サイエンス

脊柱内で展開して脊髄に貼り付く慢性腰痛治療デバイスが開発される


イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームが、薬品の効果が期待できない重度の慢性腰痛の治療に適した脊髄刺激装置を発表しました。この装置は、既存の埋め込み式装置では達成不可能だった低侵襲かつ高効率を達成できる可能性があると報じられています

Electronics with shape actuation for minimally invasive spinal cord stimulation | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/7/26/eabg7833

Inflatable, shape-changing spinal implants could help treat severe pain
https://www.cam.ac.uk/stories/spinal-implants

Mind-Blowing 'Inflatable' Spinal Cord Implant Could Make Pain Relief Widely Available
https://www.sciencealert.com/mind-blowing-spinal-cord-implant-could-relieve-suffering-for-chronic-pain-patients

脊髄刺激療法は脊椎にインプラントした機器から微弱な電気を流して難治性の痛みを緩和するという外科治療の一種です。薬が効かない重度の腰痛にも効果があるとされる反面、電極を人の脊柱に突き刺し脊髄全体に配置するという必要があるという危険性が存在します。既存の脊髄刺激療法用機器は脊髄を覆うパドル型と脊柱に突き刺す針型の2種類で、パドル型は椎骨の一部を取り除かなくてはならないというリスクがあり、針型は椎骨の一部を取り除く必要がないものの装置と脊髄の接触範囲が小さいため効果が低いという問題がありました。

By Krishna Kumar et al

新たにケンブリッジ大学のベン・ウッディントン氏らが作成した脊髄刺激機器は、既存のパドル型と針型の長所を兼ね備えており、収納時はわずか2mmの針型(画像左)ですが、展開時には薄さ60ミクロンのパドル型(画像右)になるという構造。


針型の状態で脊柱の硬膜外腔内に挿入し、水ないし空気と反応することで展開。脊髄を覆うエアマットレスのように変形します。


イギリスでは腰痛が身体障がいの主な原因であり、治療のために年間120億ポンド(1兆8000億円)が費やされているとされています。一方、アメリカでは12人に1人が非ステロイド性抗炎症薬やオピオイドなどの薬剤治療が通用しない難治性の腰痛に悩まされていると疾病予防管理センターが推計しています。

今回開発された脊髄刺激機器は、研究室内で電極の機能性についての試験を行い、献体で検証を行ったという段階で、実用化のためには、大規模テストと臨床試験が必要です。研究チームのクリストファー・プロクター博士は「私たちが目指したのは、臨床的に有効でありながら、複雑でリスクの高い手術を必要としない、両方の長所を兼ね備えたデバイスを作ることでした。このデバイスによって、人生を変えるような治療法をより多くの人々に提供することができるかもしれません」とコメント。ダミアーノ・バローネ氏は「私たちが開発した脊髄刺激機器は、脊髄損傷や脳卒中の後遺症による麻痺や、パーキンソン病などの運動障害の治療法になる可能性があります。侵襲的な手術を必要としない効果的なデバイスは、多くの人々に救いをもたらすでしょう」と語っています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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