「ただのサージカルマスクでも新型コロナ感染予防に効果アリ」とドイツの研究者が発表

ドイツ・マックスプランク化学研究所の研究者らが2021年5月20日に、「単純なサージカルマスクでも、日常生活のほとんどの場面で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の拡散を十分に予防する」との研究結果を発表しました。これにより、医療機関など感染に対して特に注意しなければならない場所でない限り、市販されている一般的なマスクでも感染予防に十分に効果的だということが確かめられました。

Face masks effectively limit the probability of SARS-CoV-2 transmission | Science
https://science.sciencemag.org/content/early/2021/05/19/science.abg6296

Gesichtsmasken schützen effektiv vor COVID-19 | Max-Planck-Institut für Chemie
https://www.mpic.de/4946356/face-masks-effectively-limit-sars-cov-2-transmission

COVID-19に対するマスクの効果については、専門家の間でも意見が割れています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究者の中には、粒子の捕集率が非常に高いN95マスクに比べて、市販されている普通のサージカルマスクでは「控えめな効果しかない」と考える人もいる一方、「マスクを着用している人の割合が高い地域や施設では、COVID-19が効果的に抑制されている」ということを示す研究結果も報告されているためです。

市販されている手術用マスクで新型コロナウイルスを防ぐことができるのか？ - GIGAZINE

by nikki

そこで、マックスプランク化学研究所のYafang Cheng氏らの研究チームは、空気中を漂う呼気由来の粒子に含まれるウイルス濃度を定量化し、ウイルス濃度とマスクの効果の関係をシミュレーションする実験を行いました。

シミュレーション結果を表すグラフが以下。「ウイルス濃度が高い環境」を想定した左図では、粒子の捕集率が50％しかないと仮定したサージカルマスクを着用した場合とマスク未着用の場合の感染率がほぼ同値となり、右図のとおり双方がSARS-CoV-2に感染するという結果になりました。なお、右図の緑色の丸は「SARS-CoV-2を含まない呼気の粒子」を、赤色の丸は「SARS-CoV-2を含む粒子」を表しています。

一方、「ウイルスの濃度が低い環境」を想定したところ、マスク着用の有無により感染するかどうかが分かれるという結果が得られました。

この結果についてCheng氏は、「通常、人が吐き出す飛まつやエアロゾル粒子のうち、ウイルスが含まれているのはごく一部にすぎません。ほとんどの場合、空気中のウイルス濃度は非常に低いため、シンプルなサージカルマスクでもCOVID-19の拡散を抑制する上で大変有効です。この結果は、マスクの着用者が多い地域ではパンデミックが抑制されているというデータを裏付けるものでした」と述べました。

また、論文の共著者であるシャリテー・ベルリン医科大学のChristian Witt氏は「病院や医療センターなど、リスクの高い患者が高濃度のウイルスにさらされる可能性のある屋内環境では、高品質のマスクと換気や距離をあける対策といった防護策を組み合わせることが特に重要になります」と話しました。

なお、今回の研究では「多くの人が適切にマスクを着用しなければCOVID-19の感染を効果的に抑制することができない」ということも分かっています。具体的には、COVID-19の基本再生産数を3から1未満に減らす場合、着用率がN95マスクでは40％、サージカルマスクでは60～70％はなければならないとのこと。このことから、Witt氏は「マスクはSARS-CoV-2への感染に対する重要な防御手段であり続けるでしょう。ワクチンを接種した人でも、時間の経過とともにその効果が薄れる可能性がある場合はなおさらです」と結論付けました。