新型コロナウイルス対策で「人工呼吸器を作るオープンソースのプロジェクト」をMITが始動
新型コロナウイルス感染症を発症すると肺が広範にわたり損傷を受けることが判明しており、感染拡大に伴い大量の人工呼吸器が必要とされるようになってきています。そんな中、マサチューセッツ工科大学(MIT)が人工呼吸器を作るためのオープンソースプロジェクト「MIT Emergency Ventilator(E-Vent)」をスタートさせました。
MIT E-VENT | Emergency ventilator design toolbox
https://e-vent.mit.edu/
2020年3月には、バッグバルブマスクと呼ばれる手動の人工呼吸器を自動化する装置を開発するプロジェクト「OxyGEN」が発足。家電などから回収できるモーターや木材から、バッグバルブマスクのポンプ部分を手で押す代わりに木の板で押す装置の設計図が公開されています。
OxyGENの詳細については以下の記事を読むと良く分かります。
新型肺炎治療に用いる人工呼吸器の手動ポンプを誰でも簡単に自動化できるプロジェクト「OxyGEN」 - GIGAZINE
by Official U.S. Navy Page
こうした流れの中で、人工呼吸器の不足が切迫している地域や、医療技術の普及が進んでいない国々に安全かつ低コストな人工呼吸器を普及させるべく開始されたのが、MITのE-Ventです。OxyGENは、DIY感覚で誰でも装置を作ることができることを念頭に置いたプロジェクトですが、E-Ventは実際の人工呼吸器に近い機能を、安全かつ迅速に製造することを目標とした、開発者向けのプロジェクトとなっています。
E-Ventは、「制御装置(左)」と「換気装置(右)」の2つの部分に分けることができます。
換気装置だけの場合はこんな感じ。
シンプルなマイコンボード「Arduino」をベースにした回路の設計図も公開されています。
既にプロトタイプが作られており、呼吸器の構造が人間に近いブタでのテストが開始されました。テストの結果は、近日中にも公開される予定だとのことです。
MIT E-Ventは「どのような手法であれ、専門家が直接監督する医療環境でのみ使用する必要があります」として、人工呼吸器の機能を完全に自動化させるわけではないとした上で「MIT E-Ventは、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けた集中治療室向け人工呼吸器の代わりにはなりませんが、本格的な人工呼吸器を重症患者に割り当てるための代替品にしたり、他に選択肢がなく生死が関わるような状況で有効性があると期待されています」と述べました。
MIT E-Ventのもとには、Microsoft South Africaの技術責任者であるShane van Jaarsveldt氏からの「ソフトウェア・ハードウェア・プリント基板設計のレビューを喜んでお手伝いします。ご連絡ください」といった申し出や……
「インド政府軍から、低コストで簡単かつ迅速に設置できる人工呼吸器を探すよう要請を受けており、目下このMIT E-Ventを検討しているところです」といった機器メーカーからの連絡。
「私はカシミール出身のアマーンといいます。私たちの地域では、人工呼吸器が27台しかないという問題が発生しており、さっそく初期の設計に取りかかっています。このシステムの制御メカニズム、つまり1分間当たりの呼吸数をどのように制御するかを教えてください」といったコメントが寄せられています。
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