新型コロナウイルス感染症に対して劇的に効果を発揮した処置法などを最前線で戦う医師が紹介
新型コロナウイルスの感染が拡大するイタリアで働くイスラエル人医師のカーミ・シェファー氏が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に対して用いた「スキューバダイビング用マスクを介して患者を人工呼吸器に接続する方法」など、いくつかの革新的な処置法を紹介しています。
Israeli doctor in Italy says innovative treatments offering hopes of recovery | The Times of Israel
https://www.timesofisrael.com/israeli-doctor-in-italy-says-new-innovative-treatments-flattening-the-curve/
イタリア北部の都市パヴィーアで働くイスラエル人医師のシェファー氏が、いくつかの新しい処置法が新型コロナウイルス感染症の患者を助けているとイスラエルメディアのThe Times of Israelに話しています。
パドヴァ大学の大学病院で働くシェファー氏は、イタリアで感染が広がる新型コロナウイルスに対して「我々はアウトブレイクの最中にあり、緊急治療室は満員で、人工呼吸器を装着した命の危機にある患者の状態は改善しないままです。そのような状況を見て、私は絶望を感じました。しかし、過去数日で人々は新しい薬もしくはウイルスに感染してから回復するのに2週間かかるという事実の結果として、回復傾向にあります」と語りました。
パドヴァ市での新型コロナウイルス感染症の症例数は1552人で、そのうち136人が入院しており、13人が死亡しました。これは近隣の都市よりも比較的少ない数字だそうです。シェファー氏はイタリアではなぜ新型コロナウイルス感染症の死亡率が高いのかについて、「平均寿命が長く、高齢者の割合が多いから」としています。「新型コロナウイルスが高齢者人口の集中する地域に到着した瞬間、感染症は山火事のように広がっていきます」と、新型コロナウイルス感染症が高齢者の間で猛威を振るっている理由について語りました。
パドヴァ市では自己免疫薬であるトシリズマブが新型コロナウイルス感染症に対して有効であることが証明されているとのこと。ただし、患者の体内に他のウイルスや細菌が存在しないことが確認されなければトシリズマブを使用することはできないそうです。また、シェファー氏の働く病院では、抗ウイルス薬のレムデシビルが有効であることも認められているとのこと。
さらに、シェファー氏は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、「医者は創造的であることを強いられました」とも語っています。シェファー氏はチューブを使って人工呼吸器を取り付けることができない患者に対して、シュノーケリング用のマスクを使って取り付けるという荒業で患者の危機を救ったこともあるそうです。なお、シュノーケリングマスクと人工呼吸器のチューブを接続する部分は、3Dプリンターを用いて出力された模様。
以下の画像は3Dプリンターで出力された黄色いパーツを使って人工呼吸器とシュノーケリングマスクを合体させ、患者の命の危機を救った際に撮影された写真。
医療界では当初、新型コロナウイルス感染症は感染性の高いインフルエンザとみなされていましたが、その後、同感染症は非常に予測不能であり、患者の状態も1日に数回劇的に変化する可能性があることが明らかになりました。また、新型コロナウイルス感染症に有効な薬物であっても、効果を示すまでに数時間かかることが指摘されています。
そんな新型コロナウイルス感染症に対して「劇的な効果をもたらした」とシェファー氏が語るのが、「人工呼吸器を装着した患者を仰向けに寝かせるのではなく、うつ伏せに寝かせる」という処置法です。これにより「突然患者の血中酸素濃度が数百パーセントも急上昇しました」とシェファー氏は語っています。
なお、シェファー氏はイタリアでの新型コロナウイルスの感染拡大は今後数週間以内に落ち着くとみていますが、事態が収束するのは「2020年6月頃」になるとみています。加えて、イスラエルのような医療制度が整っていない地域では、イタリア以上の死亡率となる可能性もあると警告しています。
シェファー氏は「私は今、医学の研究を始めてからの16年間全体よりも、呼吸器疾患についてより多くのことを学んでいるように感じています」と語りました。
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