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人間が「愛」を持つことに合理的なメリットはあるのか?


現代社会では科学や合理性を重視する風潮が強まっていますが、それでも人々は「愛」という不思議なものを確かに感じ、「この愛は運命だ」と確信することさえあります。一体なぜ人間は愛という感情を持ったのか、愛に合理的なメリットは存在するのかについて、カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者であるBenjamin Kaveladze氏らが解説しました。

Why does love feel magical? It's an evolutionary advantage
https://theconversation.com/why-does-love-feel-magical-its-an-evolutionary-advantage-180443

ロマンチックな「愛」という感情は古くから人間の心に存在し、世界各地のさまざまな神話や伝説にも恋愛に関する話が残っているほか、1000年以上前に編さんされた万葉集にも恋愛を詠んだ和歌が多数収録されています。これに対して心理学者であるKaveladze氏らは、「しかし、なぜ愛は人間の心の一部として存在するのでしょうか?」と問いかけ、進化心理学のレンズを通して探求しているとのこと。

進化心理学とは、人間の数十万年にわたる進化の過程において、繁殖や生存に有利な特性が次世代に引き継がれ、現代人の行動や思考にも影響を与えているとする心理学的アプローチです。このアプローチに従うと、現代人に存在する「栄養価(カロリー)の高い食品をおいしいと感じる」という傾向は、飢え死にするリスクの軽減に役立つものであり、生存に適していたため現代まで引き継がれてきたと考えられます。

この進化心理学の考え方を「愛」に適用すると、誰かのことを運命の相手だと感じて愛することに、何かしら生存や繁殖に役立つ利点があるということになります。Kaveladze氏らは、「ある説明によると、愛の本来の目的を知るカギはアパートの貸借契約にあります」と述べています。


まず、アパートやテナントなどの賃貸物件において、数カ月~数年の長期契約を結ぶ家主と入居者の関係について考えてみます。ほとんどの長期契約では、家主には「将来的にもっと良い入居者が見つかるかもしれない」という可能性が残り、入居者には「将来的にもっと良い物件が見つかるかもしれない」という可能性が残りますが、それでも両者は長期契約に同意します。

なぜ両者が長期契約を結ぶことができるのかといえば、それは「完璧なアパートやテナントを探すのは非常に大変でコストのかかる行為だから」です。こうした手間やコストを省くため、両者は不完全かもしれなくても長期契約を結ぶことに同意し、契約を交わすことで外部からの誘惑が取り決めを台無しにするのを防ぎます。Kaveladze氏らは、人間におけるパートナー選択にも同様の問題があると指摘しています。


人間の男女は、子どもを養育するのに十分な期間を夫婦として過ごすため、良いパートナーを見つけることが非常に重要です。しかし、理想的なパートナーを探すことは時間とコストを大量に消費する行為であるため、遺伝子をうまく継承するには完璧さを追い求めるのではなく、「十分に適したパートナー」にコミットする方が有利とのこと。Kaveladze氏は「このように、進化はコミットメントの問題を解決し、(十分なパートナーにコミットするという)解決に『夢中にさせる報酬』を提供するため、生物学的な貸借契約として愛を想像したのかもしれません」と述べています。

なお、愛は主に有性生殖をサポートするために進化してきたように見えますが、当然ながら愛は同性愛者や無性愛者の人々、あるいは性的能力のない人々にとっても人生の一部です。Kaveladze氏らは、「同性間の魅力の進化を調査した研究者は、ロマンチックな関係は有性生殖がなくても適応する上での利点を提供できると主張しています。重要なのは、進化は変化の原動力であり、厳密に進化論的な観点から単一の『正常』あるいは『理想的』な存在様式はないということです」と指摘しています。


人間がパートナーに愛を感じると、相手へのコミットメントを確実にするさまざまな変化が生じます。まず1つ目は、「他の潜在的な候補がそれほど魅力的ではないように見える」というものです。パートナーとの関係に満足している人は、他の容姿が優れた人々の魅力を低く評価するという研究結果があるように、パートナー以外に目を奪われてしまう可能性が低くなります。

2つ目に、「パートナーの気持ちが他人へ向くと嫉妬し、自分たちの関係を脅かすかもしれない相手を警戒する」というものが挙げられます。嫉妬は時に恐ろしい結果を引き起こすこともありますが、進化心理学者は不倫や略奪愛を防ぐために嫉妬が役立つと主張しています。

そして3つ目が、「相手を運命の人だと思って物語を作り上げることにより、自分たちの関係に対する自信を深める」というものです。Kaveladze氏らの研究チームは、このトピックについての研究を行っている最中だとのことです。


一見すると誰かに愛や運命を感じることは不合理に思えますが、パートナーへの長期的なコミットメントを達成するのに役立つのであれば、愛は適応する上での利点あると言えます。神経科学者のカール・ダイセロス氏は、愛について「それ自身の存在によって合理的になる、不合理な絆」と言い表しています

愛の進化論的メリットについて説明したKaveladze氏らですが、ロマンチックな愛を否定する考えに傾きすぎることについても警告しています。「もし、あなたが愛にまつわる魔法のような考えに反抗するなら、人生最大の贈り物の1つについて考えすぎてしまうかもしれません」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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