ハードウェア

Intelの次世代GPU「Xeグラフィックス」についてIntelのグラフィックス部門責任者が語る


チップセットやCPUに内蔵する「統合グラフィックス」を20年以上展開してきたIntelが、2020年8月に第11世代CPU「Tiger Lake」に内蔵する「Xeグラフィックス」を発表しました。さらに、22年ぶりのディスクリートGPUである「Iris Xe MAX」を2020年10月31日に正式発表し、以降もディスクリートGPUも展開していく意志を明らかにしました。技術系ニュースサイト・AnandTechのインタビューの中で、Intelのアーキテクチャ・グラフィックス・ソフトウェア部門ヴァイスプレジデントであり、ビジュアルテクノロジー部門のディレクターでもあるリサ・ピアース氏が、Xeグラフィックスについて語っています。

Intel Xe Graphics: An Interview with VP Lisa Pearce
https://www.anandtech.com/show/16239/intel-xe-graphics-an-interview-with-vp-lisa-pearce


IntelのXeグラフィックスにはデータセンター向けの「Xe-HP」、クリエイター向けの「Xe-HPC」、ゲーマー向けの「Xe-HPG」、低消費電力に重きを置いたノートPC向けの「Xe-LP」という4種類のアーキテクチャが存在します。


そして、2020年10月31日に正式発表された「Iris Xe MAX」はノートPC向けのディスクリートGPUで、Xe-LPをベースに開発されました。また、Intelは2021年にXe-HPC・Xe-HP・Xe-HPGをベースにしたディスクリートGPUを発表する予定としています。

Intelが22年ぶりとなるディスクリートGPU「Iris Xe MAX」を正式に発表 - GIGAZINE


こうした新しいハードウェアには、必ずドライバーとソフトウェアの問題がつきまといます。多くの開発者は従来のIntel HDグラフィックスに慣れており、新しいXeグラフィックスに対応するには時間がかかります。最初はハードウェアにXeグラフィックスのGPUを採用する開発者は少ないと予想されるため、ドライバーとソフトウェアがハードウェアにどのように対応していくのかが、Intelが展開するこれからの戦略に大きく影響するといえます。

より強力なグラフィックボードと高性能コンピューティングに移行するであろうIntelのドライバーおよびソフトウェア戦略について、ピアース氏は「私たちは、業界全体を見通したドライバー・ベースを用意しようとしています。そして、今目にしているワークロードから始めて、将来の計画を推進したいと考えています。​これは従来とはまったく異なる考え方であり、ソフトウェア中心の考え方です」と答え、ドライバーやソフトウェアの対応にも力を入れる方針を明らかにしました。

また、「Intelの目標は、ハードウェアのすべてのPRQ (Production Release Qualification、出荷できる品質に達したもの)に対して、オープンソースでLinuxを有効にして、WindowsスタックとLinuxスタックの両方でドライバーの製品バージョンをリリースことです」と、ピアース氏。また、Xeグラフィックスのリリースと同時に配信されるゼロデイドライバーがどれだけのパフォーマンスを達成できるのかが課題だとしています。

First Xe LP launch == Xe wine night pic.twitter.com/pOxv71tJgx

— Lisa Pearce (@gfxlisa)


そして、GPUは並列処理を行う計算ソフトウェアの開発にも使われます。Iris Xe MAXをゲームだけではなく、計算用のプログラミングに使うことはできるのかについて、ピアース氏は「もちろん可能です」と回答。

特に、GPUやCPU、FPGAなどで開発環境が異なる場合は、それぞれで開発プロセスや言語が異なるとその習熟がエンジニアにとって大きな負担となります。そこで、Intelが発表したクロスアーキテクチャー・ソフトウェア開発ツールが「oneAPI」です。このoneAPIによって、複数のアーキテクチャに対して1つの言語でプログラミングが可能になります。IntelはGPU・CPU・FPGA・AIアクセラレーターをそれぞれ展開しており、oneAPIを中心とした新しいエコシステムを確立しようとしています。ピアース氏はoneAPIの「絶対的に究極の目標」とは「コードを開発してターゲットにコンパイルするようになることで、ターゲットを自由に変更できること」だと述べています。


さらに、「この時期にディスクリートGPUを発表したということは、VRを焦点に入れているのでしょうか?」という質問に対して、ピアース氏は「IntelではVRへの投資が強く行われています。GPUの高性能化が進めば、2021年はVRがターゲットになるでしょう」と語りました。

なお、インタビュアーからは「IntelやAMDのドライバースタックに対する批判の1つに、ドライバーの容量が大きすぎることがあります。ソフトウェアがバンドルされていることと、旧世代のGPUを1つのダウンロードでサポートしようとしているため、ダウンロードサイズが300MB~400MB以上にもなります。今後このプロセスをより合理化するために何ができますか?」という質問も。

ピアース氏は「その点には留意しています。問題の1つはパッケージが分割されていないことです。そのため、将来的には部分的なドライバーバイナリを用意する予定で、具体的なスケジュールは決まっていませんが、検討しています」と回答。さらに、インストーラーのインターフェースも大きく手を入れる予定だとしています。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk