プラスチックごみによる環境汚染に対して人類はどう向き合うべきか?

安価で軽量で丈夫というプラスチック素材によって、私たちの現代的な生活は豊かなものとなっています。しかし、同時に毎年大量に排出されるプラスチックごみによる環境汚染問題も叫ばれていて、プラスチック製品の使用を控えたり、リサイクルを行ったりして解決に取り組んでいます。このプラスチックごみの問題はどういったもので、どう対処すべきなのかについて、日常のさまざまな疑問を科学的アプローチで解説するKurzgesagtがYouTubeに公開しています。
Plastic Pollution: How Humans are Turning the World into Plastic - YouTube

ギリシャ神話に登場するミダス王は、神から「触れるものすべてを黄金に変える能力」を授かります。ブドウも衣服も岩もすべて触れれば美しい黄金となり、ミダス王は巨万の富を得ます。

しかしその喜びもつかの間、食べ物や飲み物もすべて黄金に変わり、抱きしめた自分の娘が黄金の彫像になってしまったことで、ミダス王は神から授けられた能力が破滅へ導くものだということに気付きます。誰にも触れることができないミダス王は孤独に打ちひしがれます。

人類も石油からプラスチックを作り出す魔法のような技術を手に入れましたが、まるでミダス王の手のように、この技術で自らを破滅に導きかねません。

プラスチックはポリマー(重合体)と呼ばれる、分子が鎖のようにいくつもつながってできた物質が主原料となっています。

ポリマーは細胞膜・絹糸・髪の毛・昆虫の外殻・DNAなど、自然界にも多く見られます。

人類はおよそ100年前、ポリマーを原油から人工的に作り出すようになりました。

その一例がポリエチレンテレフタレート(PET)です。PETはその名の通り、エチレングリコールとテレフタル酸が連なってできたもので、1941年に製法が確立され、1948年から市場に出回り始めました。

加工しやすく安価なPETは、飲料容器のペットボトルやフリースなどの衣料用繊維に用いられます。

他にも石油から作れるプラスチックにはフェノール樹脂やポリ塩化ビニル(PVC)や……


私たちの生活にとってプラスチックはもはや欠かせない素材であり、身の回りにあるほとんどのものにプラスチックが使われています。

しかし、私たちの生活がプラスチックに依存するにつれて、ごみとして排出されるプラスチックの量も増えているのも事実。

プラスチックの40%は包装に使われていて、アメリカでは1年間に排出されるごみの3分の1が包装用のプラスチックといわれています。発明されてから約100年の間で、人類はおよそ83億トンものプラスチックを生み出していて、2016年だけで3億3500万トンのプラスチックを生産しているとのこと。

一方で、100年の間に63億トンものプラスチックごみを排出していて、それらを1か所に積み重ねると1辺1.9kmの立方体となり、その体積はなんと約6.9立方kmにもなります。しかし、プラスチックは耐久性が高く、自然に分解されるには500年から1000年かかると言われているため、この量のごみを埋め立てても分解されて減っていくことはほとんど期待できません。

排出されたプラスチックごみの9%はリサイクルされ、12%は焼却炉などで燃やされます。しかし残りの79%はそのまま廃棄される運命にあります。

そのうち年間800万トンは海に廃棄されています。このまま海洋投棄が続けば、2050年には海に投棄されたプラスチックごみの量は海にいる魚の総重量を超えるといわれています。

また、海鳥の90%がプラスチックごみを飲み込んでいますが、プラスチックごみは消化できないため、海鳥の胃を満たしてしまい、餓死を招く危険性があります。

2018年にスペインで発見されたマッコウクジラの死体からは、プラスチックの袋や網など、32kgものプラスチックごみが発見されました。

特に近年問題になっているものが、マイクロプラスチックです。

マイクロプラスチックは非常に微細なプラスチック製の粒子です。そのサイズは5mmから1mmにも満たないものも。

マイクロプラスチックは研磨剤・洗顔料・化粧品に含まれている場合も多いのですが、海を漂うプラスチックが紫外線によって分解されて細かい断片となって生まれるケースも多くみられます。

海にはマイクロプラスチックが51兆個も浮遊していて、海の生き物が簡単に飲み込んでしまうとして問題となっています。魚は口から飲み込んだマイクロプラスチックを消化できないために、消化管や接触期間が物理的につまってしまったり、傷つく可能性があります。しかし問題はそれだけではなく、マイクロプラスチックそのものが毒性を持つ可能性が示唆されています。例えばさまざまなプラスチックの合成に使われるビスフェノールA(BPA)は人体の内分泌系を阻害するという説があります。

またフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)あるいはDEHPと呼ばれる物質は、プラスチックを加工しやすくするために使われますが、これにはBPAと同じく内分泌系を阻害する他、高い発がん性があるという報告があります。

マイクロプラスチックは少しだけであれば人体の中に入ってもすぐ悪影響が出るというわけではありません。しかし、海中のプランクトンもマイクロプラスチックを摂取してしまいます。

そのプランクトンを小さな魚が大量に食べ……

さらにその小さな魚を大きな魚やカニが食べてしまったり、海中の掃除屋とも呼ばれるカキがプランクトンやマイクロプラスチックを大量に吸収することで生物濃縮が起こります。これらの大きな魚やカニやカキを食べると、一度に大量のマイクロプラスチックを摂取することとなり、人体にも大きな影響を及ぼします。

ハチミツやビールなど、私たちの身の回りの飲食物からマイクロプラスチックが検出されている例が既に存在しています。

赤ん坊の8割の体からプラスチックの添加物であるフタル酸類が測定可能なレベルで見つかっています。また、93%の人の尿からBPAが検出されたという研究データも存在しています。

ではプラスチックを一切禁止することが世界をよりよくすることにつながるかというと、プラスチックごみの環境汚染問題はそれほど単純なものではありません。

プラスチックの代用になるものは、トータルで見ると環境にさらに悪影響を与えると考えられるものも多く存在します。例えばデンマーク政府の研究によると、使い捨てのポリ袋を作るために必要なエネルギーや二酸化炭素排出量は、綿の袋を作るよりも圧倒的に少ないとのこと。1つの綿の袋を7100回使わなければ、むしろポリ袋の方が環境負荷が少ないといわれています。

プラスチック・綿・紙のいずれにも、何らかの環境負荷があります。

また近年、食べ物のごみから排出されるメタンガスが環境問題として取り上げられますが、食べ物をプラスチックの包装で覆うことで腐敗を遅らせることができ、メタンガスの排出量を抑えているという考え方もできます。

中国・インド・アルジェリア・インドネシアなどの新興国はここ数十年の間に劇的な速度で工業化しています。海洋投棄されるプラスチックごみの90%がアジアの10河川とアフリカに集中していると言われ、特に中国の揚子江だけで毎年150万トンのプラスチックが海に流されているとのこと。

問題は、産業の成長スピードにごみ廃棄のインフラが追いつかずにリサイクルができていないことです。ヨーロッパやアメリカの政治家がプラスチックごみの問題に取り組むのであれば、まずは新興国のインフラづくりに協力することが、自国のプラスチック製品を減らすことと同じくらい重要だとムービーは主張しています。

プラスチックごみによる環境汚染は複雑な問題であり、自分たちの国だけではなく、地球全てを見据える広い視野で取り組んでいかなければ解決することはできないのです。

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in サイエンス, 動画, Posted by log1i_yk
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