40年以上前から地球温暖化について石油メジャーのエクソンモービルが正確に予測していたことが改めて定量評価により証明される
ハーバード大学とポツダム気候影響研究所の研究者が、アメリカの石油メジャー最大手・エクソンモービルが1970年代に発表した地球温暖化に関する予測が非常に正確であったとする研究論文を発表しました。
Assessing ExxonMobil’s global warming projections | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0063
New study puts a number on what 'Exxon knew' decades ago about climate science
https://phys.org/news/2023-01-exxon-knew-decades-climate-science.html
Study: Exxon Mobil Accurately Predicted Warming Since 1970s
https://www.voanews.com/a/study-exxon-mobil-accurately-predicted-warming-since-1970s-/6916612.html
エクソンモービルは、1970年代から非常に精巧に気候変動についての科学的研究を行っており、「2020年には大気中の二酸化炭素濃度が400~420ppmになる」という予測を打ち出していました。実際、2019年5月には地球の二酸化炭素濃度は415ppmを突破しており、エクソンモービルの予測が非常に正確だったことがよくわかります。
石油メジャー最大手が40年前から地球温暖化による気候変動を予測していた - GIGAZINE
by Bill Dickinson
エクソンモービルが1970年代から地球温暖化に関する予測を正確に行っていたことが明らかになってから、研究者や団体からさまざまな指摘がされてきましたが、予測データを定量的に評価するような研究論文はこれまで存在しませんでした。そこで、ハーバード大学とポツダム気候影響研究所の研究者がエクソンモービルの予測データを掘り下げたところ、エクソンモービルの過去の予測データは非常に正確なものであり、数十年前からかなり詳細に地球温暖化の行く末を予測できていたことが改めて明らかになっています。
以下のグラフはグレーの線がエクソンモービルの科学者が予測した地球温暖化予測データで、赤線が地球で実際に観測された平均気温の変化を示したもの。グレーの線が複数あるのは、エクソンモービルが1977年から2003年にかけて複数の気候モデルを構築して地球の温度変化を予測していたためです。
研究チームは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と同じ統計手法を使用して、エクソンモービルの科学者が報告した地球温暖化予測に関するデータを分析しました。その結果、エクソンモービルの予測の63~83%が、その後の地球温暖化の結果と一致していたことが判明しています。
さらに、エクソンモービルの科学者がモデル化した複数の予測の平均スキルスコアは「67~75%」で、最も精度の高いモデルの場合は「99%」であったことも明らかになっています。なお、NASAの科学者であるジェイムズ・ハンセン博士が1988年にアメリカ議会に提出した地球温暖化予測のスキルスコアは、38~66%でした。
同論文の共著者のひとりであるナオミ・オレスケス氏は、エクソンモービルの予測の正確さについて「驚くべきものであった」と述べています。
研究チームは「エクソンモービルは氷河期が来るという見通しを正しく否定し、人間が引き起こした地球温暖化が最初に検出される時期を正確に予測し、温暖化を2度未満に抑えるための『炭素収支』を合理的に見積もることに成功していました。ただし、気候科学に関するエクソンモービルの公式声明は、同社が行った予測とは矛盾する内容でした」と指摘。
エクソンモービルは過去に気候変動について正確な予測を行いながらも、その情報を隠してきたとして投資家から訴えられています。今回発表された研究論文でも、「今回の調査結果は、研究者・ジャーナリスト・弁護士・政治家などによる『エクソンモービルが人為的な地球温暖化の脅威を正確に予見していた』という主張を裏付け、定量的な正確さを加えるものです」と記されています。
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なお、研究チームは「エクソンモービルの予測のほとんどは、その後の観測結果と一致しており地球温暖化を正確に予測していたことがわかりました。エクソンモービルの予測は、独立した学術モデルや政府モデルの予測と一致しており、少なくともこれらのモデルと同等レベルの巧妙なものであったことがわかります」とも記しています。
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