の分析結果を反映しており、近年の母乳育児に関する推奨事項を強化するものです」と述べました。
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