プラスチックはなぜ完全にリサイクルするのが難しいのか?
By Prostock-studio
プラスチックは軽くて丈夫で密封性や耐熱性に優れ、透明性があり着色も自由と素材として優れているだけでなく、使い終わった後にリサイクルすることが可能な優秀な素材です。しかし、全てのプラスチックがリサイクルとして回収されるわけではなく、たとえ回収されても全てが新たなプラスチックになるわけでもありません。一般的なスーパーマーケットなどで購入できる製品に使用されているプラスチックはアメリカでどのように処理されているのか、National Public Radio(NPR)がわかりやすく解説しています。
Plastics: What’s Recyclable, What Becomes Trash — And Why
https://apps.npr.org/plastics-recycling/
◆プラスチックの種類とリサイクル可不可について
・ラップフィルム:リサイクル不可
野菜・肉・チーズなどの包装に使われるラップフィルムは「リサイクル不可」となります。ラップフィルムはゴミの中でもかなりの割合を占めますが、薄いフィルムが機械に巻き付いてしまう可能性があるため、リサイクル施設での処理は不可能です。
・小型プラスチック類:リサイクル不可
小型プラスチック類は、通常はリサイクル不可。パン袋クリップ(バッグ・クロージャー)・薬の包装・使い捨てスプーンなどの袋といった3インチ(約7.6cm)以下の小型プラスチックは機器の間に入り込んで故障の原因になってしまいます。また、女性の生理用品であるタンポンのアプリケーターも小型プラスチックに分類され、リサイクルできません。
・プラスチックパッケージ:リサイクル不可
袋状のプラスチックパッケージは、リサイクル施設のコンベアにへばりついてしまうためリサイクル不可。くわえて、ポテトチップスの袋などはアルミニウムの内張となっており、プラスチックだけを単離してリサイクルすることが不可能です。
・デオドラントの固形容器:リサイクル不可
デオドラントの容器は、ラベル・キャップ・可動部がそれぞれ別のプラスチックでできているため、通常はリサイクル不可。アメリカでは容器を回収してリサイクルしてくれるサービスを行う企業もあるそうです。
・ペットボトル:リサイクル可能
ペットボトルはリサイクルを前提として作られたパッケージです。ただし、ラベルはリサイクル不可なので、回収前に取り外しておく必要があります。ペットボトルのキャップをペットボトルに取り付けたままリサイクルできるかどうかは、リサイクル施設の設備によるそうです。
・その他のプラスチックボトル:リサイクル可能
洗剤・シャンプー・液体石けんなど、フタ部分の面積が底面以下のプラスチックボトルは基本的にリサイクル可能。ただし、浴槽洗剤のようにスプレーノズルが付いた容器はノズルヘッドに金属が含まれている場合があるので、ノズルを分別しておく必要があります。
・重ね合わせ式プラスチック容器:リサイクル可能かは自治体による
スーパーで惣菜を入れるために使われているフタと容器が一体となっているタイプのプラスチック容器はペットボトルと同じタイプのプラスチックでできていますが、その形状故に必ずしもリサイクルできるとは限らないとのこと。リサイクル可能かどうかは、自治体によって異なります。
・ヨーグルト・バターの容器:リサイクル可能かは自治体による
ヨーグルトやバターの容器は複数のプラスチックを使用している場合が多く、リサイクルが困難とのこと。しかし、アメリカにはヨーグルトやバターの容器をペンキ缶にリサイクルする取り組みを行っている企業もあるそうです。
・発泡スチロール:基本的にリサイクル不可
スーパーで販売されている肉のトレイとして使用されている発泡スチロール容器はほとんどが空気でできています。空気を除去して再利用しやすい形にするには特殊な機械が必要とのこと。アメリカでは多数の都市が発泡スチロールを含む発泡プラスチックを禁じており、2019年にメイン州とメリーランド州はスチロール樹脂を全面禁止にする州法を可決しました。
・ビニール袋や包装用プラスチック:基本的にリサイクル不可
パンやシリアルを包むビニール袋や包装用のプラスチックは、リサイクル施設の機械を故障させてしまうため基本的にはリサイクル不可。ただし、ウォルマートなどの大手食料品店チェーンではビニール袋を回収する取り組みを行っているそうです。
・HOW2RECYCLE:リサイクル可能
「HOW2RECYCLE」はアメリカの環境系NGOGreenBlueが主導しているリサイクル可能であることを示すラベルです。
HOW2RECYCLEラベルがついたパッケージ類はすべてリサイクル可能。スーパーマーケット最大手のウォルマートもプライベートブランドでHOW2RECYCLEラベルを採用しており、HOW2RECYCLEはアメリカで一般的になりつつあるそうです。
◆プラスチックはどのようにリサイクルされるのか?
リサイクル施設に運ばれたプラスチックは、人と機械によってさらに分別されます。リサイクル施設の規模は自治体によってさまざまで、大企業が運営しているリサイクル施設もあれば、個人事業レベルの小規模なリサイクル施設もあるとのこと。「どのようにリサイクルされるか?」はその施設によって異なるため、定まったガイドラインはないそうです。
リサイクル可能なプラスチックは圧縮され、廃プラスチックからプラスチック容器を製造する企業や衣類・家具などを製造する企業に販売されます。一方で、リサイクルされたプラスチックを使うよりも新しいプラスチックを使うほうがコストが安くつく場合があるとのこと。
プラスチック容器・包装が抱える問題点の1つは、「リサイクルを意識した設計になっていない」ということ。アメリカのリサイクル施設はメーカーと協力して、リサイクルできるパッケージを設計する取り組みを行っているそうです。
また、リサイクル可能であっても「リサイクルに出さない」という問題もあります。ペットボトルはリサイクルに最適なプラスチックの1つですが、約3分の1がリサイクルされずにそのまま捨てられています。しかし、だからといって「分別せずになんでもリサイクルに出す」というのも問題です。
NPRは「リサイクルだけでは廃棄物問題を解決できませんが、解決のための重要なピースの1つだと考えられます」と述べています。
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