ハードウェア

新型肺炎治療に用いる人工呼吸器の手動ポンプを誰でも簡単に自動化できるプロジェクト「OxyGEN」

by Official U.S. Navy Page

バッグバルブマスクと呼ばれる手動の人工呼吸器を自動化する装置ならびに装置を開発するプロジェクトが「OxyGEN」です。OxyGENはあくまでも医療機器ではなく、医療従事者の作業負荷を軽減するためにオープンソースで設計された装置で、特別な知識や道具を必要とせず、数時間で組み立てることが可能だとのことです。

Welcome to the OxyGEN project
https://oxygen.protofy.xyz/

COVID-19の感染拡大によって、医療従事者や医療設備の不足が問題化しています。特に、COVID-19が重症化して肺炎や気管支炎を併発した患者が使用する人工呼吸器の数が足りなくなることが予想されており、オープンソースで人工呼吸器を設計する試みが世界中のエンジニアによって行われています。

新型コロナウイルス対策で「人工呼吸器をオープンソースで開発するプロジェクト」が登場 - GIGAZINE


しかし、機械制御による人工呼吸器はコストがかかる上に、1から人工呼吸器を作っても規制当局の認可を受けなければ病院で使うことはできません。また、Arduinoなどのマイコンボードを使った制御システムはある程度の知識がなければ構築できないという問題もあります。

そこで、救急医療などで用いられるバッグバルブマスクと呼ばれる手動人工呼吸器の、ポンプ部分となるエアバッグを簡単な機械で操作するシステムとして、OxyGENが開発されました。OxyGENのプロトタイプが実際にどんな感じで動作するのかは、以下のムービーを見ればよくわかります。

OxyGEN Prototype - YouTube


中央にある木製の装置がOxyGENで、バッグバルブマスクのエアバッグが下部に装着されています。


OxyGEN中央にあるカムがモーターで回転し……


下部にある板を下方に定期的に押し込みます。この動きによって板の下にあるエアバッグから空気が定期的にマスクに送られるという仕組み。


複雑なコンピューターや電子基板は必要なく、部品の形にカットした板とシャフト、モーターがあれば簡単に組み立て可能。OxyGENの開発スタッフは「車や小型家電から回収した部品で誰でも組み立てられるように設計しています」とコメントしています。設計図は公式サイトからダウンロード可能です。


OxyGENはあくまでも補助具という扱いであり、バッグバルブマスクそのものは医療機具であるため、常に医師の監督下で使用する必要があります。しかし、大がかりで高価な人工呼吸器が整備されていない病院や、COVID-19の対応に追われて医療従事者が不足している地域で、医療従事者の作業負荷が低コストで軽減できるのがOxyGENのポイント。シンプルな仕組みですが、COVID-19感染者の近くで常にエアバッグを操作すると医療従事者への感染リスクも高まるため、自動化には大きな意味があります。

なお、開発スタッフはシャフト周りの改善や木材以外の素材の探求、呼気をフィルタリングして無菌環境を実現するシステムの作成、呼吸速度の検知システムなどを次の課題としています。

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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