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「住血吸虫症を撲滅させた」と主張してきた中国共産党のプロパガンダの実態とは?

by Buster&Bubby

住血吸虫症」は長期にわたってヒトの内臓をむしばむ病気で、感染すると皮膚炎・高熱・消化器症状などの急性症状を呈した後に、肝硬変による黄疸や腹水を発症して死亡します。中国共産党は住血吸虫症を「撲滅した」と主張してきましたが、2020年には「撲滅ではなく、制御する」という目標を掲げています。

Mao's China falsely claimed it had eradicated schistosomiasis – and it's still celebrating that 'success' in propaganda today
https://theconversation.com/maos-china-falsely-claimed-it-had-eradicated-schistosomiasis-and-its-still-celebrating-that-success-in-propaganda-today-144464

WHOによると、住血吸虫症は世界77カ国で2億人以上が感染しているという、顧みられない熱帯病の1つです。日本においても山梨県甲府盆地底部一帯などで流行したことがあり、原因究明から撲滅に至るまで100年以上もかかっています。日本における住血吸虫症の経緯は、Wikipediaで詳しくまとめられており、当該記事は日本語版Wikipediaにおける「秀逸な記事」として選出されています。

地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/地方病_(日本住血吸虫症)


そんな住血吸虫症を「撲滅した」と中国政府は長らく言い続けてきました。中国政府は住血吸虫症の撲滅を「中国共産党の指導力によって病気が撲滅された好例」として扱っており、武漢市における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者がゼロになったと公式発表された1週間後の2020年4月2日には、国営放送局の中国中央電視台が住血吸虫症撲滅のドキュメンタリー番組を再放送しています。

しかし、「住血吸虫症を撲滅した」というのは単なるプロパガンダであり、一度も達成されたことがないというのがエセックス大学で歴史について研究するXun Zhou氏の主張です。中国の住血吸虫症根絶キャンペーンは1955年に始まり、1958年には当時の中国共産党の最高指導者だった毛沢東が「Farewell to the God of Plague(疫病神との別れ)」という詩を発表し、住血吸虫症の撲滅が目前である旨を公表。同年内には、かつて流行が著しかった江西省余江区を皮切りに、167の郡や自治体で住血吸虫症を撲滅したと宣言したそうです。

このキャンペーンでは、住血吸虫症を媒介する寄生虫の住血吸虫の中間宿主となる巻貝を殺すために、大規模な埋め立てや灌漑が行われました。しかし、この埋め立てや灌漑は多額のコストがかかっただけでなく、浸水などを引き起こして洪水や土壌劣化の原因になったとのこと。


これらの問題によって、埋め立てや灌漑によって巻貝を殺すというプロジェクトは頓挫。代替として、農薬が使われるようになりました。しかし、Zhou氏によると、この農薬が生態系にさらなる打撃を与えたとのこと。中国政府は一連のプロジェクトによって打撃を受けた農業生産を援助するため、当該地域には移民と家畜を送り込んだことによって、住血吸虫症の感染者はさらに増加したそうです。

これらのプロジェクトに携わった中国保健省の元幹部は「単純に数字をでっち上げただけです。上層部の役人たちは、最初からそれを知っていました。トラブルに巻き込まれたりクビを切られたりしないように、上層部の役人は我々に数字のねつ造を要求しました。それは、公然の秘密というものです」とZhou氏に告白したそうです。Zhou氏の調査によると、「上層部の指導者は生産にしか関心がなく、人命には関心がない」という旨の抗議も行われていたとのこと。


近年の中国政府は、「住血吸虫症は撲滅したが再発した」という(PDFファイル)データを公表しており、2016年に5万4454人の国内感染者を報告しています。2017年には国家衛生健康委員会は「2020年までに住血吸虫症を制御する」という新たな目標を発表しており、撲滅ではなく制御に目標を切り替えています。

Zhou氏は一連のプロパガンダについて、「『住血吸虫症を根絶した世界初の国』の一員であるということは、人々に誇りを感じさせてくれます。COVID-19との戦いにおいて住血吸虫症の根絶を喧伝することによって、中国政府は政権を維持するために必要な偽の安心感と結束感を生み出し続けています」と分析しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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