新型コロナウイルスをブロックする「N95マスクの95って一体何?」などN95マスクの秘密が一発で分かるムービーが登場
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生以来、マスクが世界的に注目を集めるようになり、当初はマスクの効果に懐疑的だったWHOでさえその効果を認めるようになりました。そこで、マスクの中でも特に高性能であるN95マスクがウイルスや粉じんをブロックする原理について、YouTubeで物理関連のムービーを多数公開しているminutephysicsチャンネルが分かりやすく解説しています。
The Astounding Physics of N95 Masks - YouTube
2020年に新型コロナウイルスがまん延する前は、N95マスクについて知っているのは、粉じんが発生する仕事や火災現場に行く仕事についている人ぐらいのものでした。
N95マスクについては、いわば非常に目の細かいこし器のようなものだとイメージされがちですが、実際は違いがあります。
こし器は、一定の大きさの粒子はこし取り、それより小さな粒子は通すものです。
一方、N95マスクは大きな粒子と小さな粒子を捕獲するのは得意ですが、中程度の大きさの粒子はあまりブロックしません。
これがN95マスクとこし器の違いです。
N95マスクの最大の目的は、網目で粒子をとらえることではなく……
繊維に粒子を付着させることにあります。一度繊維に付着した粒子はそのまま繊維に固定され、再び空気中をただようことはありません。
顕微鏡レベルの世界では、分子間に働くファンデルワールス力の影響が大きいので、基本的にあらゆる物体は粘着物だといえます。
つまり、N95マスクは小さな虫なら通り抜けられる網戸ではなく、どんな虫も捕らえてしまうクモの巣ようなものだといえます。
同じ網目のこし器を何回使っても小さな粒子をとらえることはできませんが……
何重にも繊維が重なったN95マスクなら、高確率で粒子が繊維に接触します。
粒子が繊維に接触するかどうかは、粒子のサイズに左右されます。大きな粒子は直線的に移動するので、ほぼ確実に繊維に衝突します。これを慣性衝突といいます。
また、小さな粒子は空気の分子とぶつかってジグザグに動くので、非常に高い確率で繊維に衝突します。このジグザグした動きはブラウン運動として知られています。
一方、中程度の大きさの粒子は空気の流れにそって動き、直進もジグザグ運動もしません。そのため、繊維をすり抜けてしまうおそれがあります。
しかし、N95マスクには「電界」という奥の手があります。電界があると、電気的に中性な粒子でさえ電界の発生源に引き寄せられます。
ネコも静電気を発生させて、毛皮を発泡スチロールまみれにしてしまうことがありますが、N95マスクはこれとは少し違った原理を用いています。
鉄を強い磁場の中に置くと永続的に磁力を帯びるようになりますが、同様にプラスチックもエレクトレットによって電界を発生し続けるようになります。
N95マスクはこの仕組みを応用し、ただの繊維に比べて10倍も多くの粒子を捉えられるようになっています。
N95マスクの機能をまとめると、「分子レベルでの粘着性」「何層もの繊維」「全ての粒子をとらえる電界」の3つになります。
N95マスクは小さな粒子と大きな粒子をほぼ100%捕捉します。一方で中程度の粒子の捕捉率は95%であることから、名前に「95」とつけられています。
苦手な中程度の粒子でさえ95%ブロックしてしまうN95マスクですが、使うにあたってはいくつか知っておかなければならないポイントがあります。
1つ目は、「きちんと装着していないと効果がない」ということです。
2つ目は、「細菌やウイルスのサイズそのものはあまり関係がない」という点です。なぜなら、こうした病原体は通常の場合単体で空気中を浮遊するのではなく、呼吸やくしゃみなどで発生するさまざまなサイズの液滴にのって浮遊するためです。
3つ目は、「基本的に使い捨て」ということです。N95マスクの世界的な需要増により、多くの医療従事者がマスクを洗浄して再利用しているのが現実です。しかし、いくつかの洗浄方法はマスクの静電特性にダメージを与えるので、見た目は変わらなくても機能が大きく低下している可能性があります。
「せっけん水」「アルコール消毒液」「漂白剤」はN95マスクの機能を損なう可能性があるほか、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3日以上活性を保つことが示されているため、「一晩使わないでおく」といった方法も有効ではありません。
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