マスクが「想像以上に」ウイルス感染症対策に効果を発揮する理由を分かりやすく解説したムービー

多くの研究により、一定の人がマスクを着用していれば「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は抑えられる」ということが分かっていますが、感覚的には「半分の人がマスクをすれば感染も半減する」と考えがち。しかし、マスクがCOVID-19を含めたウイルス感染症を抑制する効果は、こうした感覚をはるかに上回るものだと、教育情報ムービーなどを扱うYouTubeチャンネルMinutePhysicsが解説しています。

Why Masks Work BETTER Than You'd Think - YouTube

「ウイルスを他人に感染させるリスクを半分にカットするマスク」があると仮定します。この場合、このマスクは「50％の効果がある」と表現することができます。

しかし、街を出歩く人が全員「50％の効果があるマスク」を着用した場合の効果は、「50％」よりも高いものとなります。なぜでしょうか？

これを直観的に理解できるように、極端な例を考えてみます。もし、世の中にマスクをつける人がいなければ、マスクの恩恵もゼロです。

もし、全員が「50％の効果があるマスク」を着用すれば、感染も50％減少する……

のではなく、75％減少します。

これは、マスクには「着用者を感染から守る効果」と「着用者からの感染を防ぐ効果」の両方があるからです。

さらに、「誰もがマスクをつけている」ということは、「人と人の間には2つのマスクがある」ということを意味します。

すると、ある人が拡散させるウイルスは、まずその人がつけているマスクで50％カットされた後、別の人のマスクでさらに50％カットされるということになります。

これが「50％の効果があるマスク」が75％の効果を発揮する理由です。

残念ながら、現実には誰もがマスクをつけているわけではありません。そのため、感染者と非感染者が接触するパターンは、4通りになります。

1つ目は、感染者と接触者の両方がマスクをつけていないケース。この場合、マスクの恩恵はゼロです。

2つ目は、感染者のみがマスクをつけているケース。この場合、マスクの効果は50％となります。

3つ目は、接触者のみがマスクをつけているケース。これも、上記と同様に感染が50％抑制されます。

4つ目は、両者がマスクをつけているケース。前述のとおり、マスクの効果は75％になります。

さきほど、「全員が50％の効果があるマスクをつけていれば、マスクの効果は75％」だということが分かりました。では、50％の人がマスクをつけていたらどうなるでしょうか？

この場合、すべての接触のうち4分の1は「マスクなし」で、4分の1は「感染者のみがマスクを着用中」で、4分の1は「接触者のみマスクを着用中」で、4分1は「両者がマスクを着用中」となります。

その結果、マスクをつけている人が全体の2分の1でも、あらゆる接触の4分の3がマスクを着用中で、そのうちのいくらかが両者がマスクを着用していることになります。

直感に従うと、「半数の人が50％の効果があるマスクをしていれば、『50％×50％＝25％』で感染の抑制率は25％」です。確かに、マスクに一方向の効果しかない場合、これは正しいといえます。

しかし、上記のようにマスクには双方向の効果があるので、実際の抑制効果は44％。つまり、50％の効果があるマスクを50％の人しか付けていない場合でも、感染をほぼ半減させる効果を発揮します。

マスクの着用率や、マスクの効果をどのような数値に仮定しても、常に「実際の効果」が「直感」を上回ります。

では、これを実際にCOVID-19に当てはめるとどうなるでしょうか？

これまでのところ、1人のCOVID-19患者がCOVID-19を感染させる人数は2.5人ではないかといわれています。これを疫学的に言い表すと、基本再生産数は2.5です。

これを60％減少させて1未満にすれば、感染の広がりはすみやかに抑制されます。

60％の減少を達成できるような「着用率」と「マスクの効果」の組み合わせはいくつかありますが、例えば「60％の人」が「60％の効果があるマスク」をつければ、達成できます。

このムービーでは、分かりやすくするために多くの要素を排除しているため、COVID-19が実際には非常に複雑な仕組みで拡大している点には注意が必要です。

その上でMinutePhysicsは、「効果が100％のマスクでなくても、また全員がマスクを着用していなくても、十分な人がマスクを着用していれば、パンデミックを撃退できるのです」と結論付けました。