「新型コロナウイルス感染症が進行すると息ができなくなって死に至る」というメカニズムを分かりやすく解説したムービーが登場
世界的な感染拡大と死者数の増大により、その脅威が改めて知られるところとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、ナノメートルサイズの微粒子に過ぎない新型コロナウイルスが人間を死に至らしめてしまうというのは、あまり想像がつかないもの。そこで、ニューヨーク・タイムズがさまざまな専門家の意見をもとに、「肺に入った新型コロナウイルスが人を死に至らしめてしまうメカニズム」を分かりやすいムービーにまとめました。
How Coronavirus Attacks the Body | NYT News - YouTube
ムービーが始まって映し出されたのは、ジョージ・ワシントン大学付属病院が作成した「VRで見ることができるCOVID-19患者の肺」です。
このVR映像の元となった患者は、高血圧のきらいがあるもののほとんど健康だった59歳の男性です。撮影される数日前まで無症状でしたが、撮影時には黄色で着色された損傷部分が肺をむしばんでしまっていました。
「COVID-19が一体どうやって人体をこんな状況にしていまうのか?」を解説するのが、このムービーのテーマです。
事の発端は中国の武漢市でCOVID-19の患者が発見されたことです。
武漢市の病院で確認された191人のCOVID-19感染者のうち54人が死亡。
54人の死者のうち、50人が急性呼吸促迫症候群(ARDS)で命を落としました。
ARDSとは、何らかの原因により肺が損傷し重度の呼吸不全となることで、臓器に酸素が届かなくなる状態のことです。
ARDSについて専門家らは、「いわば空気の飢餓です」
「息ができなくなることを意味します」
「ARDSの発症と死亡の間には非常に強い相関関係があります」と口をそろえています。
ARDSはCOVID-19特有の症状ではありません。後天性免疫不全症候群(AIDS/エイズ)や……
事故などによる外傷で肺が損傷しても発生します。
重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)でも発症します。
また、ホスゲンや化学兵器のマスタードガスなどの毒物を吸引することでも引き起こされます。
近年では、ビタミンEアセテートが含まれている大麻成分テトラヒドロカンナビノールの吸引で発症した例も報告されています。
ARDSが起きるとどうなるのかを知るために、まず通常の肺での呼吸を見ていきます。息をすると、空気がのどの気管を通って肺を満たし、気管の末端にある肺胞に入ります。
この肺胞でガス交換が行われ、酸素を取り込むのが大まかな呼吸の仕組みです。
肺胞では、外気と人体を隔てる障壁はわずか数マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)程度の厚さしかありません。
この障壁となる肺胞の表面の上皮がウイルスにより損傷を受けると……
まるで部屋の壁紙にべったりと塗料を塗ったようになってしまい、もはや酸素を取り込むことができなくなってしまいます。
ウイルスが肺の深部に達してしまっているか判断するには、息切れがひどいかどうかや、どのくらいの長く続いているかが1つの目安になります。
中国の入院患者を対象とした小規模な調査では、症状の発生初日から2日後に胸部スキャンを行ったところ、半数以上の患者が正常な状態でした。
しかし、発症から3~5日以内に入院患者の91%が呼吸器の問題を抱えるようになってしまいました。
クリーブランド・クリニックに勤務する胸部放射線の専門家Subha Ghosh氏によると、COVID-19は他の感染症に比べてARDSの進行が速いそうです。
ウイルスの症状が軽いか、あるいは無症状であっても、ウイルスが肺に影響を及ぼす期間が長くなると、呼吸器の問題が重症化するリスクが高くなります。
ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏は会見で、「人工呼吸器を付けている時間が長ければ長いほど、人工呼吸器を外せる可能性は低くなってしまいます。それが私が見た真実です」と述べています。
冒頭のVR映像を提供した59歳の患者も、入院から約1週間で急激に症状が進行し、医師らの治療の甲斐もなく死亡してしまったとのこと。
目下、ジョージ・ワシントン大学付属病院の医師であるキース・モートマン氏らは、もっと多くの人々に事態の重大さを認識してもらうことを最大の目標としています。
そして、特に重要なのが「社会的距離を保つこと」と「流行を緩やかにすること」です。
「ウイルスは自分では移動しません。医療の現場にいない人の唯一の役割は家にいること、これに尽きます」とモートマン氏は訴えました。
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