サイエンス

「フェイスシールドはマスクよりもウイルスの拡散を防ぐ効果が低い」ことを研究者が視覚化


新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために多くの人々がマスクを着用していますが、マスクの圧迫感や表情が隠れることを嫌い、プラスチックなどで作られたフェイスシールドを好んで使う人もいます。しかし、アメリカの研究チームが行った実験では、「フェイスシールドは液滴の拡散を防ぐ効果がマスクより低い」ことが視覚的にわかる結果となりました。

Visualizing droplet dispersal for face shields and masks with exhalation valves: Physics of Fluids: Vol 32, No 9
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0022968

Face shields, masks with valves ineffective against COVID-19 spread | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-09/aiop-fsm082520.php

Visualization shows face shields may not protect against COVID-19 spread | Live Science
https://www.livescience.com/face-shield-visualization-covid-19-spread.html

マスクの着用は感染者の体液に含まれるウイルスが口や鼻から液滴として拡散することを防ぎ、新型コロナウイルス対策として有効であることが示されています。必ずしも医療用のマスクを着用する必要はなく、非医療用のマスクや自家製の布マスクでも一定の効果があるとのこと。医療用ではないマスクが感染症対策に有効かどうかを調べる方法としては、マスクを着用したままロウソクの火に息を吹きかける「ロウソクテスト」などが提案されています。

医療用ではないマスクがどれほど感染症対策に有効なのかを調べる「ロウソクテスト」とは? - GIGAZINE


しかし、「マスクの代替としてフェイスシールドを着用することは、ウイルスの拡散を防ぐ上で有効ではない可能性が高い」と、2020年9月1日に発表された論文では示されています。フロリダ・アトランティック大学Siddhartha Verma助教授らの研究チームは、さまざまなマスクやフェイスシールドの効果を調べるため、人間の口や鼻から飛散する液滴の広がりを視覚化する実験を行いました。

研究チームは水とグリセリンの混合物からなる蒸気を放出する噴霧器をマネキンの頭に接続し、マネキンの頭にマスクやフェイスシールドを着用した状態でポンプを使って蒸気を噴出させて、人間がせきをした状態を再現しました。この際、緑色のレーザーポインターをマネキンの周囲に照射し、飛沫の拡散状況を視覚化したとのこと。

実際にマネキンにフェイスシールドを装着させ、ポンプを使ってせきを模した蒸気の噴射を行うと……


せきをした直後に、液滴がフェイスシールドの下にある隙間から広がったことがわかります。しかし、少なくとも前方向に噴出された液滴はフェイスシールドにさえぎられ、広がっていないように見えます。


ところが、フェイスシールドでは細かな液滴が捕捉されないため、空気中を漂うことが可能なほど小さい液滴は次第に拡散してしまいます。


最終的に液滴はマネキンの前後0.9メートルほどに拡散したとのことで、ウイルスの流行を抑えるという点では、フェイスシールドがそこまで有効ではないことが示されました。


Verma氏は、「生徒が学校や大学に戻った場合、『より快適で長期間装着しやすいフェイスシールドを使用した方がいいのではないか』と考える人もいます。しかし、これらのシールドがそれほど有効でない場合はどうなりますか?感染を引き起こす可能性がある液滴が時間と共に蓄積する状態で、全員を狭いスペースに配置することになります」と指摘。一方でフェイスシールドがまるで役に立たないというわけではなく、マスクの着用と組み合わせて使用することで、目などに他人の液滴が付着するのを防ぐ効果は期待できるとのこと。


一方、マネキンがN95マスクを着用した状態で行った実験では……


せきを模した噴射が行われた直後、上部の隙間から液滴が広がったことがわかります。


しかし、それ以上に液滴が広がることはなく、ウイルスの拡散を防ぐ効果は十分にある模様。


また、一般的なマスクを用いて行われた実験では……


やはり上部の隙間から液滴が広がったほか、マスクの前面からもわずかに細かい液滴が拡散していることが判明。


それでも液滴の拡散は限定的であり、離れていれば直接ウイルスを吸い込む危険はありません。なお、必ずしも市販されているマスクの全てが有効であるとは限らないそうで、研究チームが実験した別のブランドのマスクでは、より広く液滴が拡散することが示されたとのこと。


今回の研究はあくまでもシミュレーションであり、感染の拡大に関する正確なデータを提供するものではありません。しかしVerma氏は「たとえ最高のマスクでもある程度の漏れがあります」と指摘し、マスクを着用すると同時に物理的な距離を保つことが、流行を緩和する上で重要だと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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