サイエンス

セメントやコンクリートが地球温暖化解決の大きな課題となっている


by 3093594

「今のセメントのあり方はパリ合意にそぐわない」「もし革新的な変化が起こらなければ、世界は気候変動のゴールを達成できないだろう」と環境分野に取り組む国際NGOのカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が発表しました。環境に配慮した大規模な設備を作るにはコンクリートが必要ですが、セメントを作る過程で大量の二酸化炭素を排出するというパラドックスが問題となっています。

Cement report - CDP
https://www.cdp.net/en/investor/sector-research/cement-report?gclid=EAIaIQobChMIis6d45qs2gIVHAQqCh1paAZsEAAYASAAEgKeV_D_BwE

Are we stuck with cement? | The Outline
https://theoutline.com/post/5124/are-we-stuck-with-cement-environmental-impact

コンクリートにおいて砂・砂利・水などを凝固するために使用されるセメントは、経済成長において重要な役割を果たしており、スミル・ヴァーツラフの「Making the Modern World: Materials and Dematerialization」には、「2011年から2013年の中国では、アメリカが20世紀を通して使用した以上のセメントを使用していた」と記されています。しかし、CDPの報告によるとセメント産業は製鉄産業に次いで二酸化炭素の排出が多い上に、化石燃料の代替物によって二酸化炭素排出量が劇的に減りつつある輸送部門とは違い、「調合方法」が課題であるという点が問題です。セメントは原料となる石灰石をそのほかの材料と混ぜて高温で焼却するというプロセスを経ますが、このとき、石灰石中の炭酸カルシウムの脱炭酸によって二酸化炭素がトン単位で排出されます。

自動運転カーの走行に備えて道をアップグレードするにも、環境に配慮したLEED認証済みの建物を建てるためにも、排水処理場や海水淡水化工場を作るためにも、コンクリートは必要です。つまり、私たちはカーボンニュートラルな世界に移行するためのインフラが必要であるのに、それを実行するには炭素を多く排出するコンクリートを使う必要があるというパラドックスが存在するわけです。

by Huskyherz

セメント製造時に排出される二酸化炭素を減らすには、全く新しい素材を作り出すか、炭素を抽出する仕組みを開発する必要があります。材料科学の研究者たちは既にカルシウム含有量が少ないセメントの開発に取り掛かっており、マサチューセッツ工科大学のFranz-Josef Ulm教授はセメント製造に関係する二酸化炭素排出量を劇的に減らすことに成功しています。この方法はセメントの強度を2倍にすることにも成功していますが、長期的な耐久テストがまだ行われていないため、一般に出回るに至っていません。

「私たちはフェラーリを開発したわけですが、次はフォードを作り出す必要があるのです」とUlm教授は語っています。次なる研究のためにUlm教授らは非営利組織のポートランド・セメント協会(PCA)と協力し、代替セメントを業界の主流にすべく動いているとのこと。

しかし一方で、CDPによると、低コスト・低二酸化炭素の代替素材を開発する研究にセメント産業が融資する傾向は見られないとのこと。また科学的見識の乏しさから、多くの企業は二酸化炭素が発生するプロセスよりも、その後のミキサーの改良に焦点を当てています。このままでは地球温暖化を解決する、二酸化炭素排出を抑えた大規模なインフラはセメントの問題を避けて通ることができません。そのため、開発をスケールバックして新しい素材の開発を推進すると共に、セメント業界に規制をかけることが求められているとのことです。

しかし、CDPの報告書の著者であるMarco Kisic氏は「セメント業界も理解し始めている」という見解を述べており、新しいテクノロジーが用いられることについて楽観的に考えている旨を明かしました。「セメントの原料を石灰からクリーンなものに変える、というような、持続可能な形を実現するために業界が取り得る比較的容易な選択肢はいくつかあります」「炭素抽出システムの開発やカーボンプライシング、低炭素のセメントといった難しい事柄は、そのあとにゆっくりと進んでいくでしょう」とKisic氏は語っています。

by Swapnil Sharma

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in サイエンス, Posted by logq_fa