ダイソンが国の支援要請を受け「人工呼吸器の開発」をスタート
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴って、対症療法に使われる医療用人工呼吸器が不足しています。イギリスの国民保健サービス(NHS)は、同国内の人工呼吸器不足について産業界に支援を要請。その声に、サイクロン式掃除機を初めて開発したことで知られるイギリスの電気機器メーカーのダイソンが応えました。
Dyson tells ITV News about plans to build ventilators to combat coronavirus crisis - ITV News
https://www.itv.com/news/2020-03-23/dyson-tells-itv-news-about-plans-to-build-ventilators-to-combat-coronavirus-crisis/
COVID-19が重症化すると、気管支炎や肺炎を併発して呼吸不全が起こる可能性があります。呼吸不全が生じた際の対症療法に使われるのが人工呼吸器ですが、COVID-19の感染拡大によって医療機関の人工呼吸器が不足しつつあります。
イギリスでもCOVID-19の流行が続いており、NHSは国内の産業界に人工呼吸器について支援を要請。ダイソンはイギリスのテクノロジー企業The Technology Partnershipと手を組み、国難に立ち向かう姿勢を表明しました。
イギリスのテレビネットワークiTVによると、ダイソンは「NHSの要請に対して人工呼吸器の設計と開発にリソースを集中している」と回答。同社の掃除機用コンポーネントから作成されたプロトタイプを、ブタの肺を使って試験しているそうです。
by Chen Haohsuan
ダイソンは2019年に本社をシンガポールに移しましたが、イギリス国内のウィルトシャーにも研究所や工場を有しています。iTVによると、ダイソンは海外から部品を輸入し、ウィルトシャー工場で約5000台の人工呼吸器を製造する予定です。
ダイソンの広報担当者は「人工呼吸器製造プロジェクトは緊急を要するため、24時間体制で開発を続けている」と回答しています。
イギリスの人工呼吸器不足に立ち上がったのはダイソンだけではありません。自動車製造大手のジャガーや、複数のF1チームなども同様の取り組みを開始。オックスフォード大学とキングス・カレッジ・ロンドンの合同研究チームは既製のコンポーネントと機器から作成できる人工呼吸器の設計をオープンソースで公開するプロジェクトを開始しています。
Oxford and King’s developing prototype for rapidly deployable ventilator | University of Oxford
http://www.ox.ac.uk/news/2020-03-20-oxford-and-king-s-developing-prototype-rapidly-deployable-ventilator
研究チームは「学内外のノウハウを結集して地元メーカーに人工呼吸器の設計を提供するというこのプロジェクトが迅速に進んでいることを喜ばしく思います」とコメント。発表時点では、人工呼吸器のプロトタイプをテストしている段階とのことですが、研究チームは数週間以内に同国の医薬品・医療製品規制庁の要件を突破できるプロトタイプを完成させ、地元メーカーと協力して2~3カ月以内に製造網を確立できると自信を見せています。
同様の取り組みはアメリカでも行われており、各国の研究者・製造業はともに協力を密にしてCOVID-19の問題に対応しています。
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