サイエンス

タマゴの薄皮で二酸化炭素を吸着、台所から始める温暖化対策に


タマゴの殻の内側についている薄い膜のことを卵殻膜と呼ぶそうですが、ゆでたまごをむく時にうっとうしかったり、半透膜の例として理科の実験で使ったことがあったりするあの膜が、脚光を浴びるかもしれません。

インドの科学者たちによる研究で、卵殻膜は重量の約7倍の二酸化炭素を吸着できると判明し、温暖化対策に利用できるのではないかと示唆されています。

詳細は以下から。Eggshells could help combat climate change, research suggests

大気中の二酸化炭素濃度は19世紀中ごろに化石燃料のエネルギーによる産業革命が起きたころから上がりはじめ、産業革命前には体積比で280ppmだったのが、2005年には381ppmにまで上昇しています。2010年10月現在では大気中の二酸化炭素濃度は388ppmとなっているそうです。

1751年以降、化石燃料の燃焼とセメント製造により排出された二酸化炭素は3000億トン近いとされているのですが、この3000億トンのうち半分は1970年代半ば以降に排出されたものと聞くと、ここ数十年でいかに急速に温室効果が進んでいるか、想像がつくのではないでしょうか。


カルカッタ大学の化学工学科のBasab Chaudhuri教授らの研究で、卵殻膜は大気中の二酸化炭素を、最大で自重の7倍近く吸収できるということが明らかになりました。論文はInternational Journal of Global Warming誌に掲載されています。

卵殻膜に吸収された二酸化炭素は、環境負荷が低い有効利用の方法が確立されるまで貯蔵しておくことができます。二酸化炭素は化学工業ではさまざまな製品の原料として使われ、毒性溶媒の代替として使われる場合もあるとのことで、こういった工業利用のほか、将来的には卵殻膜に貯蔵された二酸化炭素から無公害燃料を製造する方法も開発されるかもしれません。

卵殻膜は卵の硬い殻のすぐ内側にある、タンパク質の繊維が炭酸カルシウムに絡みついた織物のような構造の膜で、厚さ100マイクロメートル(0.1mm)ほど。


Chaudhuri教授らの実験では、弱い酸により卵殻膜を外側の殻からはがし、二酸化炭素吸着剤として使うことに成功しました。工業レベルでの利用には卵殻膜を殻から分離する機械的な方法の確立が必要とのことですが、家庭で料理に使った卵の薄皮を空気にさらすだけでも二酸化炭素を吸着するので、わずかながらキッチンの二酸化炭素濃度を下げることができるようです。

重量の7倍の二酸化炭素を吸着できるといっても、タマゴ1個の薄皮の重さなどたかが知れているではないか、と思うかもしれませんが、インドでは年間160万トンのタマゴが消費されるとのこと。卵角膜は重量比で鶏卵の0.7%程度なので、1万1200トンの卵殻膜が廃棄されているということになります。これをすべて二酸化炭素吸着剤として使用すれば、約7万8000トンの二酸化炭素を吸着・貯蔵できるわけです。

ちなみに、人口ではインドの約10分の1なものの国民一人あたりのタマゴ消費量世界一をほこる日本では、年間約250万トンの鶏卵が消費されているとのことなので、年間に約12万トンの二酸化炭素を吸着できる量の卵殻膜が出ているということになります。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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