サイエンス

腰痛を和らげるために「運動」が効果的な理由とは?


もし「腰痛」になってしまった場合は絶対安静にして背中を休めるべきだと思う人も多いかもしれませんが、運動を行うことは痛みを和らげ、将来的に腰痛が再発するのを防ぐことが知られています。「なぜ腰痛には運動が効果的なのか?」という疑問について、アイルランド王立外科医学院で健康・リハビリテーション科の教授を務めるSuzanne McDonough氏らが解説しています。

Back pain: why exercise can provide relief – and how to do it safely
https://theconversation.com/back-pain-why-exercise-can-provide-relief-and-how-to-do-it-safely-162888


腰痛になると動かずに安静にしていた方がいいと思いがちですが、実際には何かしらの運動をした方が痛みが和らぎやすく、その後も腰痛になりにくいとのこと。「定期的な動きや運動は体の強度や耐久力、柔軟性を向上させたり回復したりする助けとなり、急性腰痛の発作からぎっくり腰からより速く回復するのにも役立ちます。これが、身体的に活動的であり続けることが腰痛を管理する上で最も広く、一貫して推奨されている理由の1つです」と、McDonough氏らは述べています。

このように腰痛には運動が効果的ということはわかっているものの、依然として運動が腰痛の軽減に役立つ理由や、痛みの軽減に最適な運動量については研究が続いている最中だそうです。運動が腰痛を和らげる理由についての伝統的な見解は、「運動が脊椎の周囲や腹部の筋肉を強化するため」というものです。この考えは研究結果からも部分的に支持されているそうですが、運動が腰痛を和らげる理由を十分に説明するものではありません。


McDonough氏らによると、近年では「運動が脳を含む神経系の機能に有益な変化をもたらす」との(PDFファイル)研究結果が増えているとのこと。運動が潜在的に有害な刺激に対する感受性を低下させて痛みを軽減するという現象は、「exercise-induced hypoalgesia(運動誘発性鎮痛)」と言われています。たとえば、慢性的な痛みのない成人を対象にした研究では、15分間のサイクリングやランニングといった高強度の有酸素運動を行った人は、その後30分間にわたって痛みの感受性が減少したと報告されました。

運動誘発性鎮痛はいくつかのメカニズムに支えられており、たとえば運動の「エンドカンナビノイドアドレナリンノルアドレナリンエンドルフィンセロトニンといった物質の分泌を促し、痛みを軽減させたり気分を向上させたりする」といった利点はその1つです。また、運動が神経系の接続や構造の変化(神経可塑性)を引き起こすという点も、時間の経過と共に痛みを軽減することにつながると考えられているとのこと。運動誘発性鎮痛に関しては研究が進んでいる最中ですが、ほとんどの(PDFファイル)研究結果は、痛みがある時でもある程度は運動した方が痛みを和らげることができると報告しています。


腰痛を軽減するための運動については、特定の運動に限り腰痛改善効果があるというわけではなく、どのような運動であれ痛みの軽減に役立つとのこと。しかし、これは「無理して走っても重いバーベルを持ち上げても腰痛が軽減される」というわけではなく、けがを避けるために運動は無理のない範囲で行い、徐々に強度を上げていくことが重要です。

McDonough氏らは、「最も重要なことは、あなたが楽しんで継続できるものを行うことです。これはあなたの痛みを軽減し、うまくいけば再発するのを防いでくれます」「数時間おきに階段を数階上り下りするなど、1日の中で短時間の運動を複数回にわたって行うといった、より日常的に多くの運動を取り入れる簡単な方法もたくさんあります。1つの場所でじっと過ごすことを減らしたり、スタンディングデスクを検討したりしてください」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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