サイエンス

新型コロナウイルスと最前線で戦うMITゆかりの最先端企業まとめ


全米屈指のエリート名門校であるマサチューセッツ工科大学(MIT)が輩出した人材は、生物工学・モバイルテクノロジー・データ分析・コミュニティエンゲージメントなど幅広い分野で活躍し、多数の企業や研究施設などで能力を発揮しています。そこで、MITに関連するニュースを扱うMIT Newsが、MITにゆかりのある人材が活躍する団体の中から、新型コロナウイルスの研究に特に大きな成果を挙げている企業をまとめました。

MIT-affiliated companies take on Covid-19 | MIT News
http://news.mit.edu/2020/mit-companies-covid-19-0326

◆Moderna Therapeutics
Moderna Therapeuticsは、マサチューセッツ州のケンブリッジを拠点としているバイオテクノロジー企業です。事業の立ち上げにはMITの化学工学科および生物工学科の教授で、MITの医療工学科学研究所(IMES)の教員でもあるロバート・ランガー教授が深く関与しました。

そんなModerna Therapeuticsは、2020年1月11日に中国当局が新型コロナウイルスの遺伝子配列を公開してからわずか2日後に、アメリカ国立衛生研究所と共同で新型コロナウイルス感染症の予防が期待できるワクチンの設計に成功しています。

Moderna Therapeuticsが開発したワクチンや、そのワクチンの臨床試験についての詳細は以下の記事を読むと良く分かります。

世界初の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験へ向け健康なボランティアを募集中 - GIGAZINE


新型コロナウイルスワクチンの世界初のヒト臨床試験がスタート - GIGAZINE


Moderna Therapeuticsが開発したワクチンの最初の試験は6週間ほどかかると予想され、さらに安全性や免疫への影響が詳しく調べられます。Moderna Therapeuticsによると、このワクチンが一般に出回るまでには12カ月から18カ月はかかるとのことですが、緊急を要する場合は一部の人により迅速にワクチンが与えられる場合もあるとのことです。

◆Alnylam Pharmaceuticals
マサチューセッツ州ケンブリッジは、RNA干渉を応用した治療法の開発を行うバイオテクノロジー企業Alnylam Pharmaceuticalsの本拠地でもあります。同社は3月5日に、感染症治療を専門とする企業Vir Biotechnologyと提携し、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発に着手することを発表しました。


Alnylam Pharmaceuticalsは、MITの生物学教授であるフィリップ・シャープ氏や生物学教授のデビッド・バーテル氏、かつてMITで教壇に立っていた生物物理化学者のポール・シーメル、MITの博士研究員だったトーマス・タシュル氏とフィリップ・ザモール氏らによって創設された企業です。

Alnylam Pharmaceuticalsは今後、同社の強みであるRNA干渉技術を肺に使用することで、治療薬の候補を特定していく予定だとのこと。シャープ氏はこの取り組みについて「仮に今回の提携が新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発につながらなくても、将来的には感染症の犠牲者を助ける大きな可能性を秘めています」と述べました。


◆Dimagi
マサチューセッツ州ケンブリッジにあるDimagiは、行政サービスが行き届かない様々な地域にオープンソースで低コストのIT技術を導入することに特化した企業です。同社はこれまでも、2014年に西アフリカでエボラ出血熱が大流行した際に、携帯電話を使用した感染状況のデータ収集システムを現地に提供するなどの事業を行っています。

Dimagiは今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大でも、ナイジェリアのオグン州などを含む自治体に新型コロナウイルスに対応するための情報プラットフォームを整備するなどの支援活動を実施しています。

そんなDimagiを設立したのが、起業家のジョナサン・ジャクソン氏です。ジャクソン氏は、MITに在学中に、MITとハーバード大学が共同で設立したHarvard-MIT共同医療科学技術部で医学を学んでいたヴィクラム・クマール氏と出会い、共同でDimagiを興しました。

ジャクソン氏はDimagiがナイジェリアなどで展開しているサービスについて「新型コロナウイルス感染症の最前線で活動している医療機関が、無料で新型コロナウイルス関係のアプリをダウンロードし迅速に使用することができるアプリストアのようなものです」と説明しています。

by Dimagi

◆Biobot Analytics
下水の分析から公衆衛生問題に取り組むBiobot Analyticsは、MITで疫学を学んでいたマリアナ・マトゥス氏が都市科学の専門家であるNewsha Ghaeli氏と共同で創設したスタートアップです。Biobot Analyticsが下水のサンプルから得られる情報は、薬物・環境汚染物質・抗生物質など多岐にわたりますが、同社はこのノウハウを生かして新型コロナウイルスのまん延の調査手法を開発しました。

この調査手法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応という手法を用いて、全米の医療機関の汚水から新型コロナウイルスの痕跡を調査することができるというもの。これにより、「個人の新型コロナウイルスへの感染検査を補完し、感染拡大対策の効果の測定や再発生の兆候を早期に捉えることが可能になる」と、同社は発表しています。


◆Soofa
街頭の電子掲示板の運営と、誰でもコミュニティ向けのニュースを発信できるサービスSoofa Talkを手がけるSoofaは、MITの元研究者であるサンドラ・リヒター氏がユッタ・フリードリックス氏と立ち上げたスタートアップです。

Soofaは、迅速かつ柔軟に都市空間に情報を配信できる強みを生かして、ブルックラインサマービルといったマサチューセッツ州の各都市に、新型コロナウイルスの公式情報を表示する街頭掲示板システムを整備しました。

by Soofa

◆Pathr
Pathrは機械学習を用いたデータ分析により、商業施設などにおける人の移動などの解析を行っているIT企業です。MITで理学修士号を取得したCEOのジョージ・ショー氏らは、会社が拠点を構えるサンフランシスコ・ベイエリア屋内避難指示により半ば封鎖状態になってしまっている間に、新型コロナウイルスの感染拡大をシミュレーションするSocialDistance.aiを開発しました。

SocialDistance.aiによるアウトブレイクのシミュレーション結果が以下。

Outbreak - YouTube


なんの対策も行われていない状況で、オレンジ色で示された新型コロナウイルスの保有者が出現すると……


連鎖的に感染が拡大。


最終的に、約40秒のシミュレーションで訪問者の90%近くが感染してしまっています。


一方、社会距離を保った状態のシミュレーション結果がこれ。

Pandemic vs. Increased Social Distance - YouTube


保有者が移動しても、なかなか感染が広がりません。


最後にはある程度感染が拡大してしまっていますが、それでも訪問者の30%程度しか感染していません。このことから、「社会距離拡大戦略」は完全に感染を食い止めることができなくても、感染の増加をかなり緩やかにする効果があることが視覚的に理解できます。


ショー氏と同僚らは既に、ショッピングモールやカジノ、小売店などさまざまな公共空間を運営している管理者らに連絡を取り、公共スペースの使用を許可するかなどの判断に役立つ情報の提供を行っているとのことです。

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in ソフトウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1l_ks

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