サイエンス

「なぜ古代ローマ時代のコンクリートは2000年もの耐久性を誇るのか?」の謎が明らかに


古代ローマの人々は非常に高い建築技術を持っており、約2000年前に作られた道路や水道橋、港、建造物などが現代に至るまで残されています。「一体なぜ、古代ローマのコンクリートは2000年が経過しても大丈夫なほどの耐久性を誇るのか?」という謎について、マサチューセッツ工科大学(MIT)が率いる国際的な研究チームが調査したところ、「コンクリートの製造プロセス」にヒントがあることが明らかになりました。

Hot mixing: Mechanistic insights into the durability of ancient Roman concrete | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.add1602


Riddle solved: Why was Roman concrete so durable? | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2023/roman-concrete-durability-lime-casts-0106

We Finally Know How Ancient Roman Concrete Was So Durable : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/we-finally-know-how-ancient-roman-concrete-was-so-durable

高度な建築技術を持つ古代ローマ人が使ったコンクリートはローマン・コンクリートと呼ばれており、現代で広く使われている鉄筋コンクリートの寿命が約50~100年ほどなのに対し、2000年が経過しても構造を維持できる耐久力があります。

以下は、実際に118年~128年にかけて建造された古代ローマの神殿・パンテオンの写真です。ローマン・コンクリートの基礎部分に建物とドームがのった構造で、基礎やドーム部分はほとんど改修されていないにもかかわらず、約2000年が経過した現代まで当時の姿を残しています。


ローマン・コンクリートについての過去の研究では、原料に火山灰を混ぜることで結合能力のある化合物が生成されるポゾラン反応が促進され、強度の向上につながっていることがわかっています。また、ローマン・コンクリートは海水による腐食のプロセスを利用することで、さらに強度が上がっているという研究結果も報告されています。

2000年もの耐久性を誇るローマ時代のコンクリートは海水の腐食によって強度を上げていた - GIGAZINE


新たに、MITが率いる国際的な研究チームは、ローマン・コンクリートに見られる「石灰クラスト」という小さな石灰の塊に着目して研究を行いました。MITの環境工学准教授でありローマン・コンクリートの研究を行っているAdmir Masic氏は、「古代ローマのコンクリートを扱い始めて以来、私はずっとその特徴に魅了され続けてきました」「石灰クラストは現代のコンクリート構造には見られないのに、なぜ古代ローマのコンクリートには存在するのでしょうか?」と述べています。

これまでのところ、石灰クラストは単に粗雑な原料混合や低品質の原料の使用によるものだと思われてきましたが、Masic氏はその考えに疑問を持っていたとのこと。「ローマ人が何世紀にもわたって最適化されてきた詳細なレシピに従って優れた建築資材を作るために努力してきたなら、なぜ原料をよく混合することに注力しなかったのでしょう?」とMasic氏は述べており、石灰クラストには何らかの意味があるはずだと考えて研究を行ったそうです。


研究チームは古代ローマの遺跡から採取したローマン・コンクリートのサンプルを、走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法粉末X線回折分析共焦点ラマンイメージングといった手法で分析しました。

従来の仮説では、ローマン・コンクリートに使用された石灰は消石灰(水酸化カルシウム)であると考えられていました。ところが石灰クラストの分析によって、ローマン・コンクリートに含まれる石灰は生石灰(酸化カルシウム)または消石灰と生石灰の両方だったことが示唆されました。

by Paul VanDerWerf

研究チームは、消石灰ではなく生石灰を使用することで発熱反応が起こり、これによるHot Mixing(ホット・ミキシング)がローマン・コンクリートの耐久性のカギになっていたと考えています。Masic氏は、「ホット・ミキシングの利点は2つあります。まず、コンクリート全体を高温に加熱すると、消石灰のみを使用していた場合は不可能な化学反応が起こり、高温に関連した化合物が生成されます。次に、この高温化によってすべての反応が促進されるため、硬化や凝結の時間が大幅に短縮され、はるかに迅速な建設が可能になります」と述べています。


仮説によると、高温での混合プロセス中に石灰クラストが特徴的なもろいナノ粒子構造となり、これがローマン・コンクリートに自己修復能力をもたらすとのこと。亀裂に浸透したナノ粒子構造は水と反応し、炭酸カルシウムとして再結晶化することで亀裂を埋めたり、コンクリートを強化したりすると考えられています。

研究チームはこの仮説について調査するため、実際に今回示唆されたローマン・コンクリートの原料と、現代のコンクリートに使われる原料でそれぞれコンクリートを作成。故意に亀裂を入れてから水を流したところ、生石灰ありの配合で作られたコンクリートでは、2週間以内に亀裂が修復されたことが確認されました。


今回の結果を受けて、研究チームは現在のコンクリートの代替品となる環境に優しいコンクリートの製品化に取り組んでいます。Masic氏は、「このような耐久性の高いコンクリート建材が、建造物の耐用年数を延ばすだけでなく、3Dプリントしたコンクリート建材の耐久性を向上させられると考えるとわくわくします」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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