サイエンス

なんと「宿主の寿命を伸ばす寄生虫」が存在する、その異様な寄生とは?


寄生虫が宿主の不安感や脅威に対する不安感を操作することが、これまでの研究で報告されています。しかし、新たな研究では、寄生虫が宿主の寿命を極端に伸ばすケースが報告されました。ムネボソアリの寿命は通常数カ月であるところ、サナダムシに寄生された個体は何年も若々しいまま生き続けることが示されました。

The Tapeworm That Helps Ants Live Absurdly Long Lives - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2021/05/ant-tapeworm/618919/

ムネボソアリは多くのアリと同じく「女王が支配するコミュニティで働きアリが暮らす」という形で一生を終えます。働きアリはまず幼少期に女王アリの卵を世話し、その後、それぞれ役割を持って「エサを探して巣に持ち帰る」という仕事に従事します。


しかし、ムネボソアリの幼虫がサナダムシの卵が含まれるふんをエサとして食べると、寄生虫であるサナダムシがムネボソアリのお腹の中に宿ることになり、その一生の形が変わります。サナダムシはムネボソアリから栄養素を奪う代わりに、極端に長い一生を与えるとのこと。

昆虫学者のSusanne Foitzik氏が率いる研究チームは、3年にわたってムネボソアリのコロニーを研究室で観察し続けました。3年の観察が終わった時、数百匹いた「寄生されていないムネボソアリ」はほとんど死んでしまったそうですが、サナダムシに寄生されたムネボソアリは半分以上が生きていたそうです。この生存率は、長寿として知られる女王アリとほぼ同じだったとのこと。また、寄生されたムネボソアリは、コロニーの中で最も若い「幼虫を育てるムネボソアリ」と見分けが付かないほどに若々しかったそうです。

しかも、寄生されたムネボソアリは長寿なだけでなく、「甘やかされて過ごしていた」と研究チームは述べています。寄生されたムネボソアリは働きアリのように仕事を割り振られず、巣の中で過ごし、エサを与えられ、他のアリによって運ばれ、時には女王アリよりも注意を向けられることがあったとのこと。そして特にその見返りを社会に与えていませんでした。


観察の当初、寄生されたムネボソアリは特に生活に問題を抱えるわけではなく、コロニー全体に悪影響を与えているようにも見えなかったとのこと。これは標準的な「寄生」の形からは考えられないことでした。

しかし、研究者がさらに詳細に調査を行うと、寄生が存在するコロニーの寄生のないムネボソアリは負担が増加したことで、より働き、女王の世話から遠ざかり、寄生のないコロニーのムネボソアリよりも早く死亡することがわかりました。研究者によると、最終的に寄生のコストは「分業」に現れ、寄生のあったコロニーはコロニー全体でストレスの兆候を示したとのことです。

コーネル大学のアリ生物学者で今回の研究には参加していないManuela Ramalho氏は、社会的な昆虫は昆虫単体として見るのではなく、コロニー全体を巨大な「超個体」として見るという見解を示しています。コロニーの中で、アリは本当の意味で個人行動を行うことはできません。個体の行動に周囲の個体が反応するためです。寄生虫はごくごく少数の個体にしか感染していないにも関わらず、社会全体を操っていたといえます。

サナダムシは宿主であるムネボソアリが鳥などに捕食されない限り、卵を産みません。そして、寄生されて怠惰になったムネボソアリは、結果として鳥に捕食されやすくなります。研究者が観察を行ったところ、捕食者がやってきたとき寄生されていないムネボソアリは幼虫を抱えて逃げ回りますが、寄生されたムネボソアリはぼんやりと空を見上げるだけで動かなかったとのこと。


研究者は、寄生されたムネボソアリが、核となる生理機能に影響を及ぼすタンパク質や化学物質を放出し、ホルモン・免疫系・遺伝子に変化が起こる可能性があるとみています。このような仕組みにより、寄生虫は宿主を「効果的に冷凍」し、種の保存のため自らの生存可能性を高めているとみられています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logq_fa

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