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マスクを付けたがらない人々にどう対応すればマスクを付けるように促すことができるのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対処するため、WHOは一般市民にマスクの着用を呼びかけていますが、中にはマスクの着用を断固として拒否する人々も存在しています。そんな「マスク反対派」に対してどう対処すればいいのかについて、ロイヤルメルボルン工科大学で経済学の上級講師を務めるMeg Elkins博士らが解説しています。

What to do with anti-maskers? Punishment has its place, but can also entrench resistance
https://theconversation.com/what-to-do-with-anti-maskers-punishment-has-its-place-but-can-also-entrench-resistance-143456


マスクは人々の口からウイルスを含む飛まつが拡散することを防ぎ、一定割合の人がマスクをすることでCOVID-19の流行を抑えられるとの研究結果も出ています。しかし、一部の人々はマスクの着用を強く拒否しており、マスクをしていないことを理由にピザ屋の入店を断られた客が店員に催涙スプレーを噴射する事件や、マスクを着けていない人の乗車を拒否したバス運転手が殺される事件などが発生しています。

中にはマスクの着用をお願いしてくる店員と口論する様子をムービーで撮影し、インターネットにアップロードして自分の正しさを主張する人物もいます。オーストラリア・ビクトリア州のダニエル・アンドルーズ州首相はこうした人物を「ぞっとする」と表現し、マスク着用を強く拒否する人とは口論せず、無視するよう人々に呼びかけました

無視することを提案したアンドルーズ州首相の姿勢は比較的穏当なものであり、朝のTV番組でホストを務めるKarl Stefanovic氏は、マスク着用を拒否する人物との対話中に「異様で気が狂った信念だ」「あなたの言うことを聞きたくない」と述べ、インタビューを打ち切りました。また、SNS上ではより強い非難の声も挙がっており、マスクの着用を拒否する人々への風当たりは非常に強いものとなっています。


「非協力的な行動を罰したい」と人々が願う気持ちは強力であり、ある程度はマスク着用を拒否する人に罰を与えることで着用を強制できます。しかし、強い非難や罰を与えることにより、さらにマスク着用を拒否する人の信念が強化され、対立が強まってしまう危険もあるとのこと。そのため、Elkins氏らは「マスク着用を拒否する人の複雑な心情を理解することに努めなければなりません」と指摘しています。

インターネット上では、「マスクは政府が人々をマインドコントロールするために使う道具である」などの陰謀論が広がっています。こうした陰謀論を支持する人には、「自分は直感的に真実を知る能力が優れている」「政府機関や主流のメディアは信用できない」といった信念を持っている傾向が強いそうで、陰謀論を宣伝する代替メディアの言うことを信じやすいそうです。


「人間は直感的な生き物であり、権威への不信や反抗的な感情は外部の力によって変えることが難しいものです」とElkins氏らは指摘しています。また、公式の情報源が発言を二転三転させることも権威への不信を高めるそうで、今回のケースでは保健当局のアドバイスが途中で変わったことにより、一部の人々が不信感を強めているとのこと。

当初、保健当局は医療従事者向けのマスクを確保するために「マスクの使用を控えるように」とアドバイスしていましたが、十分な供給量が確保できると「日ごろからマスクを着用するべき」と訴えました。この点が、マスク着用を拒否する人の間で「政府は真実を伝えていない」との信念を強める結果になったとElkins氏らは考えています。


「重要な問題は、マスク着用を拒否する人の信念を変えることではなく、彼らの行動を変えることです」とElkins氏らは指摘し、問題はあくまで「マスクを着用させるにはどうすればいいのか」という点だと強調しています。人々の行動を変える方法を考える上で役立つ例として、Elkins氏らは「最後通牒ゲーム」を挙げています。

最後通牒ゲームとは、2人のプレイヤーが提案者と応答者に分けられ、一定額の報酬の取り分を提案者が決定して、応答者がその取り分を受け取るかどうか判断するという実験です。提案者が決めた取り分に応答者が納得すれば両者が取り分に応じた報酬をゲットし、応答者が拒否すれば両者とも報酬を得られません。

合理的に考えれば、応答者はたとえどれほど不公平な分配であっても受け入れ、少しでも報酬をゲットする行動が最善です。しかし、実際には分配に納得できないと感じた場合に受け取りを拒否する応答者が、一定の割合で存在することもわかっています。この傾向は霊長類を対象にした実験でも確認され、「不公平の感覚」は生来的なものであることが示されています。


合理的な判断に影響を及ぼす「不公平の感覚」を制御するため、経済学者のErte Xiao氏とDaniel Houser氏は、最後通牒ゲームにある工夫を施す(PDFファイル)実験を行いました。その工夫とは、「応答者が提案者に『自分はこの取り分に納得していない』という簡単なメッセージを送信し、不満を表明できるようにする」というもの。このルールを採り入れたところ、応答者は不公平な取り分であっても、提案者の申し出に応じる可能性がはるかに高くなったそうです。

この結果を踏まえて、Elkins氏らはマスク着用を拒否する人に対し、「自分の意見を表明する方法」を用意することが重要だと指摘。「ルールに従わないこと」が意見表明をする唯一の方法だった場合、人々はあえてルールに従わないことを選択しがちですが、相手に意見を表明する方法を与えることで、ひとまずルールに従わせられる可能性が高くなるとのこと。

一部では、「私はマスク着用に反対しています」とアピールできるマスクを用意し、ルールに従ってマスクを着用しながら反対意見を表明可能にするという方法も考案されています。「マスク着用を拒否する人を協力させたい場合、ほかの方法で異議を表明することを認める必要があります。迫害や嘲笑は彼らの反発と恨みを増大させ、対立の精神を強化します」と、Elkins氏らは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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