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Amazon倉庫では新型コロナウイルス感染例の情報共有が不十分との指摘、独自に情報収集を始める従業員も


Amazonは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中に大きく売り上げを伸ばしていますが、その一方でAmazon倉庫で働く従業員からは「COVID-19対策が十分ではない」との声も上がっています。アメリカのNBCニュースは、「Amazonの施設では新型コロナウイルスの感染例についての透明性が確保されておらず、労働者や保健当局との情報共有も不十分」と報じています。

Lack of oversight and transparency leave Amazon employees in the dark on Covid-19
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/lack-oversight-transparency-leave-amazon-employees-dark-covid-19-n1241549

ウィスコンシン州ケノーシャにあるAmazon倉庫で働く従業員らは、2020年7月から8月にかけて、「施設従業員が新型コロナウイルス陽性だった」という通知を複数回受け取りました。しかし、この通知が従業員に送られた直後の8月10日、ケノーシャ郡に竜巻警報が発令されると、施設のマネージャーは数百人もの従業員らを窓のない部屋に入れて待機させたとのこと。

匿名を条件にNBCニュースへ証言した従業員は、「彼らはただ人々を休憩室に押し込んでいました」と述べ、大勢の従業員が社会的距離を保つことが難しい部屋に押し込められたと主張。およそ30分にわたる待機の間、従業員間で新型コロナウイルスの感染例が発生した可能性もありますが、Amazonからの情報共有がないため真実を知ることができないそうです。

また、ケノーシャにあるAmazon倉庫内での感染例について把握できないのは従業員だけでなく、倉庫がある地域の保健当局もAmazonから情報を得られていないとのこと。NBCニュースが入手したケノーシャ郡保健当局の内部通信によると、保健当局の職員からの「新型コロナウイルスの感染例についての情報を提供して欲しい」という要求をAmazon側は拒否しており、保健当局は倉庫内の総症例数を把握できていない模様。ケノーシャ郡保健当局のJen Freiheit博士は、Amazonについて「扱いが簡単ではありません」と述べています。

by Tony Webster

Amazon倉庫や施設が集中する25の地域の保健当局にNBCニュースが連絡し、Amazon施設内におけるCOVID-19関連の調査記録の提供を求めたところ、施設調査などの関連記録を提出したのは5つの保健当局しかありませんでした。他の保健当局は「人や企業に害を及ぼす可能性がある」として提出を拒否したり、「忙しすぎて処理できない」と回答したり、提出に承諾したものの2カ月が経過しても提出されなかったりしたとNBCニュースは述べています。

また、実際にNBCニュースが23の施設で働く40人の従業員らに聞き取り調査を行ったところ、従業員らは「パンデミックの開始時にAmazonが制定した感染防止対策の多くは、もはや実施されていないか実施が困難になっています」と回答したとのこと。Amazonは従業員らに対し、施設内でどれほどの人数が新型コロナウイルス陽性になったのか、特に危険な接触者は存在するのかといった情報を共有しておらず、保健当局だけでなく従業員に対しても透明性が欠如しているとNBCニュースは指摘。


Amazonの広報担当者であるLisa Levandowski氏は、ケノーシャ郡の倉庫で竜巻警報時に数百人の従業員が一つの部屋に押し込められた事例について、生命を脅かしかねない竜巻のリスクを優先したのであり、この一件で新たな感染例は発生していないと主張しています。

Levandowski氏によると、Amazonは「新型コロナウイルス陽性だった従業員が住んでいる地域の保健当局」には情報を提供しているものの、「当該従業員が勤務する施設がある地域の保健当局」には連絡していないとのこと。従業員に対して施設内の総症例数を発表していないことについては、症例数の共有だけでは当該従業員が最後に施設内で作業した時期、施設がある地域の全体的な感染率、従業員が住んでいる地域のデータ、タイムラインといった文脈が欠如しており、不必要な誤解を招く恐れがあるため情報共有を控えていると説明しました。


Amazonからの情報提供が不十分なことに不満を持つ従業員の中には、自分たちの手でCOVID-19の流行状況を把握しようとする動きも登場しています。2020年3月下旬にAmazon倉庫で働いていたJana Jumpp氏は、全国のAmazon労働者と協力して、新型コロナウイルスに感染した倉庫労働者の総数を調査し始めました。「Amazon以外の誰かがスコアを把握する必要がありました」と、Jumpp氏は述べています。

Jumpp氏やボランティアたちはFacebookグループ上を作成し、Amazonから従業員に送られる「施設内で新型コロナウイルス陽性者が出た」という通知の収集を開始。それぞれの通知は「1人以上の労働者が新たに感染した」ことを伝えるだけであり、Jumpp氏らは「1つの通知につき2人の新規感染者が発生した」と見積もって計算しました。記事作成時点では、少なくとも2000人以上の陽性者がAmazon施設内で発生したとJumpp氏は推測しています。

Amazonは従業員との情報共有が不十分ではないかとの指摘に対し、「プライバシー上の理由」からあえて通知を曖昧に保っていると説明しています。また、カメラで従業員たちの距離を把握する「ディスタンス・アシスタント」というシステムを元に、感染者の接触追跡を行っているとのこと。

従業員から「新型コロナウイルス対策が不十分だ」と非難されているAmazonが「ディスタンス・アシスタント」を開発 - GIGAZINE


NBCニュースはAmazonの姿勢について非難しつつも、Amazonに対して積極的に情報提供を求めていない保健当局もあると指摘。さらに、「企業が施設内で発生した感染症の情報を提供すること」を求める規制がない点も、Amazonが保健当局への情報提供を拒否することを許す一因となっていると非難しています。

アメリカの労働安全衛生局(OSHA)が主な対象としているのは仕事関連のケガや疾患であり、COVID-19のような感染症はこれまで焦点が当てられてきませんでした。ウイルスは日常のあらゆる場面で感染する可能性があるため、明らかに職場環境と関連している労働災害と比較して、「職場環境のせいで感染した」と証明することが難しい点も、OSHAや法執行機関による規制を難しくしているとのこと。

OSHAは企業や雇用主に対し、新型コロナウイルスの感染防止ガイドラインを通知していますが、これも企業が実施するかどうかは各々に任せられています。カリフォルニア大学サンフランシスコ校で産業医学を研究するRobert Harrison氏は、「これはバカげています。あらゆる種類の強制や抑止力として、ほとんど効果がありません」とコメント。

経済や労働関連のシンクタンクであるEconomic Policy InstituteのTerri Gerstein氏は、「このウイルスを阻止したいのであれば、私たちは労働者たちの安全を集合的に保たなければならず、人々が職場にいる時間を知る必要があります」と述べ、職場における新型コロナウイルス対策が必要だと訴えました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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