生き物

あまりにも奇妙な「クモの交尾」の世界


雌雄でサイズ差がある動物は珍しくありませんが、その中でもクモはサイズ差が非常に大きく、メスがオスの3~10倍も大きく、種によっては体長10倍・重量125倍というケースすらあります。圧倒的なサイズ差のため、オスのクモにとって、交尾は命懸けです。オスのクモは交尾の前後や最中に食べられてしまうことも多いため、遺伝子を後世に残すさまざまな技を編み出しており、その交尾は人から見るとかなり奇妙な行動の連続となっています。

The ungentle joy of spider sex
https://knowablemagazine.org/article/living-world/2020/the-ungentle-joy-spider-sex

オスのクモは自分の精子を「精網」と呼ばれる特殊な網に出し、それを頭部近くに生える触肢で吸い込みます。この精網は交尾のタイミングまで保存され、オスは交尾相手のメスに触肢を突き立てて精子を注入します。メスも同様に頭部近くに触肢を持ちますが、メスの場合は獲物を捕らえるための脚としてこの構造を使用するとのこと。


オスは2つの触肢を持ち、メスの腹部には2つの開口部があるため、オスは可能性があれば2つの触肢を両方の開口部に挿入しようとします。そしてうまくいけば触肢から精子が放たれ、メスが卵を産むまでの間、受精嚢という袋状の構造に貯蔵されることになります。メスが卵を産む段階になると精子は活性化され、卵へと向かって受精するという仕組みです。

オスとメスの体の大きさが異なるために交尾が困難になるように思えますが、この点は進化によってメスの生殖器が小さく、オスの生殖器が大きくなったため、両者は適合するようになっています。問題は、交尾を終えてメスの卵を受精させるまでの間、オスが生き残ることにあります。


受精を成功させ自分の遺伝子を残すために、オスのクモはまず、交尾の際に前からではなく後ろからアプローチを行います。加えて、オスはメスが既に食事を終えたタイミングや、成虫になるためメスが脱皮したばかりのタイミングを狙うとのこと。ドイツのグライフスヴァルト大学に在籍する動物学者のガブリエル・ウール氏は研究で、脱皮したての外骨格が柔らかいメスと交尾したオスグモが97%の確率で生き残れるのに対し、外骨格が硬くなったメスと交尾したオスの生存確率は20%にまで下がることを明らかにしました。メスグモは外骨格が硬化するまで攻撃ができないのです。

メスの脱皮は夜、非常にスピーディーに行われるので、そのタイミングを狙うのは難しく、オスは長時間にわたってメスを観察しなければならないと考えられています。

脱皮したてのクモの様子は以下から。

Huntsman Spider Shedding It's Skin - YouTube


一部のオスグモの中にはメスの脚を緊縛するものも。緊縛はメスが動けなくなるほどの強さではありませんが、リラックスさせる効果があるといわれています。また危険が迫っていると判断すると、自分の触肢を切断し、自分は撤退して触肢だけメスの中に残すこともあるそうです。

メスがオスを食べるという行動には生物学的に合理的な説明が可能です。メスにとっては優秀な遺伝子を残すことが大切であるため、メスは複数のオスと交尾しようとしますが、一方でオスは自分の遺伝子を残すためにメスが他のオスと交尾することを阻止するためです。このため、オスグモは食べられずに交尾を終えても、メスが他のオスと交尾できないよう触肢を残してメスの開口部をふさいだり、後からやってきたオスと戦ったりします。

以下はオスの触肢によってふさがれたメスの開口部。ただし研究者によると、残した触肢では別の交尾を防ぐためにまったく役立たないこともあるそうです。


そして、できるだけ交尾の時間を長くして受精を確実にするため、自らメスに食べられようとするクモも存在します。オスのセアカゴケグモは最初の交尾が終わると腹部をメスの口元に持っていき、メスが自分を食べ始めると2つ目の触肢を挿入してさらなる交尾を開始するとのこと。

一方で、オスのセアカゴケグモとハイイロゴケグモが、成熟しておらず開口部の露出していないメスを狙って触肢を挿入し、開口部をふさいで、生きたままより高い確率で受精を成功させていることも報告されています。カナダの研究では、まだ未熟なセアカゴケグモの3分の1が既に交尾を終えていることも示されています。

なぜクモが雌雄でこんなにもサイズ差がある形に進化し、奇妙な交尾が行われているのかという理由には、性淘汰(とうた)、自然淘汰など、生物学的要因がいくつもあります。たとえば、メスはサイズが大きいほど繁殖力が高まりますが、同様にオスが大きくなってしまうと、クモの巣が重さに堪えられなくなったり、捕食者に狙われやすくなったりと不都合が生じることから、メスだけが大きくなったとする考えもあります。

一方で、このように極端なサイズ差を持つため、クモが絶滅に向かっているという可能性も指摘されています。体が大きいことには利点もありますが、小さなオスグモはメスの巣に侵入して食べ物を盗んだり、時には卵すら食べてしまうことも。多様化の失敗により、長期的な目線からいえば「進化が行き止まりに直面している」可能性があるとのことです。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by logq_fa

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