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Amazonなどのビッグ・テックが新型コロナワクチンをサクッと届けられないのは一体なぜ?


Amazonで物を購入すると、2日程度で自宅に届きます。しかし、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを開発したファイザーやモデルナのお膝元であるアメリカでさえ、「Amazonによるワクチンの配達」や「Googleが感染者データを収集してワクチン接種が必要な人に通知する」といったサービスは実現していません。生活のあらゆる場面を支えているAmazonやGoogleといったアメリカの大手IT企業、いわゆるビッグ・テックが「なぜワクチンに限っては力を発揮できないのか?」という疑問について、アメリカのニュース制作会社であるNBC Newsが解説しています。

Why Big Tech isn't dominating the vaccine rollout
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/why-big-tech-isn-t-dominating-vaccine-rollout-n1259006

NBC Newsの元には、よく「物流やデータを牛耳っているビッグ・テックが、ワクチンそのものやワクチン接種に関するデータを集めて人々に届けられないのは一体どうして?」という質問が届くとのこと。この疑問に対する答えは、ワクチンの流通がビッグ・テックの管理能力が及ばないところで行われている点にあります。

アメリカでのワクチン配布は、「連邦政府が製薬会社から買い上げたワクチンを州に供給し、州がそのワクチンを郡や企業と連携して配布する」というプロセスで行われます。確かに、さまざまな企業が州や郡などの地方自治体と一丸となってワクチン配布に取り組んでおり、ビッグ・テックもそれに一役買っていますが、アメリカの人々が期待しているほどではないそうです。


ビッグ・テックが、期待されているほどの力を発揮できないことを示す事例の1つが、アイオワ州政府が2021年2月17日に「Microsoftのシステムの導入を断念する」と発表したことです。アイオワ州とMicrosoftは、同州の医療システムにワクチン予約システムを導入すべく、過去6カ月間にわたってシステムの開発を進めてきました。しかし、一向に実現のめどが立たないことから、アイオワ州のキム・レイノルズ知事は「ワクチン予約システムを実装しようとすると、かえってより大きな混乱が起きるとの結論に達しました」と述べて、Microsoftとの契約を打ち切ったことを明らかにしました。

NBC Newsは「アイオワ州当局は『予約システムの導入を見合わせたのはMicrosoftの落ち度ではない』と説明しています。つまり、Microsoftのような大手IT企業でさえ、アイオワ州にある99の郡にまたがる大規模なITインフラに変更を加えるのは、容易ではないということです」と指摘しました。


また、AppleやGoogleは2020年4月に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の接触追跡API」を開発しましたが、なかなか普及しませんでした。NBC Newsは、アメリカの地方自治体がAppleとGoogleのAPIを導入したシステムの開発と運営を渋った理由について、「新しいシステム開発には多くの人員とコストを投じる必要があるため」と分析しています。

AppleとGoogleのAPIが普及しなかった経緯や理由については、以下の記事にまとめられています。

GoogleとAppleが共同開発した新型コロナ接触追跡APIはなぜアメリカで普及しないのか? - GIGAZINE


Amazonも、ワクチンを地方まで届けることに対しては消極的です。Amazonで消費者部門のCEOを務めているデイブ・クラーク氏は2021年1月に、「ワクチンを配達するために支援したい」との書簡を大統領に送っていますが、あくまで国との契約に的を絞っているとのこと。このことから、NBC Newsは「Amazonはホワイトハウスと直接協力することで、現場でのワクチン配布を回避しようとしています」と指摘しました。

都心部では、テクノロジー企業が作ったワクチン予約システムが導入された事例もあります。クラウドサービス大手のSalesforceSkeduloというスタートアップが立ち上げたMyTurnというポータルサイトもその1つ。しかし、MyTurnはカリフォルニア州の都市部だけが対象で、同州の大部分を占める農村部は対象外となっています。

このことについて、サンフランシスコ大学の疫学教授であるキム・ローズ氏は「一部の地域にしか予約システムが行き渡らないのは、必ずしもビッグ・テックのせいばかりではありません。保健当局は、インターネットが利用できない高齢者やマイノリティの人々、または低所得者層にワクチンを届けることを念頭に置いています。ハイテク企業がどれほど素晴らしいワクチン予約システムを作っても、インターネットにアクセスできず申し込みができない人がアメリカには何百万人もいるわけです」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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