世界の海に漂う110億個のプラスチックごみがサンゴを死に追いやっている
海水温の上昇が原因で白化現象によってサンゴが大量に死滅していることが知られていますが、新たに、海に廃棄された大量のプラスチックごみが付着して病原菌が繁殖し、サンゴが死滅していることがアメリカの研究者によって明らかにされました。
Plastic waste associated with disease on coral reefs | Science
http://science.sciencemag.org/content/359/6374/460
Plastic Is Riddling Corals With Disease - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2018/01/plastic-junk-coral-disease/551495/
コーネル大学のジョリア・ラム博士の研究チームは、4年間にわたってミャンマー、タイ、インドネシア、オーストラリアの4カ国159カ所の珊瑚礁を分析しました。その結果、通常4%というサンゴに病気が発生する確率は、プラスチックが付着することで89%まで高まることが分かりました。特に、魚のすみかとしても機能する複雑な形状のサンゴほど、プラスチックゴミが付着しやすいため、単純な球状のサンゴに比べて8倍も高く病気になる可能性が高いこともわかりました。
これまでプラスチックによる海洋汚染問題はさまざまな研究が行われ、海鳥が飲み込むケースがあることなどが知られていましたが、ラム氏によると、驚くべきことににプラスチックごみとサンゴの病気感染を関連づける研究はこれまでなかったそうです。
調査の結果、オーストラリアのグレートバリアリーフのようにプラスチックごみに汚染されたサンゴが比較的、少ない地域もあれば、インドネシアのようにプラスチックごみであふれかえった地域も見つかるなど、サンゴに与えるプラスチックごみの汚染状況にはばらつきがあるとのこと。ただし、世界の珊瑚礁の半分以上があるアジア太平洋地域には、プラスチックごみの汚染ワースト10のうちの8つが含まれており、約110億個のプラスチックごみが海中に漂っており汚染されていると研究者は推測しています。残念なことに、このデータには世界最大のプラスチックごみ汚染国である中国のデータが含まれていないため、実態はさらに深刻だとのこと。
プラスチックごみが付着するとなぜサンゴが病気になるのか詳細なメカニズムはまだ解明されていませんが、プラスチック片によって傷つけられたサンゴ表面からプラスチックに付着した細菌が侵入するのが原因ではないかと指摘されてます。
サンゴの死滅現象の要因は、地球温暖化にともなう海水温上昇などが知られてきましたが、プラスチックごみも大きな影響を与えていることが分かりました。もっとも、問題解決への難しさという点でいえば、事情が複雑すぎる地球温暖化対策に比べれば、プラスチックごみの問題は各国の努力によって解消は十分可能なことから、世界各国で問題を共有して早急な対策を講じることが求められています。
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