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NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 3080 Ti」の海外レビューまとめ


アジア最大級のコンピューター見本市である「Computex 2021」の中で、NVIDIAがハイエンドGPUの「GeForce RTX 3080 Ti」を発表しました。さっそく海外メディアから多数のレビューが公開されているので、現行最上位モデルの「GeForce RTX 3090」に迫るスペックというRTX 3080 Tiが、どんな評価となっているのか確かめてみました。

2021年6月2日に発表された3080 Tiは、現行モデルの中で最上位となる3090に迫るスペックを有するGPUであり、「GeForce RTX 3080」の上位版という位置づけになります。GPUコアにAmpereアーキテクチャを採用している点や、デザイン・ポート数などは3080から変更ありません。3080Tiの主な変更点はグラフィックメモリなどのスペックの向上で、「GeForce RTX 2080 Ti」と比べると、「最大1.5倍の処理速度を実現」しているとのこと。なお、3080 TiのスペックはCUDAコア数が1万240、ビデオメモリは12GB GDDR6X、メモリーバスは384-bit、メモリ帯域幅は912GB/s、TDPは350Wです。

NVIDIAが「GeForce RTX 3080 Ti」「3070 Ti」を発表、3080 Tiは「3090」に迫るスペック - GIGAZINE


The Vergeは3080 Tiについて、「これは1199ドルで(約13万円)で1499ドル(約16万円)の3090と同等のパフォーマンスを提供することを目的としたGPUです。ただし、3080 Tiのパッケージは3090よりも小さいものの、VRAMはわずか12GBと3090の半分しかありません」と記し、3080 TiはNVIDIA製GPUの中でも最高レベルのパフォーマンスを有するものであると指摘しました。

実際に4Kと1440pという2つの解像度で3080 Tiを1週間にわたりテストしたというThe Vergeは、「3080 Tiのパフォーマンスは2080 Tiのパフォーマンスを改善し、最新のゲームをより安定してプレイできるようにしたようなもの」と言及し、そのパフォーマンスに満足感を示しています。ただし、「残念ながら、1199ドルという値札が付けられているため、現行のGPU不足に伴う価格高騰がなくても、ほとんどの人の予算をオーバーする価格だと思います」とも記し、そもそもの値段が高すぎてほとんどの人の選択肢から除外されるGPUであるとも指摘しています。


The Vergeは3080 Tiの優れた点として、「静音性」「1440pおよび4Kでのゲームプレイに最適」「DLSSは印象的」という3つを、悪い点としては「1199ドルと高価」「余分な電力を消費し、熱くなる」「不格好な12ピンの電源アダプタ―」の3つを挙げています。

Nvidia GeForce RTX 3080 Ti review: more 4K for more of your wallet - The Verge
https://www.theverge.com/22463608/nvidia-geforce-rtx-3080-ti-review-test-benchmarks


3080 Tiはカードの両面に1つずつファンがあり、下部のファンから冷気を取り込み、反対側にあるCPUクーラーと背面ケースに近い方のファンから排気します。このファン設計により3080 Tiは3080よりも静音性が高くなっていますが、重い負荷がかかるとファンの回転数が最大となり、「3080 Tiのファンが最大回転数で回転する頻度は3090よりもはるかに多い」とThe Vergeは指摘。また、このファン設計により3080 Tiが定期的に80度前後の温度まで上昇していたとThe Vergeは指摘しており、排熱面では3090ほど優れていないと述べています。

さらに、3080 TiとIntel Core i9-11900Kで1440pや4K解像度で複数のゲームを実際にプレイしてテストしています。実際にプレイしたのはフォートナイトCONTROLデス・ストランディングMETRO EXODUSCall of Duty:Warzoneなど。

実際に1440p解像度で各種ゲームをプレイした際のフレームレートを比較したのが以下の表。ほとんどのタイトルで3090と同等のパフォーマンスを実現していることがわかります。なお、RTはレイトレーシングをオンにした状態でのプレイを指します。

 RTX 3080RTX 3080 TiRTX 3090
Microsoft Flight Simulator46fps45fps45fps
CoD:Warzone124fps140fps140fps
CoD:Warzone(DLSS+RT)133fps144fps155fps
フォートナイト160fps167fps188fps
フォートナイト(DLSS)181fps173fps205fps
デス・ストランディング163fps164fps172fps
デス・ストランディング(DLSS)197fps165fps179fps
CONTROL124fps134fps142fps
CONTROL(DLSS+RT)126fps134fps144fps
METRO EXODUS56fps64fps65fps
METRO EXODUS(DLSS+RT)67fps75fps77fps


以下は4K解像度で各ゲームをプレイした際のフレームレートをまとめた表。

 RTX 3080RTX 3080 TiRTX 3090
Microsoft Flight Simulator30fps34fps37fps
CoD:Warzone89fps95fps102fps
CoD:Warzone(DLSS+RT)119fps119fps129fps
フォートナイト84fps92fps94fps
フォートナイト(DLSS)124fps134fps141fps
デス・ストランディング98fps106fps109fps
デス・ストランディング(DLSS)131fps132fps138fps
CONTROL65fps70fps72fps
CONTROL(DLSS+RT)72fps78fps80fps
METRO EXODUS34fps39fps39fps
METRO EXODUS(DLSS+RT)50fps53fps55fps


CNETは3080 Tiについて「4Kゲームを新しいレベルに引き上げる」「高解像度で3桁のフレームレートを体験できる」と高く評価。ただし、「3080よりも明らかに優れているというわけではありません。多くはシステムに依存するため、優れたバス帯域幅と冷却機能を備えたPCが3080を搭載すれば、ベーシックなバス帯域幅と冷却機能を有する3080 Tiを搭載したPCよりも優れたパフォーマンスを発揮できます」と記し、GPU以外の構成により最終的なパフォーマンスが大きく変化しているとも付け加えています。さらに、「定価でGPUが購入できる世界は存在しないため、3080よりも高価な3080 Tiを購入するなら、差額分を他のパーツに回すほうが効率的かもしれません」とも言及しました。

