Appleが労働組合結成を妨害するために「おとり労働組合」を作ったことが暴露される
アメリカ通信労働組合(CWA)は、Appleによる不当な労働慣行について全米労働関係委員会(NLRB)に苦情を申し立てました。CWAが提出した訴状によると、Appleはオハイオ州コロンバスにあるApple Storeで「おとり労働組合」を作成したと記されています。
UNITED STATES OF AMERICA NATIONAL LABOR RELATIONS BOARD CHARGE AGAINST EMPLOYER
(PDFファイル)https://regmedia.co.uk/2022/12/16/cwa_ohio_complaint.pdf
Apple 'created decoy labor group' to derail unionization • The Register
https://www.theregister.com/2022/12/16/apple_decoy_labor_group/
CWAによると、Appleはオハイオ州コロンバスにあるApple Storeの従業員が労働組合を結成することを防ぐために、「おとり労働グループ」を作成していた模様。この「おとり労働組合」は、「従業員とリーダーが地域と小売両方の組織全体のイニシアチブ、ポリシー、慣行についてフィードバックを提供するための正式な手段として利用できる専用の労働組合」と説明されていたそうです。
CWAによると、Appleが作成した「おとり労働組合」は1年を通じて賃金と労働条件を改善するために労働者を組織化しようとする動きに反対していた模様。CWAは「労働者が独立して組織化することを辞めさせるために、会社主導の組合を作ることをAppleは選択した」と指摘しています。
訴状には、「(Appleが)参加を強制した会議を開催し、代表者が『Appleは組合が結成された場合、特定の交渉を拒否するだろう』と言及した」と記されています。さらに、この会議の中でApple Storeの管理者は、従業員が運営上の懸念について交渉することはできないと主張し、「従業員がマネージャーと個人的な会話をする機会を拒否する」と脅したとも記されているそうです。
なお、2022年4月、NLRBのジェニファー・アルッツォ法律顧問は、従業員が法定労働権の行使に関する雇用者のスピーチを聞くことを強制されるような会議(拘束型会議)を、全米労働関係法(NLRA)違反とみなすよう要請することを発表する覚書を発表しています。
NLRBは企業(雇用側)が組合を結成すること、つまり「雇用主が従業員グループを作成・後援し、この組合とだけ従業員の給与や福利厚生、勤務スケジュールなどの問題を議論すること」を禁止しようとしており、過去にはNLRAで違法としたこともありますが、これは最高裁判所により覆されています。雇用主側が組合を結成することは「組合つぶし」につながるとして、NLRBは今回のような「おとり労働組合」の結成に反対しています。
Appleの従業員による組合結成の動きは、2021年頃から始まりました。ワシントン・ポストによると、2022年2月までに少なくとも2つのApple Storeで組合結成の準備が行われています。その後も、メリーランド州タウソンとオクラホマシティのApple Storeでも、組合結成に向けた動きが確認されており、イギリスまで同様の動きが波及していることが報じられています。
ただし、ジョージア州アトランタのApple Storeでは、組合結成を問う投票が「Appleによる強制参加の反組合会議などの違法な組合つぶし」により中止となったと報じられており、Appleは組合結成を防ぐためにさまざまな活動を行っていることが指摘されています。
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