サイエンス

「マジックマッシュルーム」がうつ病に効くメカニズムが脳スキャンで解明へ、依存症や拒食症の治療に使える可能性も


マジックマッシュルームの有効成分・シロシビンをうつ病患者に投与し、その脳をスキャンしたデータを分析する研究により、シロシビンには硬直化した脳の状態を柔軟にして再配線を促す働きがあることが判明しました。シロシビンがうつ病を改善させるメカニズムについての理解が進んだことで、シロシビンが依存症や拒食症など他の精神疾患にも効果を示す可能性があることも分かりました。

Increased global integration in the brain after psilocybin therapy for depression | Nature Medicine
https://www.nature.com/articles/s41591-022-01744-z

Psilocybin Rewires the Brain for People with Depression | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2022/04/422606/psilocybin-rewires-brain-people-depression

Magic mushroom compound increases brain connectivity in people with depression | Imperial News | Imperial College London
https://www.imperial.ac.uk/news/235514/magic-mushroom-compound-increases-brain-connectivity/

We May Finally Know How Magic Mushrooms Work to Relieve Depression
https://www.sciencealert.com/scientists-have-finally-figured-out-how-magic-mushrooms-might-relieve-depression

これまで行われてきた複数の研究により、マジックマッシュルームに含まれるシロシビンにはうつ病を改善させる効果があることが分かっており、アメリカでは精神疾患の治療薬として合法的に使用するための取り組みが進められています。

マジックマッシュルームと同じ幻覚剤成分がうつ病の「画期的治療薬」として当局に承認される - GIGAZINE


しかし、シロシビンが一体どのようにうつ病を改善させるかのメカニズムは、これまでよく分かっていませんでした。そこで、インペリアル・カレッジ・ロンドンの神経精神薬理学者であるデビッド・ナット氏らの研究チームは、過去に実施されたシロシビンの臨床試験2件で得られた脳スキャンのデータを精査する研究を行いました。

2つの臨床試験のうち、1つ目の臨床試験は治療抵抗性うつ病、つまり適切な服薬や休養を続けても十分な治療効果を得ることが困難な中度~重度のうつ病患者を対象とするもので、参加者らは自分たちがシロシビンを投与されたことを知っていました。また、2つ目の臨床試験はそれほど深刻ではないうつ病患者を対象とするもので、参加者にはシロシビンか普通のうつ病治療薬のエスシタロプラムが与えられ、参加者には自分がどちらを投与されたのかが分からないようになっていました。いずれの臨床試験でも、シロシビンにはうつ病を改善させる効果があることが示されています。

研究チームが、これらの過去の臨床試験で得られた磁気共鳴機能画像法(fMRI)のデータを分析したところ、シロシビンを投与された患者の脳内では、通常のうつ病患者では結びつきが弱い脳の領域同士の接続が強くなっていることが判明。一方、通常のうつ病患者では結びつきが強い部分は、逆に接続が弱くなっていました。

以下は、脳スキャンにより得られたうつ病患者の脳の状態を視覚的に表したものです。左の治療前の状態では、深い青色で示された落ち込んでいる部分と、オレンジ色で示された高揚している部分の差が顕著でしたが、中央のシロシビン投与時では平らになっています。また、右の治療後にも凹凸が見られますが、治療前に比べて落差がかなり緩やかになっています。これは、「起伏により視点の転換が困難で硬直的になっていた患者の脳が、シロシビン療法で柔軟性を獲得した」ことを示しています。


うつ病の改善のほか、シロシビンを投与された人には認知機能の改善も見られました。これらの効果は、従来のうつ病治療薬を投与された患者には表れなかったそうです。

この結果について、ナット氏は「シロシビンには、脳をより柔軟で流動的にし、ネガティブな思考パターンに陥らないようにするという、従来の抗うつ薬とは異なる働きがあることが初めて分かりました。これは、シロシビンがうつ病治療の真の代替アプローチになり得るという我々の当初の予想を裏付けるものです」と述べました。

また、論文の共著者であるロビン・カーハート・ハリス氏は、シロシビンが脳の回路の再接続を促すという今回の知見について、「もう1つの発見は、シロシビン療法にはうつ病だけでなく、依存症や拒食症といった他の精神疾患にも効果を発揮するような根本的なメカニズムがあるという点です。これを確かめるにはさらなる試験が必要ですが、もし期待通りなら我々は何かとても重要な発見をしたことになります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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