安全なマスクの販売をFacebook・Amazon・Googleが阻害しているという指摘
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行しだした当初、医療従事者の防護具不足が問題となり、Facebook・Amazon・Googleといったオンラインプラットフォームは医療グレードのマスクの広告・販売を禁じたり制限したりしました。しかし、2021年になり防護具が医療現場に行き渡るようになってからも上記のようなポリシーは依然として存在し、これが中小規模の企業によって製造されたマスクの流通を阻害していると、ニューヨーク・タイムズが指摘しています。
Facebook, Amazon and Others Restrict Online Sales of Masks - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/02/26/health/n95-masks-facebook-sale-amazon.html
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によりマスクが品薄状態になったことを受け、Facebookは「医療グレードのマスクは医療従事者に提供されるべき」というポリシーを掲げ、マスクの広告をブロックし始めました。アメリカで歯科医や教師に利用されていた高フィルタリング率・再利用可能マスクを販売するCastleGradeは、このポリシーにより広告を出せなくなり、1日4万ドル(約426万円)あった売り上げが5000ドル(約53万円)にまで減少したとのこと。
一方で、医療グレードではない布製マスクやプラスチック製の防護具などを販売する企業は引き続き広告を出すことが可能であることから、ただの布を利用したような効果の薄いマスクが市場を独占しているという現状をCastleGrade社長のDan Castle氏は訴えています。
防護具の不足が問題となったCOVID-19初期に作られた「医療グレードのマスクを扱わない」というポリシーを依然として有しているのはFacebookだけではなく、Googleも同じです。またAmazonでは扱いを禁止していないものの、アルゴリズムによってユーザーの入手可能性を制限しているとのこと。このようなオンラインプラットフォームのポリシーにより、病院のネットワークに含まれない多くの製造業者が倉庫で在庫を余らせているという事態が発生しています。
当初は医療従事者の防護具不足が問題となったものの、3Mといった大手メーカーはマスクの製造を拡大させており、またN95マスクの輸出を中断していた中国はアメリカへの輸出を再開させています。このような状況で、上記のようなプラットフォームのポリシーは「時代遅れ」になりつつあると指摘されています。
しかしFacebookは、医療用マスクの販売禁止を定めたポリシーがアメリカの保健当局からのガイダンスと、偽造マスクの販売を抑制する必要性に基づいたものだと説明。「我々は中小規模のブランドの成長とバランスをとりながら、ポリシーを定期的に評価しています」と述べています。
一方で、Amazonはマスクを高額で販売する悪徳業者や、商品を届けない詐欺業者が横行したことが問題となりましたが、医療用マスクの販売自体が禁じられたわけではありませんでした。AmazonはN95マスクの販売を許可しているものの、その流通は「大手製造メーカーのマスクをAmazonが購入してAmazon倉庫から直接発送する」という形でほぼ独占状態にあります。小規模企業によるN95マスクを販売することができるのは、買い手がAmazonのビジネスアカウントを持っている場合に限られているとのこと。このため、一般消費者が「N95」で検索した時に出てくるのは「KN95」と呼ばれる中国製のグレードの低いマスクとなっています。
Amazonでのマスク販売に苦心する企業は多く、カリフォルニア州のマスクメーカーであるT3Gearもその1つ。T3Gearは自社が製造する「少なくとも95%の病原体をフィルタリングできるマスク」をAmazonで扱う際に、テストデータの提出を求められました。提出したデータを確認したAmazonはT3Gearのマスク販売を認可しましたが、数カ月後にはユーザーのマスク購入がブロックされるようになったそうです。また販売が認可された後も、商品の並びはKN95の下だったとT3Gearのマイケル・アトキンズ氏は述べています。「Amazonは常に何の説明もなしにルールを変えます。Amazonが慈善事業でないのは理解していますが、我々のような小規模企業にはチャンスがありません」とアトキンズ氏。
元Amazonの幹部でありマーケティングコンサルタントのジェームズ・トムソン氏は、「一見医療従事者のためのように見えるが、自社が大量購入したマスクは例外としている」という行動は、Amazonのよく利用するロイヤリティのための戦略だとみています。
ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とハーバードメディカルスクールの研究者で公衆衛生の専門家であるアブラール・カラン博士は、「症例数が落ち着いてきているといっても、変異株が生まれ感染拡大が懸念されるこのウイルスへの感染を防ぐべく、高フィルタリング率のマスクを着用する必要があります」と述べて、「CastleGradeやT3Gearのようなマスクは倉庫に蓄積されず、市場に出回る必要がある」との見解を示しています。一方でニューヨーク・タイムズの質問に対し、Facebook・Amazon・Googleなどはマスクに関するポリシーをすぐに修正する予定はないと述べています。
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