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WHOは布マスクを非推奨、結局マスクは着用すべきなのか否かを研究論文や研究者の意見を基に解説


まだまだ日本国内で猛威を振るう新型コロナウイルスは、2020年4月1日時点で1日当たりの感染者数が過去最多となる266人を記録し、これまでの合計感染者数(クルーズ船の症例を除く)は2495人となりました。日本政府は新型コロナウイルス対策に全世帯に2枚ずつ布マスクを配布することを検討していますが、「本当にマスクを着用すべきなのか」について、海外メディアのInverseが科学的根拠や研究者の意見を基に解説しています。

SHOULD WE WEAR MASKS? THE SCIENCE SHAPING A PIVOTAL DEBATE, EXPLAINED
https://www.inverse.com/mind-body/should-i-wear-a-mask-coronavirus

新型コロナウイルス対策として多くの人々が使用している「マスク」について、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「ウイルスの感染を減らすために布マスクの導入を検討しており、アメリカ国民が布マスクを着用して外出することを推奨する可能性がある」と説明しています。ただし、記事作成時点ではCDCが公開している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から身を守る方法」というページには、「病気の場合はマスクを着用し、病気でない場合は病気の人を看病していない限りマスクを着用する必要はない」と記されています。


また、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス対策に公開したマスク利用に関するガイドラインには、「どんな状況であってもガーゼやコットンなどの布製マスクの使用は推奨されません」と記されています。


また、布マスクは医療用不織布マスクよりもインフルエンザ症状などが起きやすいという実験結果もあるため、「病院では絶対に使わない」という意見もあります。

布マスクは医療用不織布マスクよりもインフルエンザ症状などが起きやすいというランダム化比較試験。我々は病院では絶対に使いません、布マスク。 https://t.co/hqkSBPM7KD

— 岩田健太郎 Kentaro Iwata (@georgebest1969)


CDCが新型コロナウイルス対策としてのマスクに関する推奨事項を更新しようとしているように、多くの公衆衛生機関が同様にマスクに関する推奨事項を更新しようとしています。CDCでディレクターを務めるロバート・レッドフィールド氏はNPRのインタビューに対して「マスクが新型コロナウイルス感染症のまん延を防ぐかどうかに関するデータは積極的に見直されています」と語り、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・フォーチ氏は、POLITICOのインタビューの中で「政府のトップレベルとマスクに関する推奨事項を変更することを検討している」と語っています。

一方で、一般の人々がマスクを着用すべきか否かについては多くの議論があります。


マサチューセッツ総合病院などの主要な医療機関では、新型コロナウイルス対策として臨床医などの医療レベルで利用されているN95マスクを着用する人以外でも、病院内のすべての人がマスクの着用を義務づけられているとのこと。カリフォルニア大学のサンフランシスコ校で働く感染症専門医のPeter Chin-Hong氏は、「マスクに関する議論はPPE(医療用個人防護具)不足に影響を与える可能性がある」としながら、一般人であっても特定の場所・人・時間ではマスクを着用して新型コロナウイルスに備えるべきと主張しています。

Hong氏は「疾患の罹患率が低い場合、マスクを着用しているか否かは問題になりません。しかし、罹患率が増加し、多くの人が不規則にあなたの側を通り過ぎるような場所では、マスクを着用することが重要な意味を持つようになります」と述べています。

新型コロナウイルスは感染者のせきやくしゃみを経由して他者に伝染していきます。加えて、New England Journal of Medicineに掲載された調査報告によると、無症状の新型コロナウイルス患者は、症状のある患者と同等のウイルス量を体内に保有していることが明らかになっています。そのため、無症状の感染者がウイルスを他人に伝染させないためにもマスクの着用は重要とHong氏は語っています。


しかし、マスクの有用性に関する研究報告は「これまであまり一貫していない」とInverseは指摘しています。

2012年に行われた17件の臨床試験を分析した最新の研究論文では、マスクの使用とインフルエンザ予防に決定的な関連性を見出すことはできなかったそうです。しかし、論文では「マスクを他の衛生週間と組み合わせることで、役立つ可能性がある」と記しています。ただし、2011年に公開された呼吸器系ウイルスに関する67件の試験を分析した研究論文では、マスクの着用はウイルスの拡散を遅らせるための効果的な方法であるとされています。

Hong氏は人と人との距離を6フィート(約1.8メートル)以上取ることができる農村部などでは、マスクを着用する必要がないくらいに社会的距離を置くことができると指摘。ただし、多くの人が行き交うため人と人との間隔を6フィート以上開けることができない都心部では、マスクの着用が有効としています。Hong氏は「誰もがマスクを着用する必要があるわけではないものの、コミュニティの人々が身を守ることこそが重要です。そのために必要なのは派手なマスクではなく、自家製マスクやバンダナでも十分です」と語っています。


オックスフォード大学で働く疫学者のElaine Shuo Feng氏は、さらに具体的にマスクを着用すべき人として以下の3つの条件を挙げています。

1:高齢者や基礎疾患を持つ人などの発症リスクが高いグループ
2:新型コロナウイルス感染症に罹患した人
3:新型コロナウイルス感染症にさらされた可能性のある人

また、Feng氏はマスク需要が高まることでN95マスクが不足する可能性を危惧しており、一般向けのマスクに関するガイドラインの必要性を叫んでいます。加えて、Hong氏はマスクを着用したからといって社会的距離を縮めるべきというわけではないと指摘し、推奨される新型コロナウイルス対策を取りながら、必要に応じてマスクを着用すべきとしています。

香港医師会の伝染病に関する諮問委員会で委員長を務めるChi-chiu Leung氏は、「科学的根拠からすると、マスクの着用に大きな効果はありません。しかし、マスクは病気の伝染を減らすために少なからず有効であり、他の手段と比べると非常に安価に導入できる対処法であることから、多くの感染症患者を救うことにつながります」と語り、マスクは新型コロナウイルスに対する万能薬ではないものの、コミュニティ全体での流行を緩やかなものにするためには十分役立つとしています。

過去の研究論文ではマスク着用の科学的根拠は一貫性がなく、マスクを信じる人を不安にさせるものかもしれません。しかし、多くの研究者がマスク着用を推奨しており、それにより新型コロナウイルスの感染拡大を緩やかなものにできると主張していることから、パンデミックが継続している間は「屋外でマスクを着用することは、検討に値する」とInverseは記しています。

・2020年04月08日 11時20分 更新
WHOは2020年4月6日に「マスク利用に関するガイドライン」を更新し、「非医療用マスクとして知られる布マスクなどを地域社会で使用することは、十分に評価されていません。現状ではマスクの使用を推奨あるいは否定するに足る証拠はありません」と記し、非医療用マスクが感染を予防できるという根拠はないとしています。一方で、すでに感染している人が他人にウイルスを感染させないために着用するには一定の効果があるという見解も示しています。

また、医療用マスクは新型コロナウイルス感染症の予防に一定の効果が見込めるものの、適切なレベルで人体を守るには「マスクだけの使用では不十分であり、他の対策(手洗いなど)を採用する必要がある」とWHOは主張しています。

なお、WHOは関係機関と協力して非医療用マスクの効果を測定しており、新しい調査結果などが公表され次第、ガイドラインを更新するとしています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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