「Appleのティム・クックCEOが従業員に送ったメールは労働法違反だ」とアメリカの独立機関が判断を下す
by Antonio Marín Segovia
世界有数のテクノロジー企業であるAppleは、実店舗であるApple Store従業員の労働組合結成を妨害していることが報じられており、従業員の扱いについて問題視する声が上がっています。新たに、アメリカの独立機関であるNational Labor Relations Board(NLRB/全米労働関係委員会)は、Appleによって従業員に課せられたさまざまな就業規則やティム・クックCEOから送られたメールが、従業員の権利を保護する全国労働関係法に違反しているとの判断を下しました。
Apple Executives Violated Worker Rights, US Labor Officials Say (AAPL) - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-01-30/apple-executives-violated-worker-rights-us-labor-officials-say
Apple Violated U.S. Labor Laws With Anti-Leak Email - MacRumors
https://www.macrumors.com/2023/01/30/apple-labor-law-violation-leak-email/
Apple’s leaked email about stopping leaks violated labor laws
https://9to5mac.com/2023/01/30/apples-email-violated-labor-laws/
今回問題となったAppleの社内ポリシーやクック氏からのメールは、2021年にAppleにおける性差別や安全面の問題に声を上げ、「無期限の休職」を求められた元エンジニアリングプログラムマネージャー・Ashley Gjøvik氏によってNLRBへ持ち込まれたものです。
Appleの女性マネージャーが職場の性差別や安全面の問題に声を上げたところ「無期限の休職」を求められる - GIGAZINE
Gjøvik氏が引用したAppleの従業員ハンドブックには、スタッフが「ビジネスの情報」を開示したり、記者と話したり、同僚の報酬を明かしたり、失礼なツイートを投稿したりすることを禁じる項目があるとのこと。これらの項目は、NLRBが監督する全国労働関係法に違反している可能性があると指摘されています。
また、2021年9月にクックCEOが全従業員に対して送信したメールの内容も問題視されています。メールの中でクック氏は、従業員から「会議の内容が記者に漏れている」ことについて不満の声が上がっていると報告。「リークした人物を特定するために私たちは全力を尽くしていますので、安心してください。知っての通り、私たちは製品IPであれ機密会議の詳細であれ、機密情報の開示を容認しているわけではありません。私たちはリーク者が少数の人間であることを知っています。また、機密情報を漏らした人間はこの会社にふさわしくないことも理解しています」と述べ、機密情報のリークに対して厳しい対処を取ると主張しました。
Appleのティム・クックCEOが機密情報をリークする社員に警告 - GIGAZINE
海外メディアのBloombergは、クックCEOのメールが送信される前の週に行われた社内会議では、給与の公平性やテキサス州の妊娠中絶禁止法についての質問が幹部に寄せられており、その内容がメディアによって報じられていたと指摘しています。
NLRBの広報担当者であるKayla Blado氏は2023年1月30日にBloombergへ送ったメールで、NLRBの法務部はAppleが従業員に課したさまざまな就業規則について、従業員による集団行動の権利行使を「妨害、抑制、抑圧する傾向がある」と判断したと述べています。さらにNLRBは、「クックCEOを含むApple幹部による発言や行動も全米労働関係法に違反する」という主張についても、実態があると認めたとのことです。Blado氏は、Appleが和解に応じなかった場合、NLRBの地域ディレクターが同社に対して訴状を提出する予定だと述べています。
アメリカの労働関係法は、労働者が互いにコミュニケーションを取り、職場の問題について集団行動を起こす権利を保護しています。NLRBは企業に対して懲罰的損害賠償を科したり、企業幹部に対して個人的に責任を負わせたりする権限を持っていませんが、企業に職場のポリシーを変えるように命令することが可能です。また、訴状を提出した場合、行政法裁判官によって審査されます。
以前からNLRBはAppleの慣行について問題視しており、2022年12月には、従業員の労働組合結成を妨害するためのAppleの行動が労働法に違反していと判断しました。
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