サイエンス

ピーナッツ製品を赤ちゃんにあげたらピーナッツアレルギーが77%減少したとの研究結果


ピーナツアレルギーは近年急増しており、例えばイギリスでは50人に1人がピーナツアレルギーを発症するといわれています。新たに発表された研究により、生後4~6カ月の時期に食べる離乳食が、アレルギーのリスクを低減する重要な機会になる可能性があることが分かりました。

Defining the window of opportunity and target populations to prevent peanut allergy - Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://doi.org/10.1016/j.jaci.2022.09.042

Peanut allergies could dramatically fall if babies weaned early on peanut products - University Hospital Southampton
https://www.uhs.nhs.uk/whats-new/news/peanut-allergies-could-dramatically-fall-if-babies-weaned-early-on-peanut-products

Peanut allergies reduced by 77% by introducing peanuts at 4-6 months old - The Jerusalem Post
https://www.jpost.com/health-and-wellness/article-734801

「アレルギーが心配な食品を早い時期に少量ずつ与えると、アレルギーになりにくい」と言われており、例えばアメリカ国立アレルギー・感染症研究所は「重症の湿疹か卵アレルギーのある場合は生後4~6カ月、軽度から中度の湿疹がある場合は6カ月ごろ、その他の乳児は家族の好みや文化習慣に従って年齢に応じた時期にピーナッツを幼児食に導入するように」と2017年のガイドラインで提案しています。また、欧州アレルギー臨床免疫学会も、「ピーナッツアレルギーの有病率が高い集団では、生後4~6カ月でピーナッツを乳児に与えること」を2021年のガイドラインで提案しています。ガイドラインが湿疹を基準にしているのは、赤ちゃんの頃に湿疹が強いと、食物アレルギーを起こしやすいためです。


イギリス・サウサンプトン大学のグラハム・ロバーツ氏らの研究チームは今回の研究で、アレルギーの原因となる食品を早期に摂取することが全人口に対してどのような影響を与えるかや、摂取を開始する時期はいつが最適なのかを調べるため、アレルギーリスクが低い乳児から高い乳児までさまざまな乳児を対象に行われた過去の検査結果のデータを調べました。

研究対象となった試験は、具体的には重度の湿疹や卵アレルギーを持った生後4〜11か月の乳児を対象とした「Learning Early About Peanut Allergy(LEAP)」とその予備的なスクリーニング試験、リスクが低すぎるかまたはすでにアレルギーになっているためLEAPに参加しなかった乳児に対し、生後60カ月の時点でアレルギー検査を行った「Peanut Allergy Sensitization(PAS)」、母乳で育てられた生後3か月の乳児で6種類のアレルゲン食品(ピーナッツ、ゆで卵、牛乳、ごま、白身魚、小麦)のテストを行った「Enquiring About Tolerance(EAT)」の4つです。


研究チームがこれらのデータを分析した結果、生後4~6カ月の時期にピーナッツ製品を与えるとアレルギーが77%減少し、この時期がピーナッツ製品の導入には最適なタイミングだということが分かりました。特に、湿疹がある赤ちゃんは生後4カ月とかなり早い段階で与えることが推奨されるとのこと。一方、生後12カ月の段階でピーナッツ製品の導入を開始した場合、アレルギー予防効果は33%にとどまりました。

ただし、赤ちゃんにピーナッツそのものを与えると誤って喉に詰まらせるおそれがあるため、研究者らは滑らかなピーナッツバターや、赤ちゃん向けに作られたピーナッツ製品を与える必要があるとしています。


論文の共著者であるキングス・カレッジ・ロンドンのギデオン・ラック氏によると、早期からピーナッツ製品を食べさせるのが一般的なイスラエルでは、ピーナッツアレルギーの人がとても少ないとのこと。ラック氏は「ピーナッツ製品を赤ちゃんの食事に導入することの利点は、年齢が上がるにつれて減少しました。この結果は、ピーナッツ製品を乳児の食事に早期に導入することが一般的で、ピーナッツアレルギーがまれな文化的背景があるイスラエルでの経験を反映しています」と述べました。

従来の研究では、アレルギーのリスクが高い乳児が念頭に置かれていましたが、今回の研究では全ての乳児にアレルギー対策を行うことで、効果を最大化できることもわかりました。というのも、アレルギーの多くは危険因子を持たない赤ちゃんに発症するからです。重度の湿疹を持つ赤ちゃんだけに対策を実施しても、アレルギーの発症は5%未満しか減りませんでした。

この結果について、ロバーツ氏は「従来はピーナッツを控えるべきだとされていたので、親たちは早期に食事に取り入れるのを避けていました。この最新のエビデンスは、シンプルで低コストかつ安全な介入を全人口に適用することが、将来の世代に多大な利益をもたらす効果的な予防公衆衛生戦略になり得ることを示しています」と話しました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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