うつ病患者には異なる世界が見えていることが「錯視画像の見え方の違い」から明らかに
うつ病を長期間患うと、脳の一部が変質することが知られています。新たに、うつ病が視覚に与える影響についての研究成果が、ヘルシンキ大学の精神医学と心理学の研究者からなる研究チームによって報告されました。
Reduced visual contrast suppression during major depressive episodes | JPN
https://www.jpn.ca/content/46/2/E222.abstract
Depression affects visual perception | University of Helsinki
https://www2.helsinki.fi/en/news/health-news/depression-affects-visual-perception
研究チームは、うつ病が患者の視覚に与える影響を調査するために、うつ病患者111人とうつ病をを患っていない29人を対象に、錯視画像の見え方を尋ねる実験を行いました。
研究チームが用いた錯視画像はこんな感じ。両側の図形の中央部分に位置するグレーの正方形はどちらも同じ明るさですが、周囲の明るさの違いによって明るさが異なって見えます。この錯視画像はうつ病を患っていない人(青)とうつ病患者(オレンジ)の双方で、約40%の被験者が想定通りの見え方を報告しました。
以下の画像は、二重になっている四角形のうち、中央部分と周辺部分の「しま模様」の向きを変化させることで、中央部分の色は変化していないにもかかわらず、周辺が横じまの時より縦じまの時の方が色が薄く見えるという錯視画像です。この錯視画像では、うつ病を患っていない人の約20%が想定通りの見え方を報告したのに対して、うつ病患者では約5%の被験者だけが想定通りの見え方を報告。この結果から、うつ病患者はうつ病を患っていない人とは異なる見え方で世界を認識している可能性が示唆されました。
研究チームによると、今回の研究で使用された錯視画像の見え方には、大脳皮質での情報処理が関係しているとのこと。研究チームの一員であるビルジャリ・サルメラ氏は「今回の研究は、うつ病患者の情報処理障害を特定するための有益な結果をもたらしました」と述べ、錯視画像がうつ病からの回復度を示す材料の1つとして役立つことに期待を寄せています。
しかし、今回の研究は集団を対象に行われたことや、うつ病を患っていない人の中にも錯視画像を想定通りに見られなかった人もいたことから、「うつ病を患っているか否かを錯視画像だけで判断することはできません」とサルメラ氏は指摘しています。
なお、2018年に発表された研究では、うつ病が脳の一部を変質させることが明らかになっており、うつ病がアルツハイマー病やパーキンソン病と同様の「進行性の病」である可能性が指摘されています。
うつ病は進行し何年も患うことで脳は変質してしまう - GIGAZINE
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