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自然や公園の多い場所に住んでいる人は睡眠不足になりにくいという研究結果


自然との触れ合いにはさまざまな精神・身体的利点があることが多くの研究で示されており、日々の生活の中で自然と関わることで精神状態が改善し、健康状態や幸福度が向上することがわかっています。オーストラリア・ウーロンゴン大学で集団の健康や環境との関連について研究するThomas Astell-Burt名誉教授らの研究チームは、「自然や公園の多い場所に住んでいる人は、緑の少ない場所に住む人と比較して睡眠不足になりにくい」との研究結果を発表しています。

Does sleep grow on trees? A longitudinal study to investigate potential prevention of insufficient sleep with different types of urban green space - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352827319301703

More green, more ‘zzzzz’? Trees may help us sleep
https://theconversation.com/more-green-more-zzzzz-trees-may-help-us-sleep-132354


Astell-Burt氏によると、オーストラリアの成人の約12~19%は睡眠時間が5時間半~6時間を下回っており、十分な睡眠をとれていないとのこと。その一方で、睡眠不足の要因は個人の生活習慣だけでなく、航空機や車の騒音・温度・人工の光・大気汚染などの多岐に渡るほか、年齢・職業・経済状況なども関連してくるため、睡眠不足を個人の責任と切り捨てることはできないと述べています。

長年にわたって緑地がもたらす健康上の利点について研究してきたAstell-Burt氏は、森林・公園・街路樹といった自然環境が、騒音や大気汚染の影響、あるいは局所的なヒートアイランド現象を緩和し、健康や精神状態に利点をもたらしている可能性があると指摘。これらの問題は人々の睡眠を妨げる要因にもなり得ることから、Astell-Burt氏は「緑地の存在が睡眠状態を改善する可能性がある」と考えたそうです。


2013年にAstell-Burt氏らが発表した初期の研究結果では、緑地の多い場所に住む人々は睡眠不足を報告する割合が低いことが示されました。それ以来、他の国々でも緑地と睡眠時間との関わりについての研究が行われ、Astell-Burt氏らの研究結果と同様の結果が報告されているとのこと。

ところが、Astell-Burt氏は多くの研究が「ある時点でのスナップショット」を捉えたものであり、1枚の写真から原因と結果を予想するようなものだと指摘しています。Astell-Burt氏が指摘するスナップショット的な研究の問題点とは、原因と結果が正確に理解しづらいことです。ある特定の時点における緑地と睡眠との関連のみを調査した研究では、緑地の存在が本当にいい睡眠をもたらすのか、それとも健康や財政状況に問題がなく、いい睡眠がとれる人が環境のいい場所に住めるのか、両者の違いを見極めることが難しくなります。


この点を解決するため、Astell-Burt氏の研究チームは6年間にわたって、自宅の周囲半径1.6kmに緑地が多い人と少ない人で、睡眠不足になる頻度に差が出るのかどうかを調べました。対象となった人々はシドニーウーロンゴンニューカッスルに住む3万8982人に上り、いずれの被験者も調査期間中に引っ越しを行わなかったとのこと。研究チームは各被験者について、「自宅の周囲半径1.6kmのうち、上空から見て木々で覆われている割合が何%か」を基準にして、その人が緑の多い場所に住んでいるのか、それとも緑が少ない場所に住んでいるのかを判別しました。

分析の結果、自宅の周囲半径1.6kmの範囲が30%以上緑に覆われていた人々は、緑の割合が10%以下だった人々と比較して、「1日の睡眠時間が6時間未満」と定義される睡眠不足を経験する割合が13%少なかったそうです。この結果は、睡眠時間に影響を与える年齢・性別・学歴・仕事の内容・配偶者の有無・世帯収入といった要因を排除しても、一貫して確認されたとAstell-Burt氏は述べています。


今回の研究では、緑地の多い場所に住む人が睡眠不足になりにくいことが示されましたが、Astell-Burt氏は将来的に「緑地が多い空間がより質の高い睡眠をもたらすのかどうか」についても、研究を進めたいと述べています。緑地と睡眠の関連について明らかにすることで、行政の都市計画に重要な変更がもたらされる可能性があるとのこと。

多くの人々は緑地が精神や健康にいい影響を与えることを知っていますが、依然として緑地と睡眠との関係は見落とされがちです。2016年から2017年にかけてオーストラリア人の10人に4人が睡眠不足に関する影響を受け、睡眠の問題に関する福利厚生費が401億オーストラリアドル(約2兆6000億円)、保健システムや生産性の低下によるコストが262億オーストラリアドル(約1兆7000億円)かかったとの(PDFファイル)報告もあるため、睡眠に関する公共政策は社会や経済面でも重要だとAstell-Burt氏は指摘しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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