うつ病と「街路樹の本数」との間にある意外な関係とは?
近年の研究では、自然の中で過ごすことは脳卒中での生存率が上がったり糖尿病のリスクが下がったりといった健康面でのメリットや、幸福度を向上させる効果があると判明しています。ドイツのライプツィヒに住む約9800人を対象とした調査によって、街路樹に「うつ病の抑止効果」がある可能性が新たに示唆されました。
Urban street tree biodiversity and antidepressant prescriptions | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-79924-5
Street trees close to home may reduce the risk of depression | The Independent
https://www.independent.co.uk/news/science/street-trees-leipzig-germany-b1792874.html
There's a Curious Effect Urban Trees Might Have on Depression, Study Finds
https://www.sciencealert.com/street-trees-not-only-help-mitigate-climate-change-but-might-reduce-depression-too
都市部の近代化に伴って緑地部が年々減ってきていますが、近年では「自然にはざまざまなメリットがある」という研究結果が多数発表されています。薬の代わりに森林浴を推奨する「緑の処方箋」が効果を上げているという報告や、たった1日10分自然とふれあうと精神状態が改善する可能性があるという研究結果も報じられています。
1日10分ほど自然の中で過ごすだけで精神状態が改善される可能性があるとの研究結果 - GIGAZINE
ドイツ総合生物多様性研究センターのメリッサ・マーセル氏率いる研究チームが行った実験は、街路樹がうつ病に与える影響を測定するというもの。研究チームは「うつ病の度合い」を正確に算出するため、被験者の自己申告という主観に基づく指標ではなく、数量化できる「抗うつ剤の処方量」を採用。被験者が処方された抗うつ剤の量と、被験者が住む地域の街路樹の数や被験者の性別、年齢、体重などを比較するという調査を行いました。
ライプツィヒに住む18~79歳の被験者9751人から得られた調査結果を分析したところ、自宅から100メートル以内に存在する街路樹が多いほど抗うつ剤が処方される可能性が低下すると判明。さらに、雇用状況や性別、年齢、体重などのその他の要因よりも、街路樹が抗うつ剤の処方量に与える影響の方が大きいことも分かりました。加えて、街路樹の抗うつ効果は社会経済的に不利なグループで特に顕著であることや、100メートルを超えた地点にいくら街路樹が増えようとも抗うつ剤の処方量とはほぼ無関係である点も明らかになったとのこと。
研究チームのダイアナ・ボウラー氏は、一般的な都市計画では、レクリエーションを目的として緑地部を集約させる傾向がある点に言及して、大がかりな緑地部よりも日常的に目につく範囲の植物が重要かもしれないと指摘。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する現状では遠出することが困難であるため、「日常的に見ることのできる植物」の重要性はより高まっていると主張しました。
マーセル氏は、街路樹の設置は安価で用地買収などの大がかりな計画も不要なことからから「比較的簡単に実施できる」と指摘。社会経済的に不利なグループで抗うつ効果が顕著だったことから、「精神的健康の不平等を是正する効果があるかもしれません」と語っています。
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