サイエンス

プラスチックによる海洋汚染がいかに激増したのかが60年分の海洋調査データから鮮明に

by Kathryn Berry

世界中の科学者らによってプラスチックごみマイクロプラスチックによる海洋汚染の問題が叫ばれていますが、これまで長期的に継続された調査による裏付けは進んでいませんでした。2019年4月16日に科学誌Natureに掲載された論文により、60年間にもわたる海洋調査の結果が公開され、プラスチックによる海洋汚染の増加とその推移が明らかにされています。

The rise in ocean plastics evidenced from a 60-year time series | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-09506-1

Planet’s ocean-plastics problem detailed in 60-year data set
https://www.nature.com/articles/d41586-019-01252-0

60年間もの観測データから海のプラスチックごみが急増していることを明らかにしたのは、イギリスの海洋生物学協会のクレア・オストル博士らの研究グループです。オストル博士が注目したのは、1931年から大西洋とその近海で継続的に実施されている「連続プランクトン採集器(CPR)」にとらえられたごみのデータです。

by USFWS - Pacific Region

CPRは海中の微生物について研究することを目的にイギリスの海洋生物学協会が作った装置で、全長約1mの魚雷のような形状をしています。船舶から海中に投下された後、約10mの水深をロープで牽引されながら海の中を移動しつつ、内部にある絹製のフィルターで海中をただよう直径5mm以上の浮遊物を採取します。CPRは1931年に運用が開始されてから540万海里(約1000万km)以上の距離を旅しつつ、海中プランクトンの生態調査に貢献してきました。

by Umshamrock

CPRはプランクトンだけでなく、海中の砂利や植物片などをさまざまな浮遊物を採取しますが、その浮遊物の量と内訳をグラフにしたのが以下の画像です。横軸は収集年を、縦軸は全体に対するごみの割合を示しています。また、棒グラフのうち黒い部分は自然物、水色の部分がプラスチック片の割合を示していて、棒グラフの背景の折れ線グラフが浮遊物の合計量を示しています。


以下のグラフは上のグラフのデータからプラスチック片のみを抽出したもの。1957年からプラスチック片が見つかっていますが、2000年代に入ってから劇的に増加しているのが一目で分かります。


オストル博士は発見されるごみの様子と、1970年代以降に大西洋北部で操業する遠洋トロール漁船の漁獲量などから、これらのプラスチック片は主に漁業で使用されている網に由来していると分析しました。また、オストル博士は近年に入りCPRに採取されたごみに対してプラスチック片が占める割合がやや減少傾向にあることにも注目しており、漁業が海に与える影響について「各国の海洋政策の変化や漁業技術の進歩により、プラスチック繊維のごみは減少していく可能性がある」と述べました。

オストル博士は一方で、CPRでは直径5mm以下の浮遊物をとらえられないことから、プラスチックごみが紫外線などにより分解されて細かなマイクロプラスチックになっている可能性が高いと指摘しており、CPRが採取したプラスチック片が減少したからといって、海からプラスチック汚染の脅威が減ったわけではないとの見方を示しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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