温暖化対策に攻めの一手、ウシのゲップを止めてミルクの出まで良くするサプリメント開発に成功
メタンは温室効果ガスとして二酸化炭素の20倍以上強力なのですが、世界で人為的に排出されるメタンの37%近くがウシなどの家畜のゲップによるものだそうです。
これまでに温暖化対策の一環として品種改良によりゲップをしないウシを作り出す取り組みなども行われていますが、ペンシルベニア州立大学の酪農科学者たちは、ウシのゲップを40%減らすだけでなく、ウシのミルクの出まで良くするサプリメントの開発に成功したそうです。まさに一石二鳥のサプリメントですが、普通の家庭のキッチンにもあるような意外な原料でできているとのこと。
詳細は以下から。Penn State Live - Unusual feed supplement could ease greenhouse gassy cows
赤外線を吸収するメタンの性質や、大気中にとどまる期間などを考慮すると、メタンの温室効果は20年間で二酸化炭素の72倍、100年間で25倍とされています。
メタンはウシやヒツジ、ヤギ、バイソンなどの反芻動物の消化の過程で発生します。ウシが食べ物を消化するとき、第一胃(ルーメン)の中のバクテリアがその食物を発酵させることにより各栄養素の状態に分解するのですが、その発酵過程の副産物として二酸化炭素とメタンが排出されるそうです。
ペンシルベニア大学の酪農科学者Alexander Hristov准教授らは、オレガノを主原料としたサプリメントにより、実験室レベルと実際に乳牛を使った試験でウシのメタン排出量を40%減らすことに成功しました。試験ではウシにネガティブな副作用は現れなかったものの、ミルクの出が良くなるといううれしい副作用があったとのこと。実験中に1頭の1日あたりの乳の生産量は3ポンド(約1.35kg)近く増加したそうです。
「考えてみると、これは不思議なことではありません。メタン生産はウシにとってエネルギー損失となっていたわけですから、その無駄に使われていたエネルギーをほかのこと、例えばミルクを作ることに使えるようになったわけです」とHristov准教授は語っています。
エサに抗生物質(殺菌剤)を混ぜ投与することによりメタン排出量を抑える方法もあるそうですが、自然な原料でできたサプリメントの方が好ましいと考えたHristov准教授らは、6年間かけて数百種の植物やエッセンシャルオイル、スパイスなどの中からオレガノが効果的であることを探り出しました。
オレガノに含まれるカルヴァクロール、ゲラニオール、チモールといった成分が特にメタン抑制に重要な働きをすると考えられるとのことで、今後はその有効成分を特定し、さらに試験を重ねることにより商用化を目指すそうです。
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