環境汚染の原因となる使い捨てプラスチックの55%がわずか20社の企業によって作られている
ペットボトルや食品の包装といった使い捨てプラスチックはほとんどが焼却または埋め立て処理されており、海洋汚染などの原因になるだけでなく地球温暖化にも影響を与えています。そんな使い捨てプラスチックについてオーストラリアの慈善団体であるミンダルー基金が、「使い捨てプラスチックを製造する企業トップ100社」のランキングを作成しました。
Executive Summary | The Minderoo Foundation
https://www.minderoo.org/plastic-waste-makers-index/findings/executive-summary/
Just 20 Companies Produce Over 55% of All Single-Use Plastic Waste in The World
https://www.sciencealert.com/just-20-companies-produce-over-half-of-all-single-use-plastic-waste-report-shows
Half of single-use plastic waste produced by just 20 companies - CNN
https://edition.cnn.com/2021/05/18/world/single-use-plastics-scli-intl/
プラスチックごみによる環境汚染について論じる際、一般的には使い捨てプラスチックを使って製品を包装するメーカーや、買い物客にビニール袋を提供する小売業者などに焦点が当てられることがほとんどです。過去には各国で収集されたプラスチックごみに印字されたメーカー名から、「世界をプラスチックごみで汚染している企業ランキング」も公開されています。なお、2019年に発表されたこの調査では、コカ・コーラやネスレ、ペプシコといった飲料や食品メーカーが上位を占めています。
世界をプラスチックで汚染している企業ランキングが公開される - GIGAZINE
しかし、実際にこれらのメーカーがプラスチックそのものを製造しているわけではなく、原料となる化石燃料からプラスチックを製造するメーカーは別にあります。そこでミンダルー基金の支援を受けた研究チームは、化石燃料からプラスチックを生み出すメーカーに注目した調査を行いました。
研究チームは使い捨てプラスチックの主要な材料であるポリプロピレン(PP)・高密度ポリエチレン(HDPE)・低密度ポリエチレン(LDPE)・リニアポリエチレン(LLDPE)・ポリエチレンテレフタラート(PET)を製造する、世界各地の1200もの施設について調査しました。その結果、これらの施設を所有するのは約300の異なる企業であり、その上位100社が全世界の使い捨てプラスチックの約90%を生み出していたことが判明。さらに、上位20社のプラスチックメーカーだけでプラスチックごみの約55%を製造していたそうです。
研究チームが報告したプラスチックメーカー上位20社が以下の通り。1位のエクソンモービルと2位のダウはアメリカの企業、3位のSinopec(中国石油化工)は中国の企業であり、これら3社はそれぞれが年間500万トン以上の使い捨てプラスチックを製造しているとのこと。エクソンモービルはCNNの問い合わせに対し、「当社はプラスチック廃棄物に関する社会の懸念を共有しており、対処しなければならないことに同意しています」とコメント。問題に対処するには企業・政府・環境団体・消費者の協力が必要であり、すでにリサイクル性の向上やプラスチックごみの回収を支援していると述べました。
研究チームは、「今日の規制は主に、使い捨てプラスチックを使用して完成品を販売する何万もの企業を対象としています」として、プラスチック問題において主要な生産者がそれほど注目されていないと指摘。「プラスチックごみの危機に対する効果的な解決策は、数が比較的少ないサプライチェーンの大本にあるプラスチックメーカーを介して問題に取り組むことです」と述べ、プラスチックメーカーに働きかけることでサプライチェーン全体に影響を及ぼすことが可能だと主張しました。
また、今回の研究では実際に化石燃料からプラスチックを生産するメーカーだけでなく、これらのメーカーに資金を融資した銀行についても調査されました。その結果、プラスチックメーカーに資金を提供するトップ5の銀行は、いずれもアメリカまたはイギリスに拠点を置いていることがわかったとのこと。
2019年には1億3000万トンもの使い捨てプラスチックが世界中で廃棄され、そのうち35%が焼却処分、31%が管理された埋め立て地に廃棄されたものの、実に19%は陸地または海に直接廃棄されたとみられています。また、2019年における世界全体の温室効果ガス排出量のうち、使い捨てプラスチックのライフサイクルで排出された温室効果ガスが1.5%を占めているそうです。
近年では、発電や交通機関などの分野が化石燃料から脱却してグリーンエネルギーに移行する動きを進めているため、化石燃料の消費量に占めるプラスチック製造の割合はますます大きくなっています。今後もプラスチックの生産能力は向上し、今後5年間で世界全体におけるプラスチック生産能力は30%以上も増える可能性があるとのこと。世界がパリ協定によって定められた「産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑える」という目標を達成した場合、2050年の二酸化炭素排出量に占める使い捨てプラスチック製造の割合が5~10%に達する可能性があると研究チームは述べています。
プラスチックごみ対策における最も重要なステップだと研究チームが主張しているのが、化石燃料から新たに作るバージンポリマーではなく、「リサイクル材料から作られたプラスチック」の使用量を増やすというものです。記事作成時点では全プラスチック生産量の98%をバージンポリマーが占めており、リサイクル材料を利用したプラスチックは約2%しかありません。企業がバージンポリマーではなくリサイクル材料を使ったプラスチックの製造に注力すれば、環境や気候に与える影響が軽減できるとのことです。
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