Nvidia GeForce RTX 3080 Ti tested: Raising 4K gaming to a new level - CNET
https://www.cnet.com/news/nvidia-geforce-rtx-3080-ti-tested-raising-4k-gaming-to-a-new-level/


Engadgetは2080 Tiから3080 Tiへのアップグレードを「贅沢」と表現。これは肯定的な意味ではなく、3080よりも500ドル(約5万5000円)も高額な3080 Tiの必要性に疑問を呈しています。また、世界的なGPU不足が叫ばれる現状について「新しいGPUを購入するには間違いなく最悪のタイミング」と指摘。加えて、Engadgetは「転売屋はGPUを購入し、高額転売により大儲けしています。ただし、3080 Tiは暗号資産のマイニングには使えないようにハッシュ制限を課せられているため、一部の需要を満たすことはできません」と記しました。

Engadgetは3080 Tiの長所として「3080よりもはるかに高速」と「優れたレイトレーシング性能」という2点、短所として「3080よりもはるかに高価」「ファンがうるさく頻繁に回転する」「基本的に販売店舗では見かけられないであろう点」の3つを挙げました。The Vergeは3080 Tiの長所として静音性を挙げていましたが、Engadgetは逆に短所として挙げています。

NVIDIA RTX 3080 Ti review: An extravagant upgrade | Engadget
https://www.engadget.com/nvidia-rtx-3080-ti-review-gpu-130036402.html


Ryzen 7 5800Xと32GBのメモリ(RAM)を搭載したPCに、各種GPUを積んでベンチマークソフトや各種ゲームタイトルをプレイした際の、ベンチマークスコアや解像度ごとのフレームレートをまとめたのが以下の表。3Dグラフィックスベンチマークソフト「3DMark」のTime Spy Extremeという、4K解像度と8コア以上のCPUをターゲットとしたDirectX 12対応のグラフィックステストのスコアで、3080TiはAMDの最上位モデルとなるRadeon 6800 XTよりも約1000ポイントもスコアが高くなっています。

 3DMark Time Spy ExtremeDestiny 2ヒットマン3
RTX 3080 Ti8683

1440p:175~195fps


4K:130~145fps

1440p:170fps


4K:110fps

RTX 30808009

1440p:150~165fps


4K:100~115fps

1440p:161fps


4K:98fps

RTX 30706226

1440p:140~150fps


4K:76~87fps

1440p:151fps


4K:83fps

AMD Radeon RX 6800 XT7713

1440p:100~120fps


4K:85~105fps

1440p:198fps


4K:110fps

AMD Radeon RX 68006742

1440p:80~100fps


4K:82~102fps

1440p:185fps


4K:100fps


PCWorldは「3080 Tiはお金持ちのゲーマーが買うべきGPU」と前置きしながら、名前とメモリ容量を除けば「ほぼ3090」と指摘。大きな弱点のない4Kゲーム用のGPUであり、「12GBの高速GDDR6Xメモリ」「最高レベルのレイトレーシング、DLSS 2.0」「ReflexG-SYNCShadowPlayBroadcastRTX IO、DLSSなどのNVIDIA製ソフトウェア」「優れたデザイン」「PCIe 4.0、Lite Hash Rate」などが長所として挙げられています。一方で、短所としては「2080 Tiモデルなどと比較して大幅な価格上昇」「独自の醜い12ピン電源コネクタ」「世界的なGPU不足により入手が困難」「ファウンダーズエディションのデザインは他のRX30モデルほど効果的ではなく追加機能がない」といった点が挙げられました。

Nvidia GeForce RTX 3080 Ti review: Basically a 3090, but for gamers | PCWorld
https://www.pcworld.com/article/3620654/nvidia-geforce-rtx-3080-ti-review.html


VentureBeatも「3080 Tiは非常に高価であるため最も裕福なゲーマーだけが検討できるGPUです」と前置きしつつ、「もしもあなたがお金を持っていて最高のゲーミングPCを必要としているなら、3080 Tiを手に入れる機会を逃す手はありません」と述べ、金銭的に余裕があり、最高のパフォーマンスを求めているゲーマーには最高の選択肢になるとしました。

また、VentureBeatは「3090の方が若干優れていますが、ゲームをプレイするには過剰な性能である」とも言及。3090は3080 Tiよりも多い24GBのメモリを有していますが、これはコンテンツクリエイターなどでなければその違いを実感することはないだろうとも記しています。

Nvidia RTX 3080 Ti review - Significantly faster than the RTX 3080 | VentureBeat
https://venturebeat.com/2021/06/02/nvidia-rtx-3080-ti-review/


Rock Paper Shotgunは、「特に4Kモニターを持っていない場合、ゲームをプレイするために10万円超のGPUにお金を費やすことはおすすめできません。そして、3080 Tiは1080pや1440pという解像度でゲームをプレイしている人たちからすると、明らかに過剰なスペックです。1080pでゲームをプレイする場合は3060、フレームレートを上げたい場合は3060 Tiがおすすめです。1440pでゲームをプレイする場合は3070、あるいはRadeon RX 6700 XTを考慮すべきです」と記し、解像度に応じたおすすめGPUを列挙しています。

Nvidia GeForce RTX 3080 Ti review | Rock Paper Shotgun
https://www.rockpapershotgun.com/nvidia-geforce-rtx-3080-ti-review

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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