サイエンス

空気中の窒素と原油から医薬品の材料を作り出す新しい窒素固定法が開発される


イェール大学の研究チームが、大気中の窒素からアンモニアなどを生成できる窒素固定の新しい方法を開発したと発表しました。研究チームは、新しい技術が染料や医薬品の製造技術に応用できると期待しています。

Coupling dinitrogen and hydrocarbons through aryl migration | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2565-5

New nitrogen products are in the air | YaleNews
https://news.yale.edu/2020/08/12/new-nitrogen-products-are-air


窒素固定とは、空気中に存在する窒素分子(N2)を、アンモニア(NH3)や硝酸塩(NO3-)など反応性の高い窒素化合物に変換するプロセスのこと。自然界では、地中の微生物が空気中の窒素を吸収し、グルタミン酸塩や硝酸塩などの植物が利用できる形に変換しています。

また、20世紀初頭に開発されたハーバー・ボッシュ法は人工的に窒素固定を行う方法。鉄触媒と高温高圧装置を使って窒素分子の三重結合を切断し、化学肥料となるアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法は、「水と石炭と空気からパンを作る方法」と呼ばれました。

by Antimoni

エール大学化学科のパトリック・オランド教授の率いる研究チームが発表したのは、大気中の窒素と、原油に含まれるベンゼンを、鉄化合物とケイ素化合物を使って結合させ、染料や医薬品の材料となるアニリン誘導体を精製するという窒素固定法です。

従来のアニリンの工業的合成では、ベンゼンに濃硫酸と濃硝酸を反応させて、毒性の強いニトロベンゼンをまず合成してから、アニリンに還元するという方法が主流です。しかし、空気中の窒素とベンゼンからアニリンが作ることができるとなれば、毒性の強いニトロベンゼンをわざわざ合成する必要がなくなります。


これまでにも窒素とベンゼンを反応させてアニリンを合成しようという試みはありました。しかし、オランド教授によれば、これまでの研究では非常に反応性の高いベンゼン誘導体が使われており、窒素と反応する前に分解してしまうために失敗に終わっていたとのこと。

オランド教授は「長期的には、大気中に豊富に存在する窒素を、社会が必要とする製品を合成するための資源として利用する方法を研究したいと考えています」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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