古代ローマの水道で使われていた「バルブ」はどのようなものだったのか?
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by Avius Quovis
液体や気体など流体が通る配管で、流体の方向や圧力、流量の制御を行う装置のことを「バルブ(弁)」と呼びます。高度な水道システムが構築されていた古代ローマで使われていた「バルブ」について、古代文明における水資源管理やインフラ設計の研究を行う「Wright Paleohydrological Institute(ライト古代治水工学研究所)」でディレクターを務める、ウェイン・ローレンツ氏が解説しています。
Ancient Roman Valves | Valve Magazine
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古代ローマでは都市や工場に淡水を供給するために数多くの水道が建設されており、ローマ水道ともいわれる一連の水道は、古代ローマが繁栄した要因の一つとされています。豊富な水は公衆衛生を改善して労働力を増やし、ローマ経済が発展する上で重要な役割を果たしたとローレンツ氏は指摘しています。
ローマ帝国の各都市において建設されたローマ水道は、水道管の設計・高度な測量技術・トンネル建設・鉛配管・谷を越えるための逆サイフォン・貯水タンク・不純物を取り除く沈砂池など、数多くの技術によって支えられていました。高度な学識を持った技術者によって精密に設計された水道は、重力を用いて水源から数十kmも離れた都市部へと水を運ぶことを可能にしていたとのこと。
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by santiago lopez-pastor
古代ローマでは都市部の住宅や工場へ送られる水量を制御するシステムも備えられており、現代のシステムに近い水準のバルブも使用されていたとローレンツ氏は主張。実際に、古代ローマで用いられていたバルブの設計は、現代で使用されている回転式のプラグ・バルブとそれほど大差がないそうです。
実際に古代ローマの支配下にあったポンペイの遺跡からは、以下の写真のような青銅製のバルブが発見されています。本体から左右に伸びた管が水道管との接続部分となっており、溶融鉛を用いてバルブと水道管が溶接されていた模様。
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以下の写真は、バルブで流量を制御するための「プラグ」を示したもの。
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このプラグは両側面に穴が開けられており、バルブ中央の円筒形のチャンバーにプラグをしっかり挿入すると、ちょうど水道管とプラグの穴が平行になるように設計されています。プラグの穴が水道管の向きと一直線になっていれば、水がそのままプラグの内部を通り抜けることができますが、プラグをチャンバー内で半回転させると穴が水道管と垂直になってふさがれるため、水の流れを遮断することが可能。また、プラグの回転を調整することで、流量を細かく変化させることもできます。
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また、バルブの下部にある小さな穴に棒を打ち込むことでバルブ本体とプラグが固定され、圧力の変化などでプラグが勝手に回転したり、バルブから飛び出したりするのを防ぐことができたとのこと。ローレンツ氏は、この古代ローマで使われていたバルブとほぼ同じ仕組みのバルブを現代の金物店で購入できると述べています。
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ローレンツ氏は、古代ローマにおいては水道管とバルブのサイズが標準化されていたと指摘。ローマ人によって製造された水道管とバルブは相対的な寸法がほぼ同じであり、帝国全体で規格が標準化されていたことがわかっています。
さらに、古代ローマで作られたバルブはそれぞれがほぼ同じ材料組成になっているそうで、銅73%、鉛18%、スズ9%という割合でほぼ一貫しているとのこと。これは、ローマ人が水道管のバルブを製造する上で標準的な合金の規格を設け、高い精度の品質管理が行われていたことを示しています。
また、古代ローマにおけるバルブの設計は、低水圧での水道管設計に適したものだそうです。ポンペイの水道システムでの水圧は、およそ0.055MPa~0.062MPaと推測されているそうで、現代の標準的な水道の水圧である0.2~0.39MPaよりも低いものとなっていますが、古代ローマの都市や工場への配水には十分だったとローレンツ氏は述べました。
